後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞

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第67話【親心】

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 私の心配とは裏腹に、セシルとアーサーの会話はどんどんと進んでいく。
 時折私にも話を振られるものの、ほとんど二人で話していた。

 話題はこのゲームをのどこが楽しいかや、クラン運営について、他にもこんなコンテンツがあれば盛り上がるなど、至って普通の話題だった。
 話を続ける間にアーサーの目に優しさが灯り始めた気がした頃、アーサーは一度大きく息を吐いた。

 それに釣られて、セシルも息を吐く。
 何故だか二人とも笑顔になっている。

「そろそろ、俺の事を信用してもらえたのかな? アーサー」
「ああ。満点、と言うにはもう少しだがな」

「もし教えてもらえるなら、その足りない部分を教えてもらいたいものだな」
「おいおい。それをこの場で言って困るのセシル、君だぞ」

 そんなことを言いながら、アーサーは私の方に目線を向けた。
 それに気付いたセシルは何故か慌てた様子で、顔を赤く染めている。

 私はなんだか訳が分からず首を傾げた。

「ねぇ。結局、なんだったの? 私にはさっぱり分からないんだけど」
「ん? ああ。アーサーはね、俺を値踏みしてたのさ」

「値踏みとは人聞きが悪いな。興味があると言ったろう? まぁ、気になっていた、というのは嘘じゃないが」
「それで、アーサーの見た感じ、セシルは合格だったってこと? なんについてかは分からないけど」

 私はアーサーに向かってそう聞いた。
 アーサーは嬉しそうな顔をして答える。

「ああ。正直なところ、新興のクランがここまで上がってくるなんてまずないことなんだ。カインにも少し話を聞いたが、サラの力が間違いなく影響してる。で、問題はこのクランを作ると言い出したのが誰かということだが……」
「このクランを作ると言い出したのはセシル……あ! もしかして、セシルが私をうまく利用しているって疑ってたの!?」

「まぁ、端的に言うとそうなるな。もしもセシルが前のクラマスみたいにサラを良いように使うようなやつだったら、君を無理矢理でもこのクランから抜けさせるつもりだった」
「そんな! だって、会ったときセシルはこのゲーム始めたばかりだったし、そもそもオンラインゲームだってこれが初めてだったんだよ?」

 私はたとえアーサーといえど、セシルをそんなふうに見られていたことに憤慨する。
 今の私がいるのはセシルのおかげなのに、それを悪く言うだなんて。

「ネットなんていくらでも嘘がつけるからな。初めてというのも嘘だったかもしれない。そこが嘘じゃなくても、サラの凄さに気づいて利用しようと咄嗟に思いついたかもしれない。まぁ、疑ったらきりがないけどな」
「もう。そんなことないってば! これ以上言うと、いくらアーサーでも怒るよ!!」

「まぁまぁ、サラさん。きっとアーサーはサラさんのことを思ってこんなことをわざわざやってくれたんだよ」
「え? どういうこと?」

 私が叫んだ拍子に、セシルが横から声をかけてきた。

「つまりね。サラさんが変なやつに騙されてないか心配だったってことだよ。だって、こんなことしても、アーサーにはなんのメリットもないはずだろ?」
「そう言われてみれば……そうだけど。そうなの? アーサー」

「あっはっは。人に改めて言われると少し恥ずかしいな。同じクランじゃないとはいえ、サラは俺の大事な仲間だからね。そりゃあいやな思いはして欲しくないだろう? 以前のクランの話を聞いていたらなおさらね」
「そっか。でも、私このクランで楽しいって言ったはずだよね?」

 アーサーにはクランで楽しんでることは何度か報告済みだ。
 それを聞いたとき、嬉しそうに聞いてくれていたのを覚えている。

 それなのに、今になってなんでわざわざこんなことをしようと思ったのだろうか。

「そりゃあね。あまりにも異常だったからさ。このクランを作ったのはいつだい? それよりも前に作ったクランでS級に登れていないクランは一体いくつある? いくらメンバーが揃っていてもこの短期間で二位になるなんて尋常じゃないんだ。気付いてなかったのかい?」
「そりゃ、そうかもしれないけど……それとこれとどういう関係があるの?」

「だから、相当な無理をさせてるんじゃないかってことを疑ったのさ。色々とサラたちと実際戦った相手にも話を聞いたりしたけど、一人ひとりのステータスが異常だって言ってたよ。つまり強化薬を大量に使ったってわけだ」
「うん。私が用意したからね。あ! なるほど!!」

 つまり、アーサーは私が前のように無理やり大量の薬を作らされているんじゃないかと心配になったのだ。
 きっと、カインにも聞いたりしたのだろう。

 だけど、薬の製造は調合部屋で一人、他のみんなには見えないところでやっている。
 カインももしかしたら確信が持てなかったのだろうか。

 いずれにしろ、アーサーが私のためを思ってこんなことをしてくれたというのは分かったけれど、それにしても私に一言くれればよかったのに。
 そう思った私は思わずアーサーに文句を言った。

「それなら、先に言ってくれたら良かったのに!」
「あはは。もし言ったら意味がないだろう? きっとサラはそのことをセシルに伝えるだろうし、サラは必死でセシルのことを擁護してたんじゃないかな。こういうのはなんの心構えも持たずにやらなきゃ意味ないんだよ」

「それにしても、色々と話したけど、やっぱりアーサーが最強クランのクラマスだってのは分かる気がするよ。サラさん。この人は見てるものが広すぎる」
「褒めてくれるとは、嬉しいね。でも、セシルもまだ高校生だろう? 俺が高校生のときなんかもっとガキだったさ。このまま成長したらと思うとゾッとするね」

 ひとまずアーサーの目的も終わったようだし、少し釈然としないところはあるものの、これで話は終わりだろうか。
 そう思って話を切りあげようとした瞬間、アーサーが突然真面目な顔をして話し始めた。

「さて。これで心置き無く、サラとは勝負できる。気付いていると思うが、直接対決で俺たちに勝てば、一位になれる。逆いえば、それ以外で一位を明け渡すつもりは毛頭ない」

 さっきまで笑顔だったアーサーとは別人のように、すごい気迫を感じる。
 これが百戦錬磨、最強クランを率いる者の本当の姿なんだろうか。

「マッチングのシステムを上手く使えば、高い確率で狙って直接対決ができる。どうだ? 俺たちに挑む勇気はあるか?」
「もちろんだ!」

 アーサーに呼応する様にセシルが立ち上がりながら叫ぶ。
 私は思わず息を飲み込んだ。

 アーサーの言うことは本当なら、私たちは近いうちに【理想郷】との直接対決をすることになる。
 つまりそれは、私たちが目標を達成できるか、失敗に終わるかもうすぐ決まると言うことだ。

 いや、一度の敗北で諦めてはいけない。
 ましてはやる前から負ける時のことなど考えるなんて以ての外だ。

 気付けば、アーサーは私の方に視線を向けている。
 私はその目を見つめ返し、はっきりとした言葉で言った。

「もちろん。その勝負、受けて立つわ!!」
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