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1章【人間国】

両親

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転生した先で俺が1番に見たのは大きな2匹の狐だった。


本能的にこの狐たちが俺の両親だとわかる。

俺のことを優しく舐めてくれるのは母親。

その横で暖かい目で見守ってくれるのが父親。

2人とも尻尾が9本ある。

異世界に来て全く体も何も動かせないが、両親のステータスとやらを、確認してみる。


名前なし【九尾狐】Lv45

【HP】15000

【MP】2000

【スキル】《人化》《火魔法》《変化》




お、おう。

この世界の平均がわからないのでHP、MPともに多いのかどうかわかんないな。


ただスキルはかなり見た目通りって感じだ。

《人化》はその名の通り人になれるらしい。

獣人みたいな見た目になるのかな?

まぁいつか見れるだろう。

その次の《火魔法》も名前の通り。

火を使った魔法が使えるらしい。

九尾狐ってなんか火のイメージ強いからぴったりだと思う。

実際、今も俺のことを優しい炎で温めてくれている。

ママン、好き。


そして最後の《変化》だが、完全に俺の持っている《変身ミミック》の下位互換だった。

効果は自分より弱い生物、物体に変身することが出来るというもの。

さっきパパンの能力も見たが、多少の違いはあるけれど《変化》はあった。

恐らく九尾狐という種族の固有スキルなんだろう。

そう考えるといい親の元に生まれることが出来たなと思った。

ちなみに自分のステータスも今さっき見たが、あまりに…その…すごかった。




レラ【九尾狐】 Lv1

【HP】6000

【MP】40000

【加護】《魔の加護》《究明眼》

【スキル】《変身ミミック》《透明化》《座標交代》




これは酷い。

HPは親の半分もないが、MPが…

異常に多いと思う。これは異常。

スキルや加護の異常差は分かってたが、ここまで違いが出るとは。

よくよく考えたら魔物の子にしてよかった。

なろうと思えば変身を使って親と同じ姿になれるし。

まだ自分自身の体は動かないが変身したらきっと動くだろう。俺の体じゃないし。

これは楽しい人生になりそうだ!

狐生かな?














俺がこの世に転生してきてから1週間が経った。

また驚くことが起きている。

生まれた時は親の体の4分の1ほどの大きさだったのにもう半分くらいになった。

親の体は、象と同じくらいの大きさだと言えばわかりやすいだろうか?

一週間前は4分の1ほどの大きさだったのにそれが半分になったら異常な成長速度だろう。

成長したせいか、HPは2000増えた。

MPは2万増えたが。


いやいや?魔の加護やばくない?

これもしかして魔力関係の成長率まではね上げちゃってる?

この魔力量がもしかしたら全く多くない世界の可能性もあるが、親のステータスや魔法を使うことも考えると、きっとこれは異常なんだろう。

その両親は今は俺のためにご飯を取りに行ってくれている。

俺の主食は小さなウサギのような魔物。

種族名は【ワンダラビット】らしい。

見た目は完全にウサギだが鳴き声をあげて、しかもその鳴き声が犬みたいな魔物だ。

これを親が火魔法で焼いて食べさせてくれる。

最初に食べた時は美味しさで涙が溢れた。

この世界の食べ物は魔力量が大きければ大きいほど美味しい傾向があるらしい。

ただ元の世界と同じように肉食動物はやっぱり美味しくないようだ。

魔力量が大きくて草食動物というのが美味しい条件っぽい。

というか今何気に元の世界の事考えたけど、なんで元の世界の知識があるんだ?

転生受付案内にいたときは全く分かんなかったが何故か今はしっかり分かる。

ぼんやりとだが、俺の前世の生活も浮かび上がりそうだ。

全く興味はないんだが。


っとそんなことを考えていたら親が帰ってきたようだ…。



ん?ママンってあんな黒かったっけ?

パパンはいないし。どうしたんだ?


じっと目を凝らして見てみる。

するとステータスが浮かび上がった。


ボゴール【人間】Lv25

【HP】2500

【MP】2682

【スキル】《モンスターテイム》《闇魔法》



影かと思った部分に人がいたわけか。

闇魔法とモンスターテイム。

恐らくこのふたつでママンは操られて、巣まで案内させられたってことか。


ボゴールとかいう名前から恐らく男かな?

ママンたちが何でこんな弱い人間に負けたのかわかんないがそんなことは考えてもしょうがない。

今は倒す事だけを考えないと。

事実もうボゴールは俺に向かって魔法を放ってきている。

ハンドボールくらいの大きさの黒い塊が飛んでくる。

これが魔法かぁ~

ママンが肉を焼く時に火を出してくれるのは見たことがあるが、攻撃に使うような形状で見るのは初めてだ。

黒い塊は完全に俺を狙っている。

それを俺は同じ黒い塊で相殺した。

全く相手と同じものだ。

そう。俺は初めて変身ミミックを使用した。


なんか変な気分だ。今まで四足歩行だったのに急に二足歩行なんだ。

しかも今までついていなかったものも股間に…

まぁ究明眼のおかげで魔法の仕組みなどはもう相手から見せてもらったので問題なく闇魔法が使えたというわけだ。


どのくらいMPが減るのかなと思ってみてみたら、40くらいしか減ってなかった。

なんて恐ろしい子っ!!

その減ったMPも気付いたら回復してたし。

この程度の魔法ならどれだけ連発しても大丈夫そうだ。


まさか闇魔法を使えると思っていなかったのか、それとも狐が急に人に変わった…それも自分自身のようなものに変わったのに驚いたのか、ボゴールは立ち尽くしている。

「来ないならこっちからいくぞ?」

久しぶりに言葉を喋ったので。変なイントネーションだったが今は気にしない。

俺は両手に闇魔法を纏わせ相手に走って向かっていく。

この体速いな。

かなり身体能力が高いようだ。

20m程離れていた距離はもう2mほどまで迫っている。


ようやくボゴールは自分の状況を思い出したのか、即座にバックステップをする。


その程度のバックステップならすぐ差は埋められる。

そう思いどんどん攻め立てていく

ついにボゴールの体に拳が届く距離まで来た。

どんどんどんどん殴り掛かる。

俺の魔力の質で作られた闇のグローブはボゴールが闇魔法で生み出した壁のようなものを簡単にぶち抜く。


みぞおちに一発。二発。

自分でも気持ちいいくらいのパンチをボゴールに撃ち込む。

瞬間腹を抑えその場に倒れ込むボゴール。

HPを見るとなんともう400しかなかった。

恐らくあと一発みぞおちに闇のパンチが入れば死ぬだろうな。


まぁ全く止める気はないのだが。


倒れ込むボゴールを見ながら近寄り、うずくまるボゴールに向け闇魔法を放つ。

剣を作るイメージで魔力を整える。

暗黒剣と呼べそうな片手剣を作り出し、思いっきりボゴールに向け突き刺した。

少しもがき苦しんだが、そのまま動かなくなった。

ふーん。人殺すってこんな感じなんだ。

正直罪悪感は一切ない。

なんなら興奮してるくらいだ。

興奮を落ち着かせながら、本当に死んだかを確認するためにステータスを見ようとした。


しかし表示されない。


恐らく死んだ相手には表示されないのだろう。

またこの世界のルールをひとつ知ることが出来てよかった。


ついでに俺のステータスを見ると、MPは6万のまま全く減っていなかった。

変身の時も魔力消費するみたいなこと書いてあったよな??

しかも今俺はおそらく魔力垂れ流しながら戦っていた。

それなのに変化なしってやばいなこれ。


自分のチート加減に気付いてしまった。
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