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Phase Ⅲ
Reasoning
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後にウェルバーは長老の死因や状態を詳しく聞いた。
長老の遺体には無数の鎌や斧を突き刺っていて、なんらかの烙印を思わせるような傷を背中に‟わざわざ”刻み去っていた。ただ、その印をオ―ヴェルは見た訳ではなくヘクトール率いる調査隊が先に現場到着していて、そそくさと遺体をまるで隠すかのように片づけた後だった。
その違和感に不審を感じるが、調査は慎重を期す必要がある。
それぞれの宗派には『過激派』と総される敬謙な信徒がいる。
Foresterの場合、その熱心な信者は住居を森へと移しコロニアの住人と完全に繋がりを絶縁し原始的な生活を主としている。コロニア内部にいるForester達は、家系や個人的な事情によりそこまでには様々な要因にて至らず、内部から外部のForesterを応援、支援、そして心の支えにしていた。
Centerの場合、正にCSタワーを基礎として周辺のコロニーを分ける壁や扉といった設備、そして各々のルールや主義はなんであれ現状の維持と秩序を死守したいという『保守派』思考の徹底にある。
それにより一部、自分たちの家系や親族のみが崇高な血筋だと思い込む者たちも居る。
今回、長老の死とヘクトールの不審な行動を目の当たりにしたウェルバーは長老の最後の話をオ―ヴェルにだけしようと決意した。それは今回の事件と関係がありそうだったからだ。
「・・・なるほど、長老は第二次フロア抗争レジスタンスの一員だった、ということか」
「ああ。他の当時のレジスタンス仲間は次々に不審死や行方不明者が続出していったらしい。長老はそのことを上層民だったチェバラ先生にしか話していなかった。話した理由は、上に残ったメンバーの現状を聞きたくて・・・だと思う。そして、先生の消失・・・俺たちにその話をしてくれたのも、先生が消えた原因が何なのかは自身への影響を心配して、でもあると思う」
「つまり・・・お前が考えていることを当てよう。ヘクトールは敬虔なセンター教の家系だ。当時のレジスタンス達は事情があれど、CSタワー内部の扉や壁を一部だが『破壊して上へと乗り込んだ』・・・当然、そういった破壊行為はセンターとしては大罪であり、‟見せしめる”必要がある、と。CSタワーを作ったとされる『神々』と、その信者達にね」
「・・・ああ」
「何らかの方法でその話を知ったセンター教の過激派が、長老を殺した・・・動機としては十分なほどだな」
「それに、俺が森から持ち帰った『カメラ』という物が具体的にどういうモノかは知らないが、『原始的な』を思想の基礎としているフォレスター達がそんな俺たちにも分からないような技術を使うとは考えられない。長老いわく、このカメラはその場所の風景を遠くに投影することが出来るそうだ。中央の大きな絵に配給の様子が映るのはこの機械の力だと、長老は先生から聞いていたみたいだった」
「そうだったのか・・・では、そのカメラという物が長老の家に今もあるかどうか・・・そして、その投影先は何処か、だな」
「ああ。一緒に行ってくれるか?」
「そりゃ、もちろんさ」
ウェルバーはライトを家に置いてオーヴェルと長老の家に到着した。
長老の家の内部の物は誰も触っていない、というかそのものに強盗や窃盗というような犯罪はこの世界にはあまり存在しない。それほど配給は充実していて、狙われる貴重品と言えば自然天然ものと動物のはく製や鹿の角や狼の牙の骨、そしてウェルバーが嘆いていた木製や石器製の『オモチャ』ぐらいであり、それらもこのような手間をかけてまで入手するぐらいなら物々交換で手に入れた方が早くて安全でタイム・パフォーマンスが良いはずである。
寝床と思われる場所には凄惨な血溜まりが残り、事件の痛々しさを物語っている。ウェルバーの目にも、死という現実を突きつけられるこの光景を見て、目に涙が浮かぶ。
ライトがこの状態を見たらもう、精神状態がどうなるか分かったものじゃない。
「・・・どうだ。やはり無いか?」
「ああ、見当たらないな。長老は少し怯えた風でもあったから、どこかに埋めるかなにかで処分をしたか、それとも・・・過激派に持っていかれたか・・・・・・」
「手がかりが無くなったな・・・それぞれのツテ伝いで追うしかないか。ウェルバー、だれか良い感じの心当たりの人物は居ないか?センター教に深すぎず、浅すぎず、みたいなさ」
「・・・レイアに聞いてみよう。彼女達の助力が貰えたら、密偵、スパイなんかはこれ以上に適任者は居ない」
「おお、第3のアマゾニス軍が味方になれば怖いもの無しだ」
「第3の者の前で、その呼称はマジ止めとけよ」
「分かってるって、串刺しの刑はマジ勘弁だ」
長老の遺体には無数の鎌や斧を突き刺っていて、なんらかの烙印を思わせるような傷を背中に‟わざわざ”刻み去っていた。ただ、その印をオ―ヴェルは見た訳ではなくヘクトール率いる調査隊が先に現場到着していて、そそくさと遺体をまるで隠すかのように片づけた後だった。
その違和感に不審を感じるが、調査は慎重を期す必要がある。
それぞれの宗派には『過激派』と総される敬謙な信徒がいる。
Foresterの場合、その熱心な信者は住居を森へと移しコロニアの住人と完全に繋がりを絶縁し原始的な生活を主としている。コロニア内部にいるForester達は、家系や個人的な事情によりそこまでには様々な要因にて至らず、内部から外部のForesterを応援、支援、そして心の支えにしていた。
Centerの場合、正にCSタワーを基礎として周辺のコロニーを分ける壁や扉といった設備、そして各々のルールや主義はなんであれ現状の維持と秩序を死守したいという『保守派』思考の徹底にある。
それにより一部、自分たちの家系や親族のみが崇高な血筋だと思い込む者たちも居る。
今回、長老の死とヘクトールの不審な行動を目の当たりにしたウェルバーは長老の最後の話をオ―ヴェルにだけしようと決意した。それは今回の事件と関係がありそうだったからだ。
「・・・なるほど、長老は第二次フロア抗争レジスタンスの一員だった、ということか」
「ああ。他の当時のレジスタンス仲間は次々に不審死や行方不明者が続出していったらしい。長老はそのことを上層民だったチェバラ先生にしか話していなかった。話した理由は、上に残ったメンバーの現状を聞きたくて・・・だと思う。そして、先生の消失・・・俺たちにその話をしてくれたのも、先生が消えた原因が何なのかは自身への影響を心配して、でもあると思う」
「つまり・・・お前が考えていることを当てよう。ヘクトールは敬虔なセンター教の家系だ。当時のレジスタンス達は事情があれど、CSタワー内部の扉や壁を一部だが『破壊して上へと乗り込んだ』・・・当然、そういった破壊行為はセンターとしては大罪であり、‟見せしめる”必要がある、と。CSタワーを作ったとされる『神々』と、その信者達にね」
「・・・ああ」
「何らかの方法でその話を知ったセンター教の過激派が、長老を殺した・・・動機としては十分なほどだな」
「それに、俺が森から持ち帰った『カメラ』という物が具体的にどういうモノかは知らないが、『原始的な』を思想の基礎としているフォレスター達がそんな俺たちにも分からないような技術を使うとは考えられない。長老いわく、このカメラはその場所の風景を遠くに投影することが出来るそうだ。中央の大きな絵に配給の様子が映るのはこの機械の力だと、長老は先生から聞いていたみたいだった」
「そうだったのか・・・では、そのカメラという物が長老の家に今もあるかどうか・・・そして、その投影先は何処か、だな」
「ああ。一緒に行ってくれるか?」
「そりゃ、もちろんさ」
ウェルバーはライトを家に置いてオーヴェルと長老の家に到着した。
長老の家の内部の物は誰も触っていない、というかそのものに強盗や窃盗というような犯罪はこの世界にはあまり存在しない。それほど配給は充実していて、狙われる貴重品と言えば自然天然ものと動物のはく製や鹿の角や狼の牙の骨、そしてウェルバーが嘆いていた木製や石器製の『オモチャ』ぐらいであり、それらもこのような手間をかけてまで入手するぐらいなら物々交換で手に入れた方が早くて安全でタイム・パフォーマンスが良いはずである。
寝床と思われる場所には凄惨な血溜まりが残り、事件の痛々しさを物語っている。ウェルバーの目にも、死という現実を突きつけられるこの光景を見て、目に涙が浮かぶ。
ライトがこの状態を見たらもう、精神状態がどうなるか分かったものじゃない。
「・・・どうだ。やはり無いか?」
「ああ、見当たらないな。長老は少し怯えた風でもあったから、どこかに埋めるかなにかで処分をしたか、それとも・・・過激派に持っていかれたか・・・・・・」
「手がかりが無くなったな・・・それぞれのツテ伝いで追うしかないか。ウェルバー、だれか良い感じの心当たりの人物は居ないか?センター教に深すぎず、浅すぎず、みたいなさ」
「・・・レイアに聞いてみよう。彼女達の助力が貰えたら、密偵、スパイなんかはこれ以上に適任者は居ない」
「おお、第3のアマゾニス軍が味方になれば怖いもの無しだ」
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