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第58話【デビュー戦】

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「さて、今週もみんな頑張ろー」

 今日は週に一回の攻城戦の日、私の合図にメンバーがそれぞれ声を上げる。
 さらに今日は新しく入った新人のティファのデビュー戦でもある。

 予想通り、今日の攻城戦までにティファはカンストには間に合うことが出来なかった。
 しかし、回復職ということと、本人に慣れてもらうという意味で参加してもらうことにした。

「あの……クランのマスターってセシルさんですよね? なんでサラさんが音頭取ってるんですか?」
「ん? ああ。サラさんは攻城戦の司令塔だからね。まぁ、始まったら分かるよ」

 そんなティファとセシルのやり取りが聞こえてくる。
 やはりティファは思ったことをそのまま口に出すくせがあるようだ。

 ある意味、私から見ると羨ましい性格と言えた。
 私もああいう性格だったら、色々と違っただろうか。

「そういう物なんですね。なんか、このクラン入ってから、【薬師】の印象すごく変わりました。もっと、こうなんていうか……」
「役に立たない職業だと思った?」

 私は思わず話に割って入る。
 以前からそうだけれど、何故かティファには自然と話ができる。

 突然の当の本人である私の参入に、ティファは少し驚いた顔とバツの悪そうな顔を見せた。
 しかし、素直な性格で、一度頷いて見せる。

「わ、サラさん。聞こえてたんですね。でも、そうですね。こういうと怒られるかもしれませんが、【薬師】がS級クランにいるって変だなーって思ってました」
「あはは。本当、ティファって素直よね。大丈夫よ。怒ったりしないから」

「ありがとうございます。でも、レベル上げで色々としてもらっただけですけど、【薬師】ってすごいんだなぁって。それで、今度は司令塔ですもんね。そりゃ驚きますよ」
「まぁ、司令塔うんぬんは後方支援だから全体を見渡しやすいって意味が強いんだけどね。昔はもっと人数少なかったし」

 そんな話をしている間に、時刻は過ぎ攻城戦の開始時間となった。
 みんな所定の場所から参加を行う。

「あそこの受付に行って話しかけて参加してね。そうしたら中に入れるから。始まってからのことは前に言った通りだけど、臨機応変に、あと楽しんでね」
「はい! 分かりました。ありがとうございます! 頑張ります!!」

 私も攻城戦のフィールドに入り、中で戦闘開始の合図を待つ。
 見るとティファは予定通り所属したグループのリーダーであるアンナと話をしていた。

「いいかい? わたしゃガーっと攻め込むからね。そしたら当然ダメージも受ける。そこをドーンと回復してくれりゃ問題ないからね」
「分かりました。ドーンとですね」

 そんな説明でも、何故かアンナがやるとみんな理解して一体となった動きをするから不思議だ。
 ただ、よく見ると、ギルバードが細かい説明を追加でしているようだ。

 ティファのおかげと言っていいのか分からないけれど、アンナとギルバートはいつの間にか付き合っているらしい。
 ティファは嬉しそうに教えてくれた。

 なんでもギルバートの方がアンナに告白して、アンナがそれをオーケーしたのだとか。
 初めてそれを聞いたとき、私はびっくり半分、嬉しさ半分だった。

 結局私も人の恋話を聞くのは嫌いじゃない。
 付き合ってると知ったからどうだというわけじゃなけれど、それでも色々と興味が湧かないと言えば嘘になる。

 私は暖かく二人を応援することを陰ながら決めた。
 ティファはその私の気持ちを知ってか知らずか、何か話題を手にすると、教えてくれた。

 ただ、意外なことにきちんと言っていいことと悪いことの線引きは出来ているようで、ちょっと前にアンナと話したときに、逆にアンナが驚いていた。
 ティファに知られて、もうみんな知っていると思っていたことを、私を含めて誰も知らなかったことがあったからだ。

 こうしたこともあり、ティファはクランの中でも、それなりの信頼を得始めていた。
 やはり単なる口が軽い話好きでは、心証も悪い。

 そんなことを思っていたら、戦闘開始の合図があった。
 私はいつも通りに、コアに向かう。

 すると、ティファは私の横で珍しそうな顔をしてコアを覗いていた。
 そう言えば、コアを同期させることも、コアに近付くのが私一人でないといけないことも伝えるのを忘れていた。

「わぁ。綺麗ですねぇ。これを壊されちゃうと負けちゃうんですよね?」
「あ、うん。そうだけど。ちょっと特別な方法があってね。今からそれをするから、伝えるの忘れてたけど、この下に見える円より外で待っててくれる? みんなみたいに」

 私がそう言うと、ティファは辺りを見渡す。
 他のメンバーは慣れた様子ですでに円の外で待っていた。

「あ、すいません! 私、知らなくて!」
「謝らなくていいよ。言ってなかったんだから」

 ティファが慌てた様子で円の外に出て行ったのを見届けた後、私はいつものようにコアに手を触れる。
 そしてコアと同期をした。

 終わったのが分かったようで、ティファはまた私の方へ駆け寄ってくる。
 コアと同期したせいで淡い光を放つ私の姿を眺め、うっとりとした顔付きをした。

「わぁ。サラさん。綺麗ですね。光り輝いてますよ」
「そう。これが同期って言ってね。コアを持ち運べる裏技ってわけ。知らない人も多いみたいだから、他の人に言わない方がいいかな」

「はい! 分かりました! 私、絶対誰にも言いません!!」
「あはは。それじゃあ、これからみんなを薬で強化して、攻城戦始めるよ!!」

 こうして、ティファの攻城戦デビュー戦の幕が開けた。

☆☆☆

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まだ始まったばかりですが、かなりの上位にいてありがたく思っています。
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