変身とかいうスキルは俺にとって最高のスキルかもしれない。(旧題名『ミミック』)

七鳳

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1章【人間国】

3人組

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完全に無防備な盗賊団。
その内のいちばん俺に近かった不運な小柄な男の背中に向け一閃。
やっぱり剣を使うならククールモードが1番いいわぁ~。
空も他の人間よりは制限なく動くことができるし、魔剣も魔力量の多い俺と相性がいい。
さらに《勇猛果敢タチムカウモノ》も実際かなり使えるスキルだということがわかっている。
今は、という言葉がつくんだけどね。


このスキルは格上と闘う時に効果が初めて発動する。
前はこの格上の条件が全く分からなかった訳なんだけど、様々な実験や聴き込みのおかげでようやく判明した。というかほぼアスカから聞いた。


どうやらこのスキル、元々は他人のステータスを除くことができないククールが持っていたスキルのため、格上の基準に全くステータスは関わっていない。
ではどうやって決めるかということなんだけど、一番大きい基準は『思い込み』らしい。
相手の攻撃や魔法を受けるなどして、実力を知ることで、自分より強い事を確認してやっと発動するものらしいんだ。
なんてことだ、俺にはそんなこと無理じゃないか!


そんなことを思っていた時期が私にもありました…

この条件の重要なところは、『相手』が『強い』と思い込むこと。
言い換えれば、相手を強いと思い込むことが出来れば、別に本当にそいつが弱かろうが強かろうが関係ないのだ。
これを知った後から俺は全ての敵を、最強の生物『デス・ドラゴン・ロード』だと思って接している。


そのデスなんとかはどんな魔物なのかだって?
多分黒いんじゃないかな?ぼくがつくりだしたさいきょうのせいぶつの類いだから良くわかんないや!


少し話がそれた。
要するに、めっちゃ強そうな敵を勝手に想像で作り上げ、その敵の姿と、本当に相対する敵の姿を重ねてしまえば完璧というわけ。

想像力豊かな俺ならできる荒業だ。おそらくきっと。


というわけで、俺は常に《勇猛果敢タチムカウモノ》の恩恵を受けることに成功している。
これのおかげで全ステータスが1.5倍になっている。
ククールはもともとBランクのパーティメンバーなので普通の状態でも充分強い。
そこにさらに恩恵を受けることで、ククール単体でもでもBランク程の力を発揮できるようになる。


剣の使い心地が良すぎて、ほぼこのククールモードで戦闘しているせいで、俺の元々のスキルの《透明化》や《座標交代》が完全に空気になっている。

でもしょうがないよね、強すぎるもんこのスキルたち。
多分元々の姿でこいつらと本気で戦闘したら、3分もかからず皆殺しに出来る自信がある。
もしかしたら1分くらいで全滅させる、なんて事も可能かもしれない。
それくらいおかしなスキルを持ってるんだ。


そして何よりも俺にとってありがたいのは、スキルが無くてもそれ何に真似すれば、それなりの事はできるということ。

例えば魔力を纏わせるテクニック。
俺は馬鹿みたいな魔力量があるので、スキルの助けを得ることなく、無理やり纏わせることが剣などに向けて可能なのであれば、《魔剣術》に似たような効果を発動することができる。


実際のスキルよりも遥かに魔力を消費するし、攻撃力などの増加もスキルほどではない。
それでも「あ~、魔剣術っぽいな~」くらいの事はできる。
そのおかげで魔法などを持たない元々の狐の体でも圧倒的な攻撃力を手に入れることが出来ている。

なんか戦闘の前にかなり関係ない話までしてしまった気がするが、まぁいいだろう。
この間わずか2秒程なのは言うまでもない。














無防備な背中へBランク冒険者並のパワーで斬りかかられた男はもちろん耐えることなど出来ずに大量に出血し、前のめりに倒れた。

残りは4人。
仲間が斬りかかられた事に驚いているのか全員フリーズしている。
盗賊たちだけでなく3人の冒険者たちももちろんカチコチだ。


そんな事は全く構わず、俺の身長の半分くらいの長さの刀を持っている、すらっとした体型の長身の盗賊男に向けて炎を纏わせた小型ナイフを投げる。


俺が最初に倒した小柄な男の装備だったようだが、ちょうど良かったのでこんなことに使ってしまった。
反省はしていない。


炎を纏った投げナイフが飛んできている事を彼の頭が認識出来たのはほぼ当たる寸前のところだった。
間一髪致命傷は避けたようだが、心臓を狙って飛んできたナイフは彼の左腕に刺さり、燃え盛っていた。


すぐに抜こうとするが燃えているのでかなり熱い。
それでもやはり刺さったままの痛みよりはまだマシなようで、気合でそのナイフを掴み抜き、すぐ捨てた。


俺の事を睨んできているのは完全に無視してステータスを覗いてみるとステータスが残り半分くらいになっていた。


あと一押しかな。なんて思っていると、

「そこの君!もしかして助けに来てくれたのか!?」

「こんな若造に助けられるとはなっ!ハッハッハ」

「笑ってる場合じゃないぞロビン、戦え戦え!」


3人の冒険者たちが頭を整理し終えたようで、俺に話しかけてきた。
今までは3対5だったためかなりきつそうに見えたが、今は俺も合わせて4対4。
そういうこともあり、話す余裕が出来たっぽい。


事実、彼らは自分の目の前にいる盗賊を押しはじめた。
ロビンと呼ばれた男は、バトルアックスと呼べそうな大斧を振り回し、剣しか持っていない盗賊を圧倒している。
おそらくさっきまではすきがでかい攻撃を使うと他の盗賊に反撃されてしまうと思ったので使っていなかったんだう。
他の盗賊がいなくなった今邪魔など誰にもできない。
その姿は鬼神のようにも見えた。


そしてロビンに向けて、戦えと言っていた眼鏡をかけた男。どこか雰囲気が冒険者ギルドで俺に借金の値段を突きつけた男に似ている。

メガネかけている人が全員似たような雰囲気に見える病気治したい。


この男の武器は自分自身の体のようだ。
俺が狐モードの時に使う、尻尾に魔力を纏わせるというものに似ている。
自分の両拳に魔力を纏わせ、攻撃力、防御力、パンチスピードを上げているんだろう。
一つ一つが必殺の威力、速度で飛んでくるものを避けられる訳もなく、彼と相手していた、こちらもまた拳が武器の盗賊もなす術なく殴られまくっている。

南無阿弥陀仏。


最後まで敵と向かい合わせで隙を伺っているように見えたのは、最初に俺に向かい話しかけてきた、優しそうな顔をした男性だった。
彼の武器は一応剣だが、構えてるだけで攻撃するつもりはなさそうだ。
盗賊の男も、その様子を見て何かあるんじゃないかと警戒し、一挙手一投足を注意してみているようだ。
そのまま30秒ほど経った。その時、急に盗賊の男が倒れた。
周りから見れば一体何が起こったのか分からないだろう。
俺も彼のステータスにあるスキルを見てなかったら全く意味かからなかったと思う。


これで3人の冒険者たち全てが相対する敵を倒したことになる。
ちなみに俺と戦っていたナイフを刺された男は俺に向かって斬りかかってきたので、タイミングを合わせカウンターで殺しといた。
そのおかげで彼らの戦いをゆっくり見ることができた。

たくさんの血が流れているためかなりグロテスクな状態だが、ひとまずは馬車とこの人達が無事ということは間違いない。


俺はいろいろ聞きたそうな顔をしている彼らと話をすることにした。
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