変身とかいうスキルは俺にとって最高のスキルかもしれない。(旧題名『ミミック』)

七鳳

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1章【人間国】

護衛

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翌朝、日の出と同時に宿を出る。
三日間帰ってこれないのでしっかり荷物も持って、チェックアウト。
実際、荷物という荷物も無いので何の問題も無いんだけど。


アスカに案内されてヴァレンタイン家の屋敷へ到着する。
かなり大きいとは聞かされていたけど、思っていたよりデカい。
屋敷の大きさだけで、俺達が先程まで泊まっていた宿の三倍くらいの大きさがあり、さらに庭園のようなものも見える。
ここで護衛をするのは結構大変かもしれない。
そう思いながら屋敷の門をくぐる。


屋敷に入りまず俺たちを出迎えてくれたのは執事のメインさん。
燕尾服が似合う初老の男性だ。
一応ステータスを見ておいたが、護衛として役に立ちそうなスキルは無く、どっちかと言うと家事的な方で役に立ってくれそうなスキルを持っていた。


「よくぞいらっしゃいました。どうぞこちらへ。」


アスカとは一度ここで別れる。
荷物などを自分の部屋に置いたり、着替えたりしたいと何度もお願いされたので少し心配だったが一度別れることにした。


「じゃあメインよろしくね。」


そう言い、彼女は先に屋敷の中へ入っていく。


「かしこまりましたお嬢様。それではククール様、旦那様の所へご案内します。」


生まれて初めての貴族との対面なのでとても緊張する。
ちなみにアスカは貴族にカウントしてない。アスカだもんね。


重厚な扉を何枚もくぐり、階段を登った先の部屋にロックさんは居た。


「よく来てくれたねククール君。君の話はアスルーカからよく聞いていたが、会うのは初めてだな。よろしく頼む。」


アスルーカとはアスカの本名。
アスカはあだ名みたいな感じだ。
人が良さそうな感じの雰囲気を漂わせるかなりしっかりとした体型。
貴族だからもっと肥えた姿をイメージしたんだけどいい意味で期待を裏切られた感じだ。
忘れずにステータスを確認しておく。
所持スキルは《剣術》と《交渉術》と《愛力ラブパワー》。


確かに《愛力ラブパワー》ってアスカも持ってたよな。
多分このヴァレンタイン家の伝統スキルみたいなもんなんだろう。
《剣術》も持っているので最低限自分の命を一瞬守ることくらいはできるだろう。
俺達が反応できないその一瞬さえ耐えてくれれば後はどうにでもなる。
とりあえずは一安心。


「はじめましてロックさん。今回こういった形での護衛は初めてなので不慣れなところもあると思いますがよろしくお願いします。」


ここは誠実に挨拶しておく。
ちなみにアスカに頼んで俺のスキルは《変身ミミック》ということを伝えてもらっている。
全力で戦わなきゃならない時に元の姿に戻って、敵だと認識されて攻撃されるとか嫌だからな。


変身ミミック》の効果ということなら魔物に変身しても大丈夫だろう。
実際は魔物が本体だなんて知ったらやばいことになりそうだが、そんなこと絶対にバレないと思うので気にしないことにしておく。


「ああ、改めてよろしく頼む。三日間寝泊まりする部屋はこの私の部屋の二つ隣の部屋だ。クエストの間はそこを自由に使ってくれて構わない。飯の時間はいつも決まってないから、その都度誰かに呼びに行かせることにする。」


まるまる一部屋貸してもらえるなんて思ってなかった。
せいぜい他に雇われた冒険者と大部屋で一緒に生活みたいなことだろうと思っていたけど、これは評価を改めなければならないようだ。


というか他の冒険者はどうしているんだろう。
ロックさんに尋ねてみる。

「他の冒険者はどうしてるかだって?私が雇ったのはBランクパーティ一組とCランクパーティ二組で、パーティで1つの大部屋を貸してそこで今休んでもらっているよ。」


なるほど。
ちなみに場所は俺が借りた部屋のちょうど廊下を挟んで向かい側と、その右隣らしい。
後で挨拶にでも行っておくかな。













その後クエストについての残りの細かい説明をメインさんにしてもらい、一時部屋で待機となった。
俺は自分の部屋に向けて廊下を進んでいく。
このまま部屋に入ってもいいが、まずは他の冒険者に挨拶をしておこう。


とりあえず最初は俺の部屋の向かい側のドアをノックする。
するとすぐに中から足音がドタドタと聞こえてきて、一人の女性が出てきた。


「あ、あんた誰?私たちに何か用?」


ショートカットで元気そうな女の子。
服装はパジャマ?みたいな感じかな。
全く主張の無いので胸が印象的だ。


「一緒に護衛をするパーティ【フォースウィンド】のリーダーのククールだ。よろしく。」


「フォースウィンドのククールって…あのBランクパーティのリーダーのククールさんってことですか!?」


「ああそうだが。」


「すごーい!こんなところで会えるなんて思ってなかったです!」


目をキラキラさせてこちらを見てくる姿は身長やパジャマという服装も相まって小動物みたいだ。


そして彼女が驚く声を聞いて中からパーティメンバーらしき人達が出てくる。
驚いたことに全員女性。
一人は褐色肌でかなり際どい鎧を着ていて、かなりデカい。身長も俺と同じくらいありそうだ。
デカイのは身長だけではなく、胸には巨大な山がそびえ立っている。
そして1番特徴的なのは頭の上にぴょこんと生えた猫耳。
まるで別の生き物かのようにパタパタ動きまくっている。
俺のことを見て驚いている証拠だろう。


もう1人は金色の髪の毛を腰のあたりまで伸ばしていて、まるで死んでいるかのように白い肌を持っている。
服装も白ローブだけなので神聖なイメージを感じる。
こちらは胸の主張は控えめ。ただ無い訳では無いということだけお伝えしておく。
全く表情を崩さないので何を考えているのかさっぱり分からないが、その不思議な雰囲気に引き込まれる。
独特の魅力を持っている女の子だ。


彼女達にも俺のことを説明する。
すると褐色娘は出迎えてくれた女の子と同じような反応をしてくれた。
真っ白子はわかりやすい反応はしないが、俺が自分のことを話し始めたとき眉がピクっと反応したのでただの人見知りみたいな感じなんだろう。


「あたしの名前はエルっていいます。あと隣にいる猫耳の子はキートで真っ白な子はレイル。」


「【フォースウィンド】程じゃないけど、ボクたちもそれなりに街で有名なパーティなんだ。【ドレスコード】って聞いたことない??」


キートがそう教えてくれる。
確かに町中で歩いていたら二回か三回くらい聞いた気がする。
実際のドレスコードの話をしていると思って、パーティ名だとは微塵も思わなかったわ。


「私たち女子だけだから…。嫌でも皆の視線を集めてしまう…。」


レイルがぼそっと呟く。
確かに女子だけでさらにCランクパーティってなったらすごい注目を浴びそう。


全員のステータスも確認したが、キートは完全な戦士タイプ。持っていたスキルも近接戦闘に役に立ちそうなものばかりだった。
レイルは魔法タイプ。珍しいかどうかは分からないが、《闇魔法》と《光魔法》という相反する属性の魔法を覚えていた。
そしてエルはククールと俺を足したようなスキル構成。ステータスもバランスがよく弱点は無さそうだ。


1番驚いたのは《剣聖》という加護を持っていること。
どんなものなのかさらに詳しく《究明眼》で調べてみたところ、剣を武器として扱う時にステータスに大幅な補正をかけるらしい。



正直この三人がなんでCランクなのか分からないぞ。
同時に三人に襲われたら俺も割と本気出さないと勝てない気がする。


この子達が仲間で本当によかった。



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