変身とかいうスキルは俺にとって最高のスキルかもしれない。(旧題名『ミミック』)

七鳳

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1章【人間国】

【ウルティオ】

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彼らの雇い主の商人が馬車のに積まれた荷物や、馬に怪我が無いかなどをチェックしている。


いくら見た目自体は無事といっても、そういう細かい部分には問題があるかもしれない。
これを確認するのは当然だと思う。


商人が確認をしている間はもちろん先へ進むことは出来ないので、俺と3人組の冒険者は近くに座るのにちょうどよさそうな切り株がいくつかあったため、そこに腰掛け話をすることにした。


「ククールくん?でよかったんだっけ?」


ククールモードの俺にそう問いかけるのはかなり弱そうな雰囲気を醸し出す20代前半くらいに見える男性だ。
先程の戦いでは斧使いのロビンと呼ばれていた人の陰に隠れてしまって、全く目立っていなかったが、この人もちゃんと盗賊を1人で倒していた。
彼と相対していた盗賊にはたくさんの切り傷がついていたし、彼の腰元の鞘には先程構えていた剣がしまわれているはずだが、見ていた限り剣を倒した気がするので、実力は一番不明だ。


「はい、ククールといいます。あなたの名前は?」


「挨拶が遅れて済まないね。俺はジェフ。そしてさっき斧を振り回していたのがロビンで、そっちの残り1人がドイルだ。俺たちはパーティ『ウルティオ』として活動してるよ。一応最近Cランクになったところかな。」

ロビンさんは紹介されると口元の髭を触り、少し恥ずかしそうにしていた。
一方ドイルと呼ばれた男は自信満々なドヤ顔でこっちを見ていた。
正直ここまで露骨なドヤ顔は初めてみました。
恐らくCランクっていうのが誇らしいんだろうけど、俺は一応Bランクパーティの冒険者なので、特に何も思わない。
というか、俺は割と街で名前が知られてるはずなのに、なんでこの人達は知らないんだ?
ククールという名前を聞いただけでも、簡単にBランクパーティの『フォースウィンド』が容易に連想出来るくらいの知名度だった気がするんだけど。


それを知らなかったら困るかと言われれば全くそんなことは無いし、なんならいつもちやほやされたり、露骨にライバル視されるのが嫌だったので、こっちの方が楽でいい。


さっきの商人の方は気付いてるっぽいけどね。


「ところで君はなんでこんな時間に森の中にいたんだい?見たところまだ成人してなさそうだけど。」


ジェフさんが当然誰もが考える疑問を俺に投げかける。
ここで、「Lv上げするために一晩中森で過ごしていて、少し寝て起きたら戦闘音がしてたので来ました」とか言っても頭おかしいと思われるのは十中八九間違いないので適当に答えておく。


「早朝だと、他の冒険者の方も少なくて、魔物の姿も見やすいのでスキルの練習にちょうどいいと思って練習してたんです。そしたら皆さんの戦闘音が聞こえてきた…って感じです。」


「若いのに立派な心がけだぜ坊や!」


ロビンさんが俺にサムズアップしがら言う。


「いちいち声がでけぇんだよお前は!まだ早朝なんだから静かにしててくれ…」


ドイルさんは耳を塞ぎながらロビンさんに文句を言っていた。
実はもう早朝と言える時間ではなくなっているんだけどね。
アスカと約束した時間まではまだ時間があるので冒険者たちとの会話を続ける。


「【ウルティオ】の皆さんはクエスト中かなんかだったんですか?」


「そうだね。この街から、隣町の【鉱山都市エルジュ】まで商売しに行くという商人の護衛をやることになっていてね。今ちょうど出発したところだったんだよ。まぁ、こんな状況になっちゃったからどうなるかわかんないけどね。」


「このままクエスト中断になったら厄介だな…。俺らは早くランクをあげて上位ランクの冒険者の仲間入りをしたいって言うのに。」


「そんなに慌てるなよドイル~!早くなりたいのは俺もそうだが、慌ててちゃできるもんもできなくなるぜ。」


どうやら先日見たクエストボードにあった護衛のクエストを受けていたらしい。
【鉱山都市エルジュ】というのは少し気になるが今は少忘れて他の話に専念しよう。
後でアスカにでも聞けばわかることだしね。


彼らとはこれからも仲良くしていきたいと思っている。なぜかと言うと、俺は色んな情報を知るためにアスカの力を頼ってる訳だが、彼女だけじゃ分からないこともこれから出てくると予想される。
そんな情報を聞けるような常識のある冒険者が他にも欲しかったんだ。
ギルドのあの眼鏡の人も候補の1人だったが、こうやって出会いがあったんだから大事にしていこうと思う。


それにしてもロビンさんは声が大きい。隣に座っているドイルさんは俺なんかよりもっと衝撃を受けているんだろう。


ドイルさんへ心の中で合掌をしておく。


「ところで坊主はさっき剣を使っているところを見たけど、かなりの剣術だったな!その若さでよく鍛えてるぜ。ハッハッハ!」

「それは俺も気になってた。どんなスキルかまでは言う必要はないが、少し教えてくれないか?かわりに俺たちのスキルも話すからな。」


いつかスキルについて聞かれるとは思っていたため返答は前々から準備してあった。
またまたアスカから聞いた話だが、この世界ではスキルは1人三つまでしか持つことができず、1度得たスキルを自力で消すことは出来ないらしい。
スキルは必ず生まれた時にひとつ何かしらスキルを覚えていて、残り二つは自分が覚えたいと思ったスキルの本を読むことで覚えられるらしい。


この話を聞いて少しゲームみたいだと思ってしまった。
本を読むだけでスキルゲットできるとか楽勝すぎでしょ。
ただ得た後にしっかりスキルを理解するために修練が必要らしいが、簡単に得ることだけはできるだけでもずるいと思う。
ちなみに本は読んでも消えないらしいので貴族などは、生まれ持ったスキルと、家に伝わる有用なスキルと、自分が欲しいと思ったスキルという構成の者が多いらしい。
なんでアスカがこんな事を知っているのかとも思ったが、多分常識なんだろう。
俺自身は三つスキルを持ってしまっているため他には覚えられないが、変身することにより無限とも言われるスキルを使いまくることが出来る。

やはりこのスキルは最強。


まぁそんな感じでスキルを所持する個数に限りがあるため、あまりスキルについては教え合わない。
多くても三つの手札なんだから1枚も見せたくないのは当たり前だろう。
それをドイルさんは分かっているため、教えられることだけでいいということと、自分たちも少し教えるという条件を出してきたんだろう。


ちょうど俺もこの人達のスキルは気になっていた。
特にジェフが剣で斬ることなく敵を倒したにも関わらず死体にはたくさんの切り傷がついていた理由がとても知りたい。


そんなこともあり俺は変身のスキルのことはもちろん隠し、先程投げた炎を纏ったナイフの説明として剣術と火魔法の2つのスキルを使って引き起こしたと説明した。
もしもっと詳しく聞かれてきてもこの2つなら問題なく説明できる。
剣術に関してはまだ使用したことないが、どうせ魔剣術の魔力纏わせれないバージョンなので、そのつもりで説明すれば問題ないだろう。
火魔法については、俺が一番得意とする魔法でもあるし、何かとよく使う魔法でもあるので勝手はよく分かっている。


正直もっと聞いてくると思っていたが、スキルを2つ使用してあの威力なら納得だと言って俺への質問は終わった。


次に彼らが自分たちのスキルについては教えてくれた。

「僕が1番メインとして使ってるスキルは《才色剣美》というもので、剣が美しければ美しい程、剣の扱いに補正がかかったり、攻撃力が上がったりするんだ。」


ジェフがかなり素直に教えてくれた。
確かに彼の剣は煌びやかな装飾がされていて、光が反射すると七色に光る。
しかし彼は嘘をついていることが俺にはバレバレだ。
実は彼のステータスだけはすでに覗いている。
だってさっきどうやって敵倒したのか知りたかったしね??
男の子は誰だって知的探究心の塊なんだ。分かってくれ。
話が逸れたが、それで見た限りではそんなスキルは持っていなかった。
隠したい気持ちは本当に分かるが、全く違うスキルの話をするなんて思ってなかったし、そこまで信用されてないと思うとなんだか悲しくなる。


まぁ隠していることをわざわざ指摘するのも嫌だし、なんならステータスで覗いてもう知っているので別に構わないけどね。


ジェフさんの後はロビンさんが教えてくれた。

「俺のスキルは《守護心》ってやつだな。守りたいものを設定して、その守りたいものをどれだけ守りたいかっていう気持ちに応じて強くなるっていう使いにくいスキルだぜ!」


ロビンさんのステータスも覗いてみる。
確かに《守護心》のスキルは存在した。
しかしスキルの事を半分しか教えてくれていない。


【守護心】

《心から守りたいと思っているものを設定し、その守りたいものをどれだけ守りたいかという気持ちに応じて能力に補正。守りたいと設定したものを守りきる事が出来なかった場合、守りたい対象を変更することは出来なくなり、スキル保持者は守りたい対象を奪った相手を恨む心の大きさにより能力に補正がかかるようになる。》


このスキルの内容を半分しか説明しないっていうことは恐らくもう彼は守りたいと思った相手を失ってしまっているんだろう。
そんな思いっきり地雷ですよ~って看板が立ててあるところにドカドカ踏み込んでいくほど俺も馬鹿じゃない。
これは今はスルーしておく。


最後はドイルさんのスキルについて教えてもらおう。


「俺のスキルは《奪拳》ってもんだ。能力的には自分が殴って奪った相手のHP量に応じて、自分の能力に補正がかかるっていうわかりやすいものだ。さすがに他の2つは教えられないが、これでいいだろう。」


他の2人と同じようにステータスを確認する。
どうやら彼はしっかり本当のことを言っているようだった。
ほかの二つに関しても名前は確認したが、能力のしっかりした内容を知ろうとはしなかった。
これから仲良くしようとしてる相手には、人間離れした行為をするつもりは無いしね。


しっかりではないがスキルの事を教えてくれた【ウルティオ】の皆さんに感謝の気持ちを伝え、することもないので、今まで受けたクエストの話などをしていると、商人が確認し終えたらしく帰ってきた。


馬車や荷物には問題無かったが、馬が予想以上にストレスを抱えていそうで、これでは途中に暴れ出すかもしれないということで1度街に戻るらしい。



クエストに関しては、1度中断ということになるらしく、中断されたクエストは再開される時にもう一度受けるかどうか決めることが出来るらしい。
まぁ、そうだよね。今回はたまたま運が悪かっただけだけど、もしかしたらその商人がいろんな人に恨まれまくっていて刺客が送られまくってくる、みたいなこともあるかもしれない。
その話を中断状態になった時に聞いたら、やめたくなるのも分かる。


おそらく今回の場合は再開されたら【ウルティオ】の人々はもう一度クエストを受けるだろう。


とりあえず今はもう10時くらいにはなっていそうだし、そろそろ街に帰りたいと思っていたので、商人の臨時護衛を兼ねて街へ戻ることにした。


すごい街近いから護衛なんてする必要なかったんだけどね。


一日ぶりにアスカに会うわけだけど、一体どんな情報を手に入れてくれているのかな。
今から少し楽しみだ。

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