変身とかいうスキルは俺にとって最高のスキルかもしれない。(旧題名『ミミック』)

七鳳

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1章【人間国】

貴族抗争

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もともと見た目はお嬢様っぽいなとは思ってたんだけどね。


まさか本当にお嬢様だとは。
お嬢様って意識し始めるとなんか今はまでの行動、お父さんにバレたら俺殺されるのでは?
なんて思ったりもしたがそんなことを思っている場合ではない。


彼女がNo.2の子供で、さらにもうすぐ貴族同士の抗争がある。そして危険だけど金になる話なんてもうひとつしかない。


「アスカの家に雇われるってことか?」


確信を持って聞いてみた。


「そうなるかな。お父さんにお金だけ頼んでも、今すぐには無理だって言われちゃって…。雇うって形で実際仕事もしてくれるなら他の奴よりも先にお金渡す理由が出来るからっていって、この方法を思いついてくれたの。」


なるほど。確かにいくら貴族と言ってもお金を無限に持っているわけではないし、いくら必要になるのか分からないこの状況で無駄なお金は払いたくないし、払えないだろう。
ただ、雇うという条件ならほぼ願い通りの額を払うことが出来る。
しかも娘のパーティは有名なBランクパーティということもあり、ついでにその力が欲しかったんだろうな。


実際は二人いなくなって、俺とアスカの二人だけになってしまっているが、戦闘力だけで言ったら前と変わらないか、それ以上あるはずだから大丈夫だろう。
ひとつ心配するとしたら、アスカが攫われて人質とかにされないだろうか?


アスカも充分強いけど、さすがにCランクパーティに囲まれると1人だと厳しい。
お嬢様なんて人質にピッタリだから狙われるかもしれない。
できるだけアスカのそばにいるようにしよう。


「確かにその依頼を受ければお金はなんとかなりそうだな。ちなみに具体的な依頼内容は?」


「具体的には屋敷とその中に住んでるヴァレンタイン家の人々の護衛かな。一応私たち以外にも冒険者を雇うって言ってたから仕事量は多いってほどでもなさそうだよ。期間は明日の朝から三日間で三食と寝る場所つき。結構優遇措置だよねお父さんったら。」


もうそろそろお互い本気で相手を消しにかかるんだろう、その為に護衛が必要と。
それにしても三食付きで寝る場所まで用意してくれるなんて結構太っ腹だなアスカ父。
ただ実際行ってみたら寝れないくらい仕事多いとかだったらブラッククエストだって訴えさせてもらうからな!


とりあえず明日の朝に屋敷へ向かえばいいとの事なので、今日はゆっくり休むことにした。
俺もこの部屋で泊まる。
ちゃんとシングルベッドが二つだしやましいことは何もしないよ。


今アスカは自分の実家に帰っている。
いや、「もう実家に帰らせていただきます。」的なノリではなく、俺が依頼を引き受けることを伝えに行ってもらったんだ。


こっちが依頼を受けるって分かっていたら俺たちに対する準備やもてなし的なのも変わってくるだろうしね。


ちなみに今は暇なので宿の窓から街行く人を観察して変身出来る人物を増やしたり、変身出来るものに片っ端から変身していっている。


ころころ自分自身の大きさも変わるので凄い不思議な気分になる。
名探偵コ〇ン的な感じで大きくなったり、小さくなったりを繰り返せるんだ。


飛んでくる魔法とか攻撃からの咄嗟のかいひにつかえそう。
ただ俺の変身レパートリーの中に小さくても強いのはいないので、普段のこのククールモードなどよりは少し気を使って戦わなきゃいけないだろう。


あと変身のかなりピンクな使い方も発見してしまった。
これは誰にも言わないで欲しいんだけどな…
女の子に変身するじゃろ?
そうすると何もかもかその女子になるわけだ。
今までは見ることでしかバストサイズを測れなかったせいで着痩せするねなどの感想も生まれてきた訳だが、自分自身が彼女たちになることで完全なるバストサイズの把握が可能になったのである。


これぞ変身。非常にピンク。何がとは言わないが。


ちなみにこの逆のブルー現象というものもある。
これはジジイに変身するといろいろなところがよぼよぼだし、動きづらいので気持ちがブルーになるせいで名付けたもので、もう二度と普通のジジイには変身しないことを決めた瞬間でもあった。


今まで何の気なしに使ってきた変身スキルも、使い方によって可能性は無限に広がってるんだよね。
無生物にも一応変身出来るから木とかになって隠れることも出来るんだけど…
身体が全く動かないストレスがかなり溜まるのであんまり無生物には変身したくない。
1回地面の小石になった時は、3秒程で限界が来てすぐに元に戻った。
そこまで小さくなると体も何か窮屈に感じるし。
逆に大きなものにも挑戦してみたこともある。


その代表例が太陽と月。
結果だけ先に言ってしまうと半分成功した。
この俺の本体のサイズで太陽っぽい形、色の球体に変身することが出来たんだ。
ただスキルも何も使えない、動けない、そして別に熱とかを発生させてる訳でもないのでボツ変身となった。
変身する対象のスキルを使えるってのはいい事なんだけど、そうやって無生物に変身する時にはちょっと嫌だな。
目が無いのに周りが普通に見えてたから正確にこの世の真理的な視点から見ると、厳密には無生物に慣れてないかもな。



そんな感じで変身の思い出を思い出していたらアスカが帰ってきた。
その手にランダム牛丼を二つ持って。
なんていい子なんだろう、この子は。


この間食べてからランダム牛丼の虜になってしまった俺たちは、金があればまた食べようねと約束してたんだ。
おそらくお父さんから若干の誤差小遣いを貰ったんだろう。
それで俺の分まで買ってきてくれるとはいい女だ。


その日は美味しくランダム牛丼を頂いて、宿の外にある井戸から水を汲み、火魔法で温めて体を清めておいた。
一応貴族様のところへ行くからね。身だしなみは整えなければ。


入ってすぐ不潔だからとかいう理由で切り捨てられるなんて事もなくはなさそう。


身体を清めた俺たちは、疲れていたのかムフフうふふなピンクな展開など一切なく、爆睡してしまった。


貴族との出会いによりこれからの生活が一変することはまだ誰も知らなかった。
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