変身とかいうスキルは俺にとって最高のスキルかもしれない。(旧題名『ミミック』)

七鳳

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1章【人間国】

事実

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あれから30分ほどかけて【ウルティオ】のメンバー達と街へ戻ってきた。
たった1日離れていただけでこの街が懐かしく感じるなんておかしい話かもしれないが、かなり濃い夜を過ごしたりしたのでそう思うのも不思議じゃないだろう。

ちなみに濃い夜って言うのはゴブリンたちとの戦いとかの事でやましいことは一切無かったことは伝えておく。
そういう夜を過ごしてみたいもんだよ全く。


街に入る際に関門を通る時も、早朝ではなくなっていたのでそれなりに人の列が出来ていたが、俺が最初にこの街に来た時程ではなく、比較的スムーズに入ることが出来た。

街に入った俺は【ウルティオ】のメンバー達と別れた。
一応泊まっている宿は教え合ったので、何かあったらまた会うこともあるだろう。
さらに、今回臨時護衛的な感じで街まで戻ってきたため、少しだけ商人からお小遣いを貰った。
中銀貨1枚なので1000ゼノかな。
確かに前クエストボードで見た報酬が中銀貨2枚だったので半分も貰ったことになる。
本当にいいのか確認してみると、

「いやいや、君の戦いを見ていたら襲われている恐怖よりも君に対する興味が勝ってしまってね。これからもいい付き合いをしたいという意味で少し見栄を張らせてもらっただけだよ。また何か依頼することがあればもしかしたら指名依頼にするかもしれない。その時はよろしく頼むよ!」

と言われてしまったので、俺はプレッシャーを感じつつもありがたく頂いた。

ちなみに指名依頼とはクエストボードに張り出されているものではなく、指名された者がギルドへ呼び出されて、そこで初めて受注するか否かを決めることが出来るようになるらしい。
指名されるには相応の実力がもちろん必要だったり、人脈も無ければならないので、かなり高ランク帯の冒険者でなければいけないのだ。


そんな指名依頼の予約(?)が入った俺は彼らに別れを告げ、アスカが泊まっている宿へ向かった。












宿に戻った俺は水無亭の亭主にアスカについて聞いてみる。
「ここに俺と一緒に昨日来た女の子って今どうしてるかわかりますか?」

すると亭主の親父は上を指さし、

「今は上の階のお前らがとった部屋にいると思うぞ。今日の早朝に出ていって、ちょうど1時間くらい前に帰ってきたところだ。」

と教えてくれた。

早速階段を上がり部屋に入る。
そこには一糸纏わぬ姿でアスカがこっちを見ている…なんてことはなく。
普通に服を着て、自分のベッドで寝転んでいた。
寝てるわけではなさそうで、俺がドアを開けた音に反応してこちらを見ている。

「おかえり、レラっ!」

すぐに飛び起きた彼女は俺の身体にしがみつく。
正直苦しいし、最近お風呂にも入ってないので匂いがやばそう。離れてほしい。
しかし逆にアスカは俺の服に顔を埋めて鼻で大きく空気を吸いこむ。
最悪だ。完全に嗅がれた。

アスカは特に嫌な顔をすることもなく、むしろ満足気な表情で微笑んだあと、俺を解放してくれた。


少しの無言の後、何かいたたまれなくなった俺は目的だった情報についての話を切り出した。


「ところでアスカ、情報についてはどうだったんだ?」

「うーんとね。一番危険だけどお金になりそうな情報と、全く危険じゃないけど小銭にしかならない情報があるけどどっちが先に聞きたい?」

「じゃあ、まずは小銭にしかならない情報にしようかな。」


するとアスカはさっきまでのほのぼのラブラブモードから真面目しっかりモードに変化した。
今の状態だけ見せられたら、すごい出来る秘書みたいにも見える。
メガネかけさせてみたいなぁ~。
とか思ってることは誰にも言えないし、まずどこでメガネが売ってるかすら分からない。
機会があればギルドのメガネお兄さんにでも聞いてみようかな。
それと【ウルティオ】にも一人メガネいたよな…
そう考えると結構周りにメガネがいるから何とかなるかもしれない。
まぁ今はその個人的な思いは置いておいて、アスカが手に入れた情報を聞こうじゃないか。

「この情報は、1番最初にお金になりそうな話を聞きに行ったギルドで聞いた話なんだけど…」

そう前置きしてアスカは話を続ける。

「どうやら、最近街の中での小さな問題が沢山起きてるらしいの。」

「どういう事だ?」

「具体的に言うと、貴族の無理な注文とか、無理矢理な買い付けとかが増えてる。例えば店にあるポーションを全部よこせ、とか。」

「それ店の人は断れないのか?」

「この街の商店とかって、店を建てる時に貴族たちからお金を借りて、そのお金で土地や商品を用意して、のちのち利益でそれを返すっていう形式が多いの。だから、それを圧力に無理矢理って感じらしいわ。」


なるほど。利子を倍にするぞ!とか闇金まがいな感じで言われたら俺だって泣く泣く同じことしちゃいそうだ。

「その関係で、店からポーションが無くなったり、鍛冶屋で使う金属が無くなって、武器を作ることだけじゃなく、手入れすら出来ない状況がここ1週間くらい続いているらしいの。だから、それを聞いたギルドが、問題が解決するまでポーションの材料になる草と、よく使われる金属の納品のクエストを常時発生型に一時的に変更してる。それが小銭を稼げる方法ってわけなのです!」


最後まで真面目モードでいることを我慢出来ていなかったが、話はちゃんと出来ていた。
前ギルドに行った時も確かに常時クエストになっていたものがいくつかあったが、おそらく今クエストになっているもの以外の材料も無くなってくるはず。
そうすると常時発生クエストが増える、つまり街の外で適当に採取をするだけでお金が稼げるくらいの状況にもなるかもしれないってことだよな。


ただそれでも俺たちに残された期限で残された額を稼ぐことは出来ないと思う。
一つ一つの単価がやはり低いので、それこそ寝ずに採取と換金を繰り返すくらいしないと無理だろう。
1日2日はそんな行動も取れるかもしれないが、残りの時間全てそんなことしてたら死んじゃうよ、本当に。


俺はもう一つの危険だという情報についても聞いて見ることにした。


「危険な方も一応教えてくれ、アスカ。」

「はーい!えっとね~さっき言った通り貴族の動きが活発になってる理由なんだけど…どうやらもうすぐ貴族同士の抗争が起こるらしいの。」

「抗争?」


「そう。この街は領主家の貴族派閥と、領主家に次ぐNo.2の実力を持つ家の派閥の二つに分かれてて、どうやらNo.2の派閥が領主の座を狙って水面下で動き出してるらしいわ。」


「水面下って…お前この話誰から聞いたんだよ。」


「誰って言われても、お父さんだけど…?」



「え?お父さんって?」

なんかこの流れすごい嫌な予感がするが、思い切って聞いてみた。

すると…


「決まってるじゃん。この街のNo.2、ヴァレンタイン・ミラ・ロックだよ!」


予想が的中。

どうやら俺にベタベタまとわりついてくるこの女の子、実はお嬢様だったっぽい!
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