9 / 37
2 融け、積もりゆく心
1 のらくら騎士の掌の上
ソコロフ家に仕える近衛騎士のほとんどがソコロフ城に住む中、自分は城下の自宅から通っている。
一般の騎士が多く住む一帯で、騎士団に入るとともに故郷の村から引っ越してきた。
石造りの城と違い、木造の一軒家だ。
半地下に貯蔵庫をつくって床を上げ、二重扉や窓に革布を吊り、暖炉に薪をくべれば、充分寒さをしのげる。
「父さん母さん、行って参ります」
務めに出るときはいつも、五年前父のもとへ旅立った母の形見である厨子を持ち出す。
精霊王を祀るべく、親指大の人型像と、それを包む丸屋根の筒を、木から削り出したもの。
自分にとってはお守りだ。
(戦場で弓や槍に当たらないのは、これの加護な気がする)
今日は、エリセイとの約束の日だ。
昨夜のうちにレクスから手紙を預かってある。騎士の詰所には寄らず、王城へ直行する。
「行こう、ヴィト」
暴風雪地域に入るまでは、白樺林を進んだ。
騎士用の外套が白く、風除けの毛皮帽子も白、相棒のヴィトも白毛のため、目立ちにくい。
ソコロフ派の貴族が運営を任されている所領を通っていく。兎用の罠を仕掛ける女性、凍った泉で滑氷競争に興じる子どもたちを遠くに見た。
(毎冬の風景だ)
イスの民は、滑雪や滑氷、罠を駆使し、狩りをして生活する。
獲物の肉を食べ、毛皮を纏う。骨は武器に、革は鎧にも活用する。
雪も二大貴族の戦いも日常化しており、みなあるもので工夫して生きているのだ。
(わたしがこの戦いを終わらせるかもしれない手紙を運んでいると知ったら、彼らはどう思うだろう)
自分たちの領主の勝利でないと納得しないか。
民はそれだけたくさんのものを失った。大切な人、住み慣れた家、豊かな地……。
(いけない。切り替えねば)
領境のプナイネン領に差し掛かる。
ほどなく敵方のエリセイに会うのだからと、前回から引き摺っている胸のつかえは、強まる吹雪に塗り込めた。
今回は刻も指定したのに、書庫でまたも待ちぼうけを食らう。
「あー、合図決めてなかった。俺だ、俺だって」
ようやく現れたエリセイは、巡回隊の控室から廊下を辿ってくるだけのはずが、靴に雪がついていた。
遅刻を咎める剣を下ろし、小声で尋ねる。
「何か異状があってアナトリエ城へ戻っていたのか?」
状況は日々変化する。
二通目だからといって、レクス直筆の手紙を簡単には渡せない。指先に力がこもる。
「いんや。窓の向こうに可愛い白毛の馴鹿がたまたま見えたんで、ちょっともふってた」
もふっていた、だと?
そんな理由で大事な約束に遅れるなんて。緊張感がなさ過ぎて、怒る気が失せた。
「わたしの馴鹿に何をする」
とはいえ聞き捨てもならず、じとりと睨み上げる。立っているとだいぶ見上げる形になる。
「へえ、スフェンの相棒か。どうりで癒されるし、かわ……が立派なわけだ」
「はあ?」
「俺以外の目には雪に紛れて見分けられないから安心しな。おまえさんの可……、アレが、台無しな目してないで」
エリセイは悪びれない。しかもまた「可愛い」と言い掛けた。
ますます睨みを利かせてやる。
(冬毛の馴鹿の触り心地は最高ではあるが――ん?)
そこでふと、合議のときのレクスの機転が思い起こされた。
「まさか、本当に聖堂の馴鹿舎で居眠りしていたのではあるまいな」
「おっ? どうして知ってるんだ。貴族に贅沢に手入れされた毛皮をもふらせてもらううちについ、な」
当たってほしくない推理が的中し、さすがに頭がくらりとした。馴鹿牧夫でもないのに何をしている。
「それでよく近衛騎士になれたものだ」
「公子と親戚で幼馴染のよしみだろ。うちの坊っちゃんは頭の回転が早いぶん、なかなか人を信用できない。いちばん遊んでやった俺がいちばん懐かれてる」
エリセイは皮肉とも知らず、胸を張った。
(この無駄話も、彼の「遊び」の一種か?)
目的の手紙を出せとすら言わない。むしろもっと話したいとばかりに、いそいそ階段梯子に座り、大きな手で手招きしてくる。
それでいて無視したらしたで、
「おまえさんを殺す気があったらとっくに殺してるよ」
と真理をつく。
(この男……)
その一言の前後で笑顔の種類が変わらないのが、必須ならば会話の延長で命を奪うこともできる、と示していた。強いから呑気にしていられるのだ。
今のところは、殺気を向けられていない。
(引き出せる情報は引き出しておこう)
そう理由をつけ、別の階段梯子を椅子代わりにした。
エリセイは残念そうな顏になったが、暑苦しい彼に密着する必要性はない。
それに、彼に主導権を握られがちなのも悔しい。こちらからひとつ仕掛けてみる。
「君のソコロフへの敵意が薄いのは、昔からなのか」
「遺伝かな。俺の父もアルファにあるまじき鷹揚さで、近衛騎士だがこれといった戦功がないんだ」
気取らない声が返ってきた。のらりくらりしている自覚があったらしい。
血筋かと得心しかけて、別の可能性が閃く。
「父君も百年前のアナトリエ公子の日記を見たのでは?」
日記はエリセイの居城にあったと言っていた。目を通した結果、エリセイと同じくソコロフ派との戦いに疑問を抱いてもおかしくない。
しかし、「どうだか」とかわされた。肝心なことは一度では明かさない男だ。
「父に威厳がないために、公位は坊っちゃんが継ぐものってうちの連中はみな思ってるくらいさ。俺も傍系ながら継承権があるのに」
と思うと、てらわず笑う。
その横顔に目線のみ向ける。
それは、ニキータの権利を脅かさないよう怠け騎士を演じている、とも言えるのではないか。真意を量り始めたらきりがないが。
「まあ、おかげで権謀術数に巻き込まれることもない。家や昔からの所領を守るにはちょうどいいんだよ」
「百歩譲ってそうだとしておこう」
肩を竦めた。エリセイと組む上で、侮らず買い被らずの対応がちょうどいい。
ともあれ、異状はなさそうだ。
「受け取れ」
本題を忘れるなと、腕を伸ばして手紙を渡す。
エリセイは息子の婚約者をじろじろ見定めるみたいな表情で手紙を確認したのち、また胸板に押しつけるようにして仕舞った。
「……なんか不思議なんだよなあ」
「? それで、史料調査のほうは進んだのか? 五日もあったことだし」
ついでに、もうひとつの取り組みの進捗も問う。
途端、エリセイが大げさに両腕を広げた。
「あのなあ、この書庫の広さに対して俺一人だぞ。長い空位に戦いの形骸化を感じる者が他にもいたとて、大っぴらに言うのは憚られるから、誰も巻き込めないし」
「わたしには戦う必要がなくなればよいと話し、調査を手伝わせようとしたのに?」
百年前のアナトリエ公子が書き残した一文。
思いがけず打ち明けられたことで、どれだけ悩まされたか。
実は前回ソコロフ領に帰った後、「王位を擲っても手に入れたい何か」なんてあるはずがない、エリセイの思い違いだと一度は結論づけた。
『……待て。立場より大事なものがあるということか』
しかし夜中寝つけずに厨子の像を眺めていたとき、まさに今のレクスの状況に似ていると思い至り、一蹴できずじまいである。
その苦情も兼ねて、言葉じりを捕らえる。
「そりゃスフェンだから。口が堅くて信用できる騎士だろ」
「……わたしにしか話していないのか」
「ああ、おまえさんだけだ」
だが率直に返され、気勢をそがれた。
視線が突き刺さり、頬が火照る。この男とはとことん相性がよくない。
気持ちを落ち着かせるため、立ち上がって彼の正面、ただしぴったり間合いの外に立った。
「致し方ない。今日は少し手伝おう」
エリセイも腰を上げる。心から楽しげに。
見下ろされる恰好になり、何となくむっとしつつも、どの棚を見ていけばよいか指示を仰いだ。
「この辺」
ざっくり手で囲われる。
(非効率……)
そんな単語が頭を過ぎったものの、あくまで手伝いなので気に留めないことにした。
埃を被った本を数冊棚から引き抜き、エリセイが持参した角灯のもとに抱えていく。
淡い光を頼りに、羊皮紙に手書きで記された文章を、つっかえつっかえ目で追う。
(ふむ、ふむ?)
物語調の本は、伝承か創作か判断がつかない。
王の日記かと思いきや、ひたすら家臣の愚痴を連ねたものもある。免職の根拠の記録用か。
(客観的に歴史を書き残した史料はないのか……)
「スフェン! 面白いのを見つけた」
一般の騎士が多く住む一帯で、騎士団に入るとともに故郷の村から引っ越してきた。
石造りの城と違い、木造の一軒家だ。
半地下に貯蔵庫をつくって床を上げ、二重扉や窓に革布を吊り、暖炉に薪をくべれば、充分寒さをしのげる。
「父さん母さん、行って参ります」
務めに出るときはいつも、五年前父のもとへ旅立った母の形見である厨子を持ち出す。
精霊王を祀るべく、親指大の人型像と、それを包む丸屋根の筒を、木から削り出したもの。
自分にとってはお守りだ。
(戦場で弓や槍に当たらないのは、これの加護な気がする)
今日は、エリセイとの約束の日だ。
昨夜のうちにレクスから手紙を預かってある。騎士の詰所には寄らず、王城へ直行する。
「行こう、ヴィト」
暴風雪地域に入るまでは、白樺林を進んだ。
騎士用の外套が白く、風除けの毛皮帽子も白、相棒のヴィトも白毛のため、目立ちにくい。
ソコロフ派の貴族が運営を任されている所領を通っていく。兎用の罠を仕掛ける女性、凍った泉で滑氷競争に興じる子どもたちを遠くに見た。
(毎冬の風景だ)
イスの民は、滑雪や滑氷、罠を駆使し、狩りをして生活する。
獲物の肉を食べ、毛皮を纏う。骨は武器に、革は鎧にも活用する。
雪も二大貴族の戦いも日常化しており、みなあるもので工夫して生きているのだ。
(わたしがこの戦いを終わらせるかもしれない手紙を運んでいると知ったら、彼らはどう思うだろう)
自分たちの領主の勝利でないと納得しないか。
民はそれだけたくさんのものを失った。大切な人、住み慣れた家、豊かな地……。
(いけない。切り替えねば)
領境のプナイネン領に差し掛かる。
ほどなく敵方のエリセイに会うのだからと、前回から引き摺っている胸のつかえは、強まる吹雪に塗り込めた。
今回は刻も指定したのに、書庫でまたも待ちぼうけを食らう。
「あー、合図決めてなかった。俺だ、俺だって」
ようやく現れたエリセイは、巡回隊の控室から廊下を辿ってくるだけのはずが、靴に雪がついていた。
遅刻を咎める剣を下ろし、小声で尋ねる。
「何か異状があってアナトリエ城へ戻っていたのか?」
状況は日々変化する。
二通目だからといって、レクス直筆の手紙を簡単には渡せない。指先に力がこもる。
「いんや。窓の向こうに可愛い白毛の馴鹿がたまたま見えたんで、ちょっともふってた」
もふっていた、だと?
そんな理由で大事な約束に遅れるなんて。緊張感がなさ過ぎて、怒る気が失せた。
「わたしの馴鹿に何をする」
とはいえ聞き捨てもならず、じとりと睨み上げる。立っているとだいぶ見上げる形になる。
「へえ、スフェンの相棒か。どうりで癒されるし、かわ……が立派なわけだ」
「はあ?」
「俺以外の目には雪に紛れて見分けられないから安心しな。おまえさんの可……、アレが、台無しな目してないで」
エリセイは悪びれない。しかもまた「可愛い」と言い掛けた。
ますます睨みを利かせてやる。
(冬毛の馴鹿の触り心地は最高ではあるが――ん?)
そこでふと、合議のときのレクスの機転が思い起こされた。
「まさか、本当に聖堂の馴鹿舎で居眠りしていたのではあるまいな」
「おっ? どうして知ってるんだ。貴族に贅沢に手入れされた毛皮をもふらせてもらううちについ、な」
当たってほしくない推理が的中し、さすがに頭がくらりとした。馴鹿牧夫でもないのに何をしている。
「それでよく近衛騎士になれたものだ」
「公子と親戚で幼馴染のよしみだろ。うちの坊っちゃんは頭の回転が早いぶん、なかなか人を信用できない。いちばん遊んでやった俺がいちばん懐かれてる」
エリセイは皮肉とも知らず、胸を張った。
(この無駄話も、彼の「遊び」の一種か?)
目的の手紙を出せとすら言わない。むしろもっと話したいとばかりに、いそいそ階段梯子に座り、大きな手で手招きしてくる。
それでいて無視したらしたで、
「おまえさんを殺す気があったらとっくに殺してるよ」
と真理をつく。
(この男……)
その一言の前後で笑顔の種類が変わらないのが、必須ならば会話の延長で命を奪うこともできる、と示していた。強いから呑気にしていられるのだ。
今のところは、殺気を向けられていない。
(引き出せる情報は引き出しておこう)
そう理由をつけ、別の階段梯子を椅子代わりにした。
エリセイは残念そうな顏になったが、暑苦しい彼に密着する必要性はない。
それに、彼に主導権を握られがちなのも悔しい。こちらからひとつ仕掛けてみる。
「君のソコロフへの敵意が薄いのは、昔からなのか」
「遺伝かな。俺の父もアルファにあるまじき鷹揚さで、近衛騎士だがこれといった戦功がないんだ」
気取らない声が返ってきた。のらりくらりしている自覚があったらしい。
血筋かと得心しかけて、別の可能性が閃く。
「父君も百年前のアナトリエ公子の日記を見たのでは?」
日記はエリセイの居城にあったと言っていた。目を通した結果、エリセイと同じくソコロフ派との戦いに疑問を抱いてもおかしくない。
しかし、「どうだか」とかわされた。肝心なことは一度では明かさない男だ。
「父に威厳がないために、公位は坊っちゃんが継ぐものってうちの連中はみな思ってるくらいさ。俺も傍系ながら継承権があるのに」
と思うと、てらわず笑う。
その横顔に目線のみ向ける。
それは、ニキータの権利を脅かさないよう怠け騎士を演じている、とも言えるのではないか。真意を量り始めたらきりがないが。
「まあ、おかげで権謀術数に巻き込まれることもない。家や昔からの所領を守るにはちょうどいいんだよ」
「百歩譲ってそうだとしておこう」
肩を竦めた。エリセイと組む上で、侮らず買い被らずの対応がちょうどいい。
ともあれ、異状はなさそうだ。
「受け取れ」
本題を忘れるなと、腕を伸ばして手紙を渡す。
エリセイは息子の婚約者をじろじろ見定めるみたいな表情で手紙を確認したのち、また胸板に押しつけるようにして仕舞った。
「……なんか不思議なんだよなあ」
「? それで、史料調査のほうは進んだのか? 五日もあったことだし」
ついでに、もうひとつの取り組みの進捗も問う。
途端、エリセイが大げさに両腕を広げた。
「あのなあ、この書庫の広さに対して俺一人だぞ。長い空位に戦いの形骸化を感じる者が他にもいたとて、大っぴらに言うのは憚られるから、誰も巻き込めないし」
「わたしには戦う必要がなくなればよいと話し、調査を手伝わせようとしたのに?」
百年前のアナトリエ公子が書き残した一文。
思いがけず打ち明けられたことで、どれだけ悩まされたか。
実は前回ソコロフ領に帰った後、「王位を擲っても手に入れたい何か」なんてあるはずがない、エリセイの思い違いだと一度は結論づけた。
『……待て。立場より大事なものがあるということか』
しかし夜中寝つけずに厨子の像を眺めていたとき、まさに今のレクスの状況に似ていると思い至り、一蹴できずじまいである。
その苦情も兼ねて、言葉じりを捕らえる。
「そりゃスフェンだから。口が堅くて信用できる騎士だろ」
「……わたしにしか話していないのか」
「ああ、おまえさんだけだ」
だが率直に返され、気勢をそがれた。
視線が突き刺さり、頬が火照る。この男とはとことん相性がよくない。
気持ちを落ち着かせるため、立ち上がって彼の正面、ただしぴったり間合いの外に立った。
「致し方ない。今日は少し手伝おう」
エリセイも腰を上げる。心から楽しげに。
見下ろされる恰好になり、何となくむっとしつつも、どの棚を見ていけばよいか指示を仰いだ。
「この辺」
ざっくり手で囲われる。
(非効率……)
そんな単語が頭を過ぎったものの、あくまで手伝いなので気に留めないことにした。
埃を被った本を数冊棚から引き抜き、エリセイが持参した角灯のもとに抱えていく。
淡い光を頼りに、羊皮紙に手書きで記された文章を、つっかえつっかえ目で追う。
(ふむ、ふむ?)
物語調の本は、伝承か創作か判断がつかない。
王の日記かと思いきや、ひたすら家臣の愚痴を連ねたものもある。免職の根拠の記録用か。
(客観的に歴史を書き残した史料はないのか……)
「スフェン! 面白いのを見つけた」
あなたにおすすめの小説
【完結】生まれ変わってもΩの俺は二度目の人生でキセキを起こす!
天白
BL
【あらすじ】バース性診断にてΩと判明した青年・田井中圭介は将来を悲観し、生きる意味を見出せずにいた。そんな圭介を憐れに思った曾祖父の陸郎が彼と家族を引き離すように命じ、圭介は父から紹介されたαの男・里中宗佑の下へ預けられることになる。
顔も見知らぬ男の下へ行くことをしぶしぶ承諾した圭介だったが、陸郎の危篤に何かが目覚めてしまったのか、前世の記憶が甦った。
「田井中圭介。十八歳。Ω。それから現当主である田井中陸郎の母であり、今日まで田井中家で語り継がれてきただろう、不幸で不憫でかわいそ~なΩこと田井中恵の生まれ変わりだ。改めてよろしくな!」
これは肝っ玉母ちゃん(♂)だった前世の記憶を持ちつつも獣人が苦手なΩの青年と、紳士で一途なスパダリ獣人αが小さなキセキを起こすまでのお話。
※オメガバースもの。拙作「生まれ変わりΩはキセキを起こす」のリメイク作品です。登場人物の設定、文体、内容等が大きく変わっております。アルファポリス版としてお楽しみください。
異世界唯一のオメガ、恋を選ぶまでの90日
秋月真鳥
BL
――異世界に「神子」として召喚されたのは、28歳の元高校球児、瀬尾夏輝。
男性でありながらオメガである彼は、オメガの存在すら知られていない異世界において、唯一無二の「神に選ばれし存在」として迎えられる。
番(つがい)を持たず、抑制剤もないまま、夏輝は神殿で生活を共にする五人のアルファ候補たちの中から、90日以内に「番」となる相手を選ばなければならない。
だがその日々は決して穏やかではなく、隣国の陰謀や偽の神子の襲撃、そして己の体に起きる変化――“ヒート”と呼ばれる本能の波に翻弄されていく。
無口で寡黙な軍人アルファ・ファウスト。
年下でまっすぐな王太子・ジェラルド。
優しく理知的な年上宰相・オルランド。
彼らが見せる愛情と執着に、心を揺らしながら、夏輝は己の運命と向き合っていく。
――90日後、夏輝が選ぶのは、誰の「番」としての未来か。
神の奇跡と恋が交錯する異世界で、運命の愛が始まる――。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
冷遇されたΩは運命の竜に守られ花嫁となる
花里しろ
BL
*誤字報告ありがとうございます!
稀少なオメガとして王都に招かれたリュカは、夜会で酷い辱めを受ける。
悲しみに暮れるリュカはテラスに出ると、夜空を見上げて幼い頃に出会った初恋の相手を思いその名を呼んだ。
リュカ・アレオンは男爵家の末っ子次男だ。病弱なリュカは両親と兄・姉、そして領民達に見守られすくすくと育つ。ある時リュカは、森で不思議な青年クラウスと出会う。彼に求婚され頷くも、事情がありすぐには迎えられないと告げられるリュカ。クラウスは「国を平定したら迎えに来る」と約束し、リュカに指輪を渡すと去って行く。
時は流れ王太子の番として選ばれたリュカは、一人王都へ連れて来られた。思い人がいるからと、リュカを見向きもしない王太子。田舎者だと馬鹿にする貴族達。
辛い日々を耐えていたリュカだが、夜会で向けられた悪意に心が折れてしまう。
テラスから身を投げようとしたその時、夜空に竜が現れリュカの元に降り立つ。
「クラウス……なの?」
「ああ」
愛しい相手との再会し、リュカの運命が動き出す。
ファンタジーオメガバースです。
エブリスタにも掲載しています。
陰日向から愛を馳せるだけで
麻田
BL
あなたに、愛されたい人生だった…――
政略結婚で旦那様になったのは、幼い頃、王都で一目惚れした美しい銀髪の青年・ローレンだった。
結婚式の日、はじめて知った事実に心躍らせたが、ローレンは望んだ結婚ではなかった。
ローレンには、愛する幼馴染のアルファがいた。
自分は、ローレンの子孫を残すためにたまたま選ばれただけのオメガに過ぎない。
「好きになってもらいたい。」
…そんな願いは、僕の夢でしかなくて、現実には成り得ない。
それでも、一抹の期待が拭えない、哀れなセリ。
いつ、ローレンに捨てられてもいいように、準備はしてある。
結婚後、二年経っても子を成さない夫婦に、新しいオメガが宛がわれることが決まったその日から、ローレンとセリの間に変化が起こり始める…
―――例え叶わなくても、ずっと傍にいたかった…
陰日向から愛を馳せるだけで、よかった。
よかったはずなのに…
呼ぶことを許されない愛しい人の名前を心の中で何度も囁いて、今夜も僕は一人で眠る。
◇◇◇
片思いのすれ違い夫婦の話。ふんわり貴族設定。
二人が幸せに愛を伝えあえる日が来る日を願って…。
セリ (18)
南方育ち・黒髪・はしばみの瞳・オメガ・伯爵
ローレン(24)
北方育ち・銀髪・碧眼・アルファ・侯爵
◇◇◇
50話で完結となります。
お付き合いありがとうございました!
♡やエール、ご感想のおかげで最後まではしりきれました。
おまけエピソードをちょっぴり書いてますので、もう少しのんびりお付き合いいただけたら、嬉しいです◎
また次回作のオメガバースでお会いできる日を願っております…!
ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~
芽吹鹿
BL
夢を追い求める三男坊×無気力なひとりっ子
孤独な幼少期を過ごしていたルイ。虫や花だけが友だちで、同年代とは縁がない。王国の一人っ子として立派になろうと努力を続けた、そんな彼が隣国への「嫁入り」を言いつけられる。理不尽な運命を受けたせいで胸にぽっかりと穴を空けたまま、失意のうちに18歳で故郷を離れることになる。
行き着いた隣国で待っていたのは、まさかの10歳の夫となる王子だった、、、、
8歳差。※性描写は成長してから(およそ35、36話目から)となります
冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~
大波小波
BL
フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。
端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。
鋭い長剣を振るう、引き締まった体。
第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。
彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。
軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。
そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。
王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。
仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。
仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。
瑞々しい、均整の取れた体。
絹のような栗色の髪に、白い肌。
美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。
そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」
不思議と、勇気が湧いてくる。
「長い、お名前。まるで、呪文みたい」
その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。