『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

文字の大きさ
57 / 149
Phase Ⅷ

Each thoughts

しおりを挟む
 ウェルバーとライトは何とかプローバーらを振り切り、そして蹴散らし無事にパメラ達と合流ができた。

 ライトが必死な形相のままにタワー側中央で何があったかを説明し、全員で急いで外へ、森へと逃げ出すように向かった。

「のんびり扉を開けている時間はない!悪いが全員で外壁を登って抜けるぞ。食われながら殺されるよりマシだと思ってくれ!」

「「は、はいぃ!!」」

「セーラさん!パメラさん!三人で紐を繋ぎましょう!万が一誰かが足を踏み外した時、残る二人でならなんとか支えられて助かるかもしれない」

「「はい」ありがとう・・・・・・」

「俺は男の子こいつを担いで先に行く。直ぐに戻って上から引っ張り上げてやるから、俺の腕を目指して来てくれ!」

 セーラは高所恐怖症で不安だったが、二人の配慮により恐怖は薄れて勇気が湧いてきた。
 思春期以降、男性と関わる事が殆ど無く第3周りの噂話と子供の頃に出会った女々しい第4の男の記憶しかなかったので、それらとは種類の違うウェルバーとライトの逞しさと優しさを始めて感じ、自身のイメージとの違いがまるでカルチャーショックかのように衝撃を受け続けていた。
 レイアのような正しく頼れる男性が実際には存在していて、そしてまた違う力強さが女性の本能を呼び覚ましていく。

「早く!」

 ライト、パメラ、セーラが紐を繋いでいる間にウェルバーは既に男の子を担ぎ乗り越えたらしく、大扉の頂上で腕を伸ばし待っていた。

「今はまだ遠くだが松明の火の灯りがどんどんと広がってきて、やはりこっちまで来ようとしている。足を踏み外さない様に慎重に、落ち着いて、しかしできるだけ急いで!」

 ウェルバーが中央方向の遠くを見ながら手を下に伸ばす。
 ライトが誘導しながら、二人は無言で手足元を確認しながら木組みを上がっていく。

「いいぞ!その調子!」

 ライトが頂上へ着き、紐を引っ張り少しでも女性陣の負担を軽くしようとする。ウェルバーの手がセーラに届き、軽々とセーラを引っ張り上げて頂上へと着地させる。
 そして続いてパメラも同様に。

 吊り橋効果なのか差し迫っている恐怖によるものか、疲労からかもわからないが、セーラの胸はドキドキと鼓動が激しくなる。

「ライト、紐をほどけ!外側は敵などに登られない様に杭や支えの建付けが無い。彼女達にとっては内側のような訳にはいかないだろう。お前は先に降りて、万が一に備えて受け止めれるように下で待機しててくれ。俺が上から紐で降ろしていく」

「わかった」

「いいか、二人ともよく聞いてくれ。この紐は『ねじり紐』と言って見た目よりもかなり強い。ちょっとやそっとでは切れやしない。二人の体重ぐらいじゃどうってことはないから安心してくれ。混乱して暴れてしまうと、俺がひっくり返ってしまうぐらいだ。だからずっと上を、俺の顔を見続けててくれ。大丈夫だから」

「「はい!」」

 ウェルバーはセーラの方の目が生きていたので、セーラから降ろすことにした。それは一度の成功事例さえ見せれば次の心配をさせないためである。

「・・・いいか、下を見るな。じっと俺だけを見てろ」

「はい、ウェルバー様」

 ゆっくりと、力強く、慎重に紐を伸ばし降ろしていく。
 下でライトが受け止め、紐を解いてそれを手繰り寄せ続いてパメラへと結ぶ。

「・・・これから、どこへ行きますか?ウェルバー様」

 パメラは浮かない表情で、紐を身体に通してるウェルバーに話しかけた。

「うん・・・あいつらは図ったようにずっと中央の扉を破ろうとしていた。そして第8との壁が破られ新たなルートからなぜかゾロゾロと奴らが・・・恐らく第2も危ない。森の方がマシだ」

「・・・やはり、第2、も・・・・・・」

「さぁ、OKだ。足元に気を付けて。俺を見ろ」

「はい。ありがとうございます」

 パメラはウェルバーの方を見ることをなく、降りる自身とは逆に上がる扉の壁を見つめながら吊るし下ろされていった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...