変身とかいうスキルは俺にとって最高のスキルかもしれない。(旧題名『ミミック』)

七鳳

文字の大きさ
10 / 18
1章【人間国】

テンプレ

しおりを挟む
まるで人間のようなチームワークを発揮していたゴブリンたちの解体も終え、俺はまた別の獲物を探しに来ていた。

ちなみに今は元の九尾狐の姿に戻っている。
特に大きな理由はないけど、強いて言うならこの姿が1番魔力を使いやすいからかな。
他の姿でも自分の魔力は問題なく使える。
でもやっぱり自分の本来の姿なら何のストレスも無く生まれ持った手や足を動かすように使えるからね。


こういうどこから魔物が来るか目では分かんない状態では、魔力感知が命綱。
その命綱を補強する意味で元の姿に戻っている。



しかしこの姿になってからというもの、全く魔物が寄ってこない。
ククールフォルムの時もなかなか魔物とは出会えなかったが、その時よりもさらに出会えていない気がする。
もうさっきの戦闘から2時間くらい経ってるはずなんだけどなぁ。


現在時刻は午後九時頃。
まだまだ夜は長いが、この調子だとほとんど何もせずに終えることになりそう。


そう考えた俺は行動範囲を街の外壁が見えないところまで伸ばすことにした。
と言ってもそんなに遠いところに行くつもりは無いけど。
きっと実家イレンフォレストに帰ることが出来れば、沢山魔物はいるだろうし、レベルも上がると思う。
だけど往復4時間~5時間かかる道のりは長すぎるし、そんなに歩き回るつもりもない。
戦闘をしては休み、戦闘をしては休むくらいのペースが理想だな。
そういう理由もあり、街の周りと言える範囲で活動することにした。


行動範囲を広げてから30分ほど経った。
魔物は何匹か見つけることができたのだが、その全てが単体であり、あまり経験値を得ることは出来なかった。
ちなみに出会った魔物は、テナガザルのような見た目だが、その長い手が通常の数の倍あるという『エポソル』や、俺の半分くらいの大きさを持つ巨大蛾で、翼の模様を見せることにより人のトラウマを引き出す『パラノイア』だった。


あと2匹オークを仕留めたが、やはりあれからゴブリンの姿を見ることは無い。
かなり警戒されてるようで1度魔力感知の範囲を限界まで広げてみたが、その中には先程挙げたエポソルやパラノイアしかいなかった。


ゴブリンを1匹くらい生きて残しておいてもよかったかなと思うが、過ぎたことはどうしょうもないので諦める。
別にゴブリンを滅ぼしたいわけでこの夜の森で暴れまくってるわけじゃないしね。
Lvが上げられるだけの魔物が出てきてくれれば充分だよ。


その充分な魔物も出てこないんだが。


正直本気で戦闘できる相手に出会えていない今、ストレスを発散できる相手は魔物くらいしかいないんだよね。
こんな所で満足できる魔物が出てくるとも思ってないが、数がいればそれなりに楽しいだろうと思っていた。


しかし蓋を開けてみれば、もちろんそんな強い魔物もいないし、頼みだった数も中途半端。
さっきのゴブリン達との戦いはいくらかマシだったので、ちょっとゴブリン達のことが気になるのは仕方ないことだろう。
数も充分だったし、あの練度なら正面からの戦闘は楽しめそうな気がする。


ただそのゴブリン達には嫌われているようで気配すらしない。
ボク、カナシイ。



外で過ごす覚悟を決めた顔をアスカに見せてしまったので、つまんないから宿に戻ってきましたともなかなか言いづらい。
というかもう寝てる気がする。
今日は動きっぱなしだったし、分かれてからもう大体4時間ほど経っている。
俺なら間違いなく爆睡してそうだ。


圧倒的に暇だがこれもひとつの試練と考えて明日の日の出くらいまで、残り9時間ほどあるが頑張ろう。
再び覚悟を決めた俺はさっきより、少し堂々と歩き始める。














ーーーーー9時間後。
朝の太陽の光と心地よい風に起こされた俺は酷く絶望していた。
覚悟を決めて歩き始めて500m程のところで唐突な眠気が俺を襲い、それに耐えきれなかった俺はササッと近くの木の上に登り、魔力感知の範囲を3mまで狭めて寝てしまったんだ。
すぐ起きるすぐ起きると考え寝たのが間違いだった。
しっかり9時間寝てしまった今のこの状況が何よりの証拠。
結果合計15匹程度の魔物しか倒すことはできず、Lvも元々のLvより7ほど上がっただけだった。
《魔の加護》のおかげで、やはり魔力の上がりは凄まじいが、その他はそれほど上がっていない。
SPDとVITに関しては100ほどしか上がらなかった。
俺の種族はそういうステータスが上がりにくいんだろうか。


詳しいことは分からないが、とりあえず今はこれからどうするか考える。


今街に戻るのもいいが、アスカはもう情報収集に向かっているかもしれないし、何処にいるかも分からない。
情報収集を頼む時に、「昼頃帰る」と言ってあるので、昼には宿にいるとは思うが。
もうここまで寝てしまったんだからさらに寝てもいいだろうという悪魔の声も聞こえる。
ただこの誘惑に負けたら何か大事なものを失う気がしてどうにか必死に抵抗する。


誘惑に打ち勝つためにサッと木の上から降りた。

…名残惜しいが仕方ないことなんだ。

自分の中の悪魔の中に言い聞かせ、昨日睡魔のせいでズタズタになった覚悟をどうにかこうにか修復し、魔物を探しに歩き出す。


明るくなったおかげで夜に比べてとてもあたりの状況が把握しやすいが、逆にこうなってしまうと魔物も警戒して出てこないような気がする。
そんなことを思っていると、金属同士がぶつかり合う音が耳に入ってくる。
音量的にはそんなに遠くなさそう。
今までこんな音してなかったので、たった今始まったんだろう。



音のする方へどんどん向かうと、街道に出た。
そこには馬車が1台止まっていて、その馬車を囲うように5人の黒い動きやすそうな服を着た者達が剣を構えたり杖を持ったりして立っていた。

その3人と向かい合わせになるように馬車を背にして戦っているのは3人の男達。
馬車の中には恰幅のいい男性が震えながら残されている。
おそらく商人の護衛の冒険者たちが、馬車を襲っているというありがちな状況なんだろう。


だけど今の俺にとっては好都合。
色々なものに変身することが出来ると出来ることも広がるし、戦闘ができるというのは非常に嬉しい。


3対5という不利な状況でもどうにか冒険者たちは少しの傷を負う程度で戦っているが、彼らがやられるのも時間の問題だろう。
俺はさっさと戦闘したかったので、力強く地面を蹴り放ち、馬車にしか目を向けていない5人の盗賊たちの1人に斬りかかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...