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1章【人間国】

大好物

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ボゴールとかいう男を殺してから1日経った。

あれからママンは元に戻った。

恐らくモンスターテイムや闇魔法をかけていたボゴールが死んだからだろう。
意識を取り戻したママンは操られていた時のことをしっかり覚えているらしく、俺がボゴールに変身したこと、圧倒的な魔力でボゴールを倒したことをとても喜んでいた。

ちなみに、ママンは直感的に俺が使っているスキルが自分の持っている《変化》では無いことに気付いたようだが、子供の俺が生きているなら些細なことだと思い気にしないことにしてくれたらしい。


人を倒したおかげか、俺も一気にレベルが上がって17になっていた。

HPはもうママンより多くなり、MPに関してはもう10万近い値になっているんだからやばすぎる。


というかステータスを見て気付いたけど俺って名前あるんだよな…


種族名の横についた【レラ】という名前を見る。
ママンがつけてくれたのかもしれないと思ったのでママンに聞いてみたが、付けてないらしい。
俺のことを産む時に頭の中にこの名前が浮かんできて、ビビッと来て、生まれた俺にそう呼びかけたんだそうだ。


レラってかっこいいし気に入ってるからいいんだけど…


ママンやパパンを見る限り魔物は名前を持ってないのが普通のようなのだ。
今まで食べてきたワンダラビットも種族名はあれど名前はなかった。
人間だったボゴールには名前があったので、人族なら名前があるのが普通なのだろうか?
考えてもわかんないし、情報も少ないし。
今は考えるのをやめておこう。


あ、それとあれからパパンは帰ってきていない。
ママンに聞いたところ、壮絶な戦いがあったようだ。


実はボゴールの他にもあと2人程人間がいたらしいのだが、パパンが命をかけて殺したらしい。
2人を殺して安心しているところに、隠れていたボゴールに闇魔法で不意打ちされ、そのまま…。
そしてママンは洗脳されテイムされてしまったというわけだった。


もうこんなことがないようにしっかりママンを守らなければ。
旅に出ないのかって?
ここの生活も楽しいし、まだ1週間程しか住んでないしね??
ママンも綺麗だし(※イメージです)
もうちょっといてもいいかなってね。


ということで今俺はママンの代わりにワンダラビットを狩りに来ている。

そこは俺らが住んでいるところから東に2キロほどの草原。
ちなみに俺らが住んでるのは【イレンフォレスト】という名前で、草原の名前は【ワンダーステップ】というらしい。

究明眼で自分の種族とワンダラビットを調べたところ、種族に関する詳しい説明があり、この土地に住むことも分かったのだ。
ちなみに【イレンフォレスト】自体のことも調べてみたら、ここは【トピ大陸】というところにあり、近くには人間の国があるらしい。
詳しい国の名前は出なかったが、旅に出るならまずそこかなぁと思っている。

ここまできたら【トピ大陸】も調べておこうと思ったが、何故かこれ以上詳しい説明は出てこなかったので、諦めた。


暇になっちゃったなぁ~。

いやね?全然犬兎出てこないわけですよ。
暇だからっていろいろステータス見てたら新しい情報出てきて楽しいと思ってたのに。
もうこれ以上暇つぶしにステータス使えないじゃん!どうするんだ究明眼!

心なしか右目が疼いた気がしたが、きっとそれは俺のせいなので気にしないようにする。


どうせ暇なのでここで《変身ミミック》の練習でもしようかな。

まずはママンの姿を思い浮かべて…っと。

この急に体が大きくなる感覚ってのは変な感じだな。
全然嫌ではないからいいんだけどね。

問題なくママンの大きさになれたので、次はボゴールの姿を思い浮かべて変身する。

これって他の人から見たらどうなってるんだろう。
体が光に包まれてるとかいう訳では無いので、変身タイムは丸見えなんだ。
あんまり人がいるところで無闇矢鱈に変身しまくらない方がいいかもしれない。

そんなことを考えていると問題なくボゴールの体に変身することが出来た。
死んだものでも1度見ていれば変身出来ることが分かった。
でもこれって死んだ人の友達とかがいる時に使うとめんどくさいことになりそうだな。


どうせめんどくさい事になるならたくさん身分の高い知り合いがいる体が欲しいもんだ。


この状態でステータスを見てみると、やはりMPは減っていない。
そこで闇魔法を使ってみる。

使うのはできるだけ魔力消費が多そうな技。
魔法はイメージだとかよくアニメや本で見たけど、この世界は本当にその通りだと思う。

もしやろうと思えば闇魔法でも回復のイメージさえ持てれば回復することが出来ると思う。
そんなイメージないんだけどね俺には。


さて、今回俺がイメージしたのは霧。
俺の魔力を薄く広く伸ばしていく。
暗黒剣を作った時よりも魔力を使っている感覚がある。
俺の身を隠すイメージも持っているので、おそらくこの霧には認識阻害的な効果があると思う。
MPを見てみるとやはり全く減っていなかった。
この程度のLvなら変身しても俺の自然魔力治癒力に魔力消費量が負けて魔力収支がプラスになっているようだ。


この状態ならほぼ制限無しに戦うことが出来ることがわかったので変身を解いて元の姿に戻った。


しかしやっぱりもっと強いやつに会ってみたいもんだなぁ。
旅に出ることもちゃんと考えておかないとなぁ…。


元の姿に戻って考え事をしていると、ついにワンダラビットが俺の目の前に現れた。

ワンダラビットは俺の体の大体3分の1くらいの大きさで、元の世界ならペンギンの赤ちゃんくらいの大きさだろうか。

非常に美味しそうだ。

どうやら向こうも俺に気づいたらしく、逃げようとしている。
もちろんこんないい獲物を逃がすわけもないのでママンの姿に変身してみる。

変身して、倍近い体格になった俺を見て恐らくワンダラビットはかなり驚いてるだろう。というか絶対そうだよこれ。逃げるスピードあがったもん。

問題なく追いつけるスピードなので、ササッと追いついて火魔法を使用する。
今回のイメージはナイフ。
熱刀ヒートナイフとでも名付けようか。
大きさは短剣くらいありそうだなこれ。
そんなナイフを三本ほど用意して俺の周りに漂わせる。
一本ずつ発射していく。

一投目は当たらず、草原に突き刺さる手前で俺が消滅させる。
流石にこれが燃え移ったらめんどくさいし、最悪俺の家も無くなりそうだし。
続けて2発目。
これはしっかりワンダラビットに突き刺さる。
肉の焼けるいい匂いがしてきた。
早く食べたいのでさっさとトドメをさしてしまおう。
三本目も発射して問題なく刺さる。
絶命したことを確認してみる。

うん。問題なく死んでるわこれ。

火魔法もしっかり使えることも確認できたし。

昼頃出発した気がするのだが、もう日が落ちてきている。

はじめの方に生け捕りにしていた2匹を加えた3匹が今日の成果だ。
ママンも喜んでくれるだろう。

俺はすっかり好物になってしまったワンダラビットをほくほく顔で抱えて住処に帰った。
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