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1章【人間国】
鎖
しおりを挟む早速あれを試すことにした俺はその場でうずくまっているアスカの元へ近寄る。
周りが見えていないのか全く俺の事に気付いていない。
好都合過ぎてちょっと自分でも引くレベルだよ。
ご都合主義とか嫌いだったけど、いざ自分がそういう状況になるとすごいありがたいよなぁ~。
そんなことを思いながら俺はボゴールに《変身》する。
その間もアスカは絶望したままの状態でいた。
ボゴールに変身した俺はアスカに向かい闇魔法を放つ。
攻撃目的ではないことは闇魔法の形状からよくわかると思う。
俺が今絶賛放出中なのは闇の鎖。
しかも質量のイメージをしていないので完全なる魔の鎖だ。
これで人を縛ることは出来ないが、もしかしたらあることができるかもしれないと思っていた。
それは『支配』。
これで相手の魔力や精神を縛ることが出来るなら支配も可能かもしれない。
俺が創り出した鎖はゆっくりとアスカの体に染み込んでいった。
するとアスカは体を一瞬痙攣させ気絶してしまった。
アスカの心の声が俺に届く。
彼女は愛する人に攻撃してしまったのだ。
不可抗力とはいえ事実に変わりないその行為から目を背けている。
そこに鎖を使って少し俺の意識を流す。
「お前が斬ったのは偽物だ」
「本物のククールは目の前にいるじゃないか」
「俺のスキルの力なんだ」
そんな甘い言葉をかけるように意識を流す。
すると彼女は顔を上げ俺の方を見る。
そこにはククールが立っていた。
まぁ俺なんだけどね。
闇魔法で作られた鎖も人の体に入っちゃえば俺の魔力扱いだから変身した後でももちろん使えるわけよ。
そして彼女にかけたあの言葉。
ククール(俺)は実際目の前に立っている。
そこからの彼女の行動は予想通りのものだった。
「生きてて良かった…。わ、私が殺しちゃったかと思ったよぉ…。」
涙を流しながら俺に抱きついてきた。
そこですかさず俺は鎖を使い暗示をかける。
「ククールは見たものに変身できるスキルを持つ」
「他の仲間は2人の邪魔をする」
この暗示により俺がアスカの目の前で変身しても何も思わないだろう。
そしてもうひとつの暗示によってアスカは動き始めた。
目から完全に光を失っている彼女はまず近くに倒れている本物のククールにトドメを刺す。
「これは偽物だから殺しちゃってもいいよね!」
何のためらいもなくククールに剣を突き刺し、引き抜く。
彼の血が大量に付着している剣を汚いものでも見るかのような目で見る。
今にも投げ捨てそうな雰囲気だがどうにか我慢したらしい。
ククールを刺した後は木の横で倒れているクレア、竜巻が起こっていた場所で倒れているアトムとどんどん仲間に手をかけていく。
これ完全に堕ちてますわ!
まさか適当に思いついた『洗脳支配鎖』がここまで使えるとは。
心が折れてたからかかりやすかったのかな…。
俺は可愛い女の子が手に入って満足です。
無事(?)他の仲間達を殺し終えたアスカは俺に近寄ってくる。
彼女の瞳に光が無いのは怖いが、非常に美しいと思った。
髪の毛の甘い匂いが俺の全神経をくすぐっていく。
血の匂いと混ざりあって忘れられない匂いになりそうだ。
「これで2人っきりだね。レラ。」
俺は彼女が仲間を殺している間にさらに暗示をかけていた。
「本名はククールではなくレラ」
「ククールは偽名」
「レラの言うことは絶対的に正しい」
この3つの暗示をもって、俺の『洗脳支配鎖』実験は完全に成功した。
やはり名前を呼んでもらうにも自分の名前以外で呼ばれてもピンと来ない。
だから俺の本名で呼んでもらうことにした。
しかしククールという名前も使うことがあるかもしれないので完全に消した訳ではなく偽名で使っているということにしたんだ。
頭良くない?俺って。
そして最後の暗示は完全に俺の下僕にするための必須暗示。
これでさっき観察してた時みたいに俺に向かって喧嘩腰で話しかけて来ることは無くなるだろう。
俺は従順な子しか受け入れないから!!
さて、彼らの死体をママンの姿になり、火魔法で焼き尽くした俺はククールの姿に戻り、街道近くの木陰でアスカと話していた。
「ねぇ、ククール。好きだよ…えへへ」
暗示をかけおわった彼女からの第一声だ。
彼女は元々ククールのことが好きだったがなかなか素直になれず好きとは言えなかったのだろう。
しかし暗示をかけ、ククール至上主義的女になったために心の枷が外れ、好き好きアピールができるようになった。
これは俺にとって非常に喜ばしい事態だった。
好きという告白に対しどう返答したかは俺とアスカの秘密にしておくつもりだ。
…何と言われようと墓場まで持っていくからな!!
現在は俺の腕にしがみついて離そうとしないアスカと休憩中。
凄いいい匂いするんだけど。これが女子か。
神さま仏さまありがとうありがとう。
いかんいかん。こんな童貞みたいな(童貞です)想像をしていたらダサい男だと思われてしまう。
俺は今日からイケメンだからよろしく!
しかし、改めて見ると本当に可愛い。
黒髪ショートで赤い目。
唇はプルっとしてて凄い…エロいです。
そんな女の子が俺の腕にしがみついてるんだぜ。
しかもかなり胸の膨らみがあるご様子で。
とにかくすべてが高レベル。
いやでも好きになっちゃうよね。
今までククールにどんな扱いをされてきたか分からないけど、俺は精一杯愛してあげようと思う。
「レラ~!私お風呂入りたいよぉ~」
どうやら返り血や汗などで汚れているのを気にしてお風呂に入りたいようだ。
先程の彼らの話を聞く感じだとこの街道を歩いていけば街につくらしい。
恐らくそこに彼らの泊まっていた宿があり、風呂などもあるんだろう。
俺もぜひ風呂には入ってみたいのでアスカに案内を頼むことにした。
「アスカ、その街まで俺を連れてってくれ。」
「レラは街のこと知ってるのに~!甘えん坊なんだからっ。」
あっ。
ククール=俺になってるからそういうとこは知ってる設定になっちゃってるのね。
まぁ不思議に思われてるわけでもなさそうだし、わざわざ暗示をかけることは必要ないだろう。
そんな感じで俺らは木陰を出発し、街へと向かった。
少し休憩を挟みながら2時間ほど歩いてきた。
アスカの話によるともう少しで着くらしい。
その証拠にだんだん人と会うことが多くなり、その度に俺らは見られるのだ。
まぁ美少年と美少女が2人で手を繋いでイチャイチャ歩いてるわけだからね。
そりゃ爆発しろって思うよね。当然の権利だよ。
理由はそれだけではなく、俺ら、というかククールたちのパーティが街で有名な冒険者だったからだろう。
アスカに冒険者のことについて色々聞いたから間違いないと思う。
冒険者にはランクという概念があり、そのランクに応じて受ける事が出来る依頼などもかわってくるらしい。
ククールたちのパーティはBランク。
ランク自体はG~SSSランクまであり、依頼をこなすことによってGからだんだん上がっていく方式のようだ。
パーティ登録している冒険者と個人登録している冒険者の2パターンに分かれていて、パーティ登録の場合はパーティ自体のランクになる。
つまり、このパーティが全員揃っていればまず間違いなくそのランクくらいの依頼はこなせるだろうと認められているということだ。
しかし個人登録は違う。
個人でそのランクの依頼をこなすことができるのが条件。
パーティは4人まで登録することが出来るので、その4人で協力すれば個人ランクがC相当だったとしてもパーティランクはAなんてことも起こりうるらしい。
個人登録でBランクにもなってくるといよいよ異常に近く、AやSなどは伝説に残るレベルらしいということも聞いた。
ちなみにパーティランクであればAくらいまでは頑張ればいけるっぽい。
Sは異常だからとアスカは言っていた。
冒険者っていうのはこんなもんらしいのでこの若さでBランクのパーティなのは割とすごいことなんだろう。
俺は個人登録でSランクのやつを見てみたい欲しか今はないんだけどね。
そんなことを考えつつ俺らは街に向かって歩を進める。
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