ヒールオメガは敵騎士の腕の中~平民上がりの癒し手は、王の器に密かに溺愛される

七角@書籍化進行中!

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6 王の器と精霊の化身の覚醒

3 癒しながら愛する

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 腰が浮き、挿入の角度が変わる。
 性器の張り出したところを、中ほどの腹側――さっき予告した箇所に擦りつけられた。

「ひゃ! っそこ、……ばかり、だめ……っ」
「すまんが聞けない注文だ」

 エリセイも粘膜を擦り合わせるのが気持ちいいらしい。ぬちゅぬちゅと音を立てて腰を振り続ける。

「はあ……番の儀式だからか? 誘発発情でもこんなに興奮するのはじめてだ」

 上擦った声で言う。
 その言い回しに、婦人方やオメガの影がちらついた。本人は禁欲的などとのたまったが、彼の魅力に気づく者が他にもいたかもしれない。

(でも、今日からは、わたしの番だ)

 自分に夢中にさせてやればいいと、暴れ回る腰に脚を巻きつける。合わせて内壁が収縮し、エリセイの性器を締めつけた。

「おお」

 覿面にエリセイが喜ぶ。

「スフェン。もう一度奥まで挿れたい」
「来い」

 拒むわけがない。圧し掛かってくるエリセイの脇腹に手を添え、引き寄せさえする。

(あ……創傷痕の引き攣れが、なくなっている)

 さっき癒した傷がどこだったかわからないくらいすべらかな肌と、張りのある筋肉の感触しかなかった。
 驚きと安堵とで、何度も脇腹を撫でる。

「やっぱり挿入すると各段に治癒が進むな」

 エリセイも気づいた。
 真似するみたいに、こちらの上半身に斜めに走る傷痕をなぞってくる。

「……おまえさんを斬ってしまったときの感覚を上書きさせてくれ」

 自罰的にも見える顏で言い、肩口から腰まで、何度も大きな手を往復させた。
 ときにゆっくり、ときに早く。
 テン毛皮のようにやわく、かと思うと塞いだ直後の薄い皮膚を引っ掻きもする。

「く、……ぅん」

 むずむずと、得も言われぬ性感が生まれた。
 単なる傷痕に未知の感覚が刻まれていく。
 エリセイの嫌な記憶も、愉しい記憶に塗り替えられただろうか。

「ひ、あ、ぁっ、あ」

 傷痕を弄られると同時に、ずぶずぶ突き下ろされた。
 エリセイの手と性器、どちらにどれだけ快楽を与えられているのか、混乱してくる。

「……んんっ、……ぁ、はぅ?」
「感じてるな。可愛い身体に傷痕が残ってほしくないって思ってたけど、少し残ってもいいかもしれん。丸ごと性感帯になるから」

 また怖いことを言われた。
 処理しきれないうちに、会陰をエリセイの下生えがくすぐる。
 あられもなく脚を開いて、大きく熱いエリセイの性器を根もとまで咥え込んでしまった。
 あたかも誂えたかのようだ。

「こうすることでも、運命の番かどうか、わか、る……な」
「はは、違いない」

 エリセイが欲情しきった息を吐く。
 体質が判明してから、男たちに欲を向けられるのは気分がよくなかったが、エリセイに限って好ましい。
 恋とはつくづく不思議だ。

「ナカにも、俺だけが悦ばせられる性感帯をつくろう」

 エリセイは力強く、大きく腰を使い出した。
 愛液でぬかるんだ内壁をまんべんなく擦られる。

「あっ、ぁあ!」

 奥のわずかにくびれている箇所を弾かれ、甘い悲鳴を上げた。奥にも気持ちいいところがあるのか。
 腹側のほうは意地悪く外されたり、焦らした上で思いきり擦られたりと、翻弄される。

「変に、なりそう、だ……っ。わたしの、身体は、いったい……」

 相変わらず傷痕も辿られ、身悶えた。
 はじめての行為でも、運命の番とだとこれほど乱れるものか?

(わたしは実は、すごく淫らな性質なのでは)

 エリセイはこちらの狼狽を知ってか知らずか、耳もとで低く囁いてきた。

「小屋で介抱したときも、こうして傷痕を愛撫し続けた。身体は憶えてるみたいだな」

 何だと――?
 意識がないのをよいことに、密かに快楽の種を植えつけられていたらしい。

 今度は意識のある状態で、発情で感じやすくなっている身体を、これでもかとまさぐられる。

「何をす、る、あぁっ、~ッ!」

 傷痕に留まらず、ぴんと勃った乳首や、いつしか透明な体液を溢す性器にまでエリセイの手が及んだ。
 この大きくて暖かい手は、本当に罪だ。
 抗議どころか声が大きくなるのを抑えられない。

「スフェンは寝台の中では素直だなあ。愛したぶんがってくれるから、可愛がり甲斐があるよ」

 疲れ知らずの抽送と執拗な愛撫を施され、エリセイの広い背中にぎゅっとしがみつくしかできなくなる。

「っ、」

 つい爪を立ててしまい、慌てて手を浮かす。
 行き場をなくした手を、エリセイが自分の首に回し直した。

「ヒールオメガは番を癒せるんだ。気遣わなくていい」

 そう言ってのけ、わざとなのか、覚え込ませた性感帯をまとめて擦り上げてくる。

「ひぁ、……ぁん、……ッ」

 たまらず指先に力がこもり、エリセイの背中に引っ掻き傷ができては消えた。

「ん? てことは、こっちもどれだけ激しくしても抱き潰さないわけだ」

 甘えるような啼き声の合間に、エリセイがとっておきの閃きとばかりに呟く。
 まさか、これ以上の悦楽に突き堕とされるのか。

(仲良く、どころじゃない。おかしく、なる)

 危機感を抱き、規則的に揺れる視界の中、どうにかエリセイの耳を捉える。

「エリ、セイ。わたし、も……君を、気持ちよく、させたい」

 荒い息の合間に申し出ると、暴風雪じみた抽送が止まった。
 主導権を交代する作戦が功を奏したようだ。

 ……と思いきや、毛皮と背中の隙間に手を入れられ、抱き起こされる。
 胡坐を掻いたエリセイの腰を跨いで座る体勢になった。

「そうか? じゃ、頼む。スフェンは手綱遣いが巧いもんな」

 エリセイが汗ばんだ髪を掻き上げ、こちらの顏を下から覗き込んできながら嘯く。

(腰を振れ、ということか)

 ただその言い方だと、今後馴鹿に乗る度に意識してしまうではないか。
 エリセイが含みたっぷりに微笑む。

(確信犯め)

 笑っていられなくしてやろう。
 姿勢を変えたので結合が浅くなっている。奥に迎え入れて締めつけようと、脚の力を抜いて深く沈み込む。

「ん、ぁあっ!」

 結果、自分が喘ぐ破目になった。
 仰向けで突かれるより、奥を押し上げられる感覚が強い。

 それきり動けないでいたら、エリセイが小ぶりな双丘に手を添えてきて、前後に揺らし始める。

「こうだよ、できるか?」

 平民、それもオメガには、できないだろうって? やり切ってみせる。

「わかっている」

 手伝いは要らないと、エリセイの肩を掴み直し、自ら同じ動きに挑んだ。

「ふう……、ぅあ、……っく」

 くちゅくちゅと、結合部から先走りと愛液が混ざり合う音が聞こえてくる。
 でも、やはり自分のほうが感じている気がする。

「……エリセイ、気持ちい、か?」
「うん。頑張ってるのがすごく可愛い」

 そうじゃない。
 拙い腰遣いのさなか、エリセイの頬の傷痕を撫でて性感帯にできないかと試みても、さっき彼がしてきたほどは手応えがない。
 エリセイは今まででいちばん発情しているそうだが、こちらはそれを遥かに超える。

「はっ、ぁっ、今……こんなに、発情しているのに……なぜこれまで、何度会っても、発情しなかった、のだろう……?」

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