20 / 149
Phase Ⅲ
Inside the forest
しおりを挟む
暗すぎる森の中を二人は恥ずかしげもなく、男二人で手を繋ぎ歩いて行く。
逃げきれる場所なんてのはこんな所しか無いと、ウェルバーは判断した。
ふと立ち止まり振り返ると、闇夜の中にまるで巨人の足のように聳え立つCSタワーの輪郭が浮かび、ずっと二人を追いかけてくるようだった。
その陰は星々の輝きを遮り、そこだけが時空を切り裂かれ深く漆黒なブラックホールのような何でも吸い込む化け物みたいだと、ウェルバーの視線先のタワーを見たライトにはそう感じた。
コロニア周辺の森はウェルバーにとっては庭だが、仮に件の暗殺者がフォレスターだったとすると彼らにとってもそれは同じで、すぐに追いつかれるか日が開ければ足跡を追われておしまいである。
逆に暗殺者が保守の過激派センターであれば、決して森深くまでは追ってこない。そういうセンターの教え、決まり事なのである。
そういった結果でも犯人の目星が確信に迫れることだとも考えながら、ウェルバーはとにかく第3コロニーへ、|恋人の元へと向かう。こうなると、頼れる先はもうそこしかなかった。
オーヴィルに助けを求めることも考えたが、そこまで迷惑はかけれないのと彼には表舞台で正式に動いてもらう必要がある。ここでオーヴィルがチェバラや長老、そしてライト達の「裏側」に引き込んでしまうと完全に敵対構造となり、今度こそ大規模な『表層戦争』が第6から始まりかねない。
それはここコロニアでは誰もが当然のように本意ではなかった。
『表層戦争』とは
各フロア同士のもめ事が主であり、第1と第8が。第2と第3が。隣同士のフロアーで争いはここでは頻繁に、多発的に起こっていたことではあった。しかし、今までは最大でもフロア規模以下だったが宗派同士の争い、センターとフォレスター、そして各々の過激派と保守派との戦いとなると、規模が多き過ぎてしまう。それは表層界全ての人々が関係してしまい兼ねない。
各代表、ボスが決められるという選挙の度に、こういった「抗争の火種」があちこちで巻き起こることをウェルバー達は気づいていた。選挙を優位にさせようというそれぞれ宗派の裏工作が始まるのである。
今回も第6の代表を決めるという最中、その渦中に巻き込まれた可能性を考えてた。
それらの「第三者」としても、レイアの元へと保護してもらえればどのような組織であれ迂闊には手を出せない。第3を巻き込む可能性もあるがその心理を逆手に取り、守ってもらう。唯一であり最大の頼みの綱でもあった。
「・・・兄さん、大丈夫かな。夜の悪魔の森は流石に危険じゃあ・・・・・・」
「こうなっては中よりはマシだろう。大丈夫だ。素人では危険だが、俺はほぼ森の住人だぜ」
「兄さん、それ、自分はフォレスターだって言ってるみたいに聴こえちゃうよ」
「はは、確かに。いや・・・殆どそうかもしれないな。中よりも森の方が居心地が良くなってるよ。それに・・・オーヴェルと長老の家に行った時に話していたことだが、今回の長老の件や俺たちが襲われた背景には、保守の過激派センター教の陰謀の可能性があるんだ」
「・・・僕もそんな気がしていたんだ」
「?!」
「いや、誰だって・・・あ、従順なセンター信者以外は、だろうけどセンター教にとって最大の罪は上階への反旗、そしてタワーの破壊行為でしょ?多分、長老以外にも消されたり事故に見せかけて殺されてきたのも、その過激派センターだと考えるのは自然だよ」
「・・・ああ、そうか。はは、悪かったな、子供扱いしてしまって。そうだ。俺とオーヴィルもその可能性を考えているんだ。しかし、ライト、お前はその比較的『従順なセンター』だと思っていたよ」
「・・・兄さん、実は、先生と話してたことがあるんだ・・・・・・」
そうして、ライトはチェバラに口止めされていた上階のこと、そしてゲート教、ファティマ正教、コロニア伝記のこと等を初めて、例え兄弟であったとしても秘密にしていたことを話した。それはウェルバーが長老の死因や状態を細かく説明しないのと同じような、絆と愛があるための「守りたい」という慈愛からだった。真相はチェバラしか知り得ないようだがライトにはその重要性や保守性は痛感していて肌で危険性は伝わっていたからであり、それにウェルバーを巻き込みたくなかったからである。
しかし現状、こうなってはそうも言ってられない程の事態だと判断した。
「・・・なるほど、そんな繋がり、というか伝承と変革がこれまでにあっても今ってことか・・・・・・」
ウェルバーは一時立ち止まり、深く考え事をしだす。
今度はライトが先導するかのように手を引っ張り、止まらないように無言で促した。
「・・・じゃあ、もしかすると保守の過激派センター教の一存だけの事件では無いかもしれない、ということも考えられるのか」
「うん。本当にもしかして、だけど、あの‟黒い物”も本当に遠くを投影できるのなら、兄さんがアレを回収する光景も、そして長老との接触も、誰かに見られていたんじゃないか・・・な」
「!?・・・なるほど。あのカメラは、どんな場所でも映すのかもしれないな。そう考えると、タイミング的な辻褄が合ってくるな」
「・・・あ、兄さんが悪い訳じゃないよ。長老はもしかして、概ねの現状を把握した上で、あのカメラを受け取って自分の運命を覚悟したんだと思う。色々と疲れていたんだ。やっとこれで解放された。あの最後の言葉は・・・そういうことだよ」
「・・・でも、しかし・・・・・・」
「長老はその命を使って、状況や時間を僕らに託てくれたんだ。自分の運命や、この世界の運命も。その先に、先生が待っているかもしれない」
「・・・長老・・・・・・」
「・・・・・・」
ライトは兄であるウェルバーを始めて、今まで沢山されたことのお返しのようにそっと黙って、優しく小さめの腕と胸で悲しむ兄を抱きしめた。
逃げきれる場所なんてのはこんな所しか無いと、ウェルバーは判断した。
ふと立ち止まり振り返ると、闇夜の中にまるで巨人の足のように聳え立つCSタワーの輪郭が浮かび、ずっと二人を追いかけてくるようだった。
その陰は星々の輝きを遮り、そこだけが時空を切り裂かれ深く漆黒なブラックホールのような何でも吸い込む化け物みたいだと、ウェルバーの視線先のタワーを見たライトにはそう感じた。
コロニア周辺の森はウェルバーにとっては庭だが、仮に件の暗殺者がフォレスターだったとすると彼らにとってもそれは同じで、すぐに追いつかれるか日が開ければ足跡を追われておしまいである。
逆に暗殺者が保守の過激派センターであれば、決して森深くまでは追ってこない。そういうセンターの教え、決まり事なのである。
そういった結果でも犯人の目星が確信に迫れることだとも考えながら、ウェルバーはとにかく第3コロニーへ、|恋人の元へと向かう。こうなると、頼れる先はもうそこしかなかった。
オーヴィルに助けを求めることも考えたが、そこまで迷惑はかけれないのと彼には表舞台で正式に動いてもらう必要がある。ここでオーヴィルがチェバラや長老、そしてライト達の「裏側」に引き込んでしまうと完全に敵対構造となり、今度こそ大規模な『表層戦争』が第6から始まりかねない。
それはここコロニアでは誰もが当然のように本意ではなかった。
『表層戦争』とは
各フロア同士のもめ事が主であり、第1と第8が。第2と第3が。隣同士のフロアーで争いはここでは頻繁に、多発的に起こっていたことではあった。しかし、今までは最大でもフロア規模以下だったが宗派同士の争い、センターとフォレスター、そして各々の過激派と保守派との戦いとなると、規模が多き過ぎてしまう。それは表層界全ての人々が関係してしまい兼ねない。
各代表、ボスが決められるという選挙の度に、こういった「抗争の火種」があちこちで巻き起こることをウェルバー達は気づいていた。選挙を優位にさせようというそれぞれ宗派の裏工作が始まるのである。
今回も第6の代表を決めるという最中、その渦中に巻き込まれた可能性を考えてた。
それらの「第三者」としても、レイアの元へと保護してもらえればどのような組織であれ迂闊には手を出せない。第3を巻き込む可能性もあるがその心理を逆手に取り、守ってもらう。唯一であり最大の頼みの綱でもあった。
「・・・兄さん、大丈夫かな。夜の悪魔の森は流石に危険じゃあ・・・・・・」
「こうなっては中よりはマシだろう。大丈夫だ。素人では危険だが、俺はほぼ森の住人だぜ」
「兄さん、それ、自分はフォレスターだって言ってるみたいに聴こえちゃうよ」
「はは、確かに。いや・・・殆どそうかもしれないな。中よりも森の方が居心地が良くなってるよ。それに・・・オーヴェルと長老の家に行った時に話していたことだが、今回の長老の件や俺たちが襲われた背景には、保守の過激派センター教の陰謀の可能性があるんだ」
「・・・僕もそんな気がしていたんだ」
「?!」
「いや、誰だって・・・あ、従順なセンター信者以外は、だろうけどセンター教にとって最大の罪は上階への反旗、そしてタワーの破壊行為でしょ?多分、長老以外にも消されたり事故に見せかけて殺されてきたのも、その過激派センターだと考えるのは自然だよ」
「・・・ああ、そうか。はは、悪かったな、子供扱いしてしまって。そうだ。俺とオーヴィルもその可能性を考えているんだ。しかし、ライト、お前はその比較的『従順なセンター』だと思っていたよ」
「・・・兄さん、実は、先生と話してたことがあるんだ・・・・・・」
そうして、ライトはチェバラに口止めされていた上階のこと、そしてゲート教、ファティマ正教、コロニア伝記のこと等を初めて、例え兄弟であったとしても秘密にしていたことを話した。それはウェルバーが長老の死因や状態を細かく説明しないのと同じような、絆と愛があるための「守りたい」という慈愛からだった。真相はチェバラしか知り得ないようだがライトにはその重要性や保守性は痛感していて肌で危険性は伝わっていたからであり、それにウェルバーを巻き込みたくなかったからである。
しかし現状、こうなってはそうも言ってられない程の事態だと判断した。
「・・・なるほど、そんな繋がり、というか伝承と変革がこれまでにあっても今ってことか・・・・・・」
ウェルバーは一時立ち止まり、深く考え事をしだす。
今度はライトが先導するかのように手を引っ張り、止まらないように無言で促した。
「・・・じゃあ、もしかすると保守の過激派センター教の一存だけの事件では無いかもしれない、ということも考えられるのか」
「うん。本当にもしかして、だけど、あの‟黒い物”も本当に遠くを投影できるのなら、兄さんがアレを回収する光景も、そして長老との接触も、誰かに見られていたんじゃないか・・・な」
「!?・・・なるほど。あのカメラは、どんな場所でも映すのかもしれないな。そう考えると、タイミング的な辻褄が合ってくるな」
「・・・あ、兄さんが悪い訳じゃないよ。長老はもしかして、概ねの現状を把握した上で、あのカメラを受け取って自分の運命を覚悟したんだと思う。色々と疲れていたんだ。やっとこれで解放された。あの最後の言葉は・・・そういうことだよ」
「・・・でも、しかし・・・・・・」
「長老はその命を使って、状況や時間を僕らに託てくれたんだ。自分の運命や、この世界の運命も。その先に、先生が待っているかもしれない」
「・・・長老・・・・・・」
「・・・・・・」
ライトは兄であるウェルバーを始めて、今まで沢山されたことのお返しのようにそっと黙って、優しく小さめの腕と胸で悲しむ兄を抱きしめた。
3
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる