『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

文字の大きさ
60 / 149
Phase Ⅷ

Colony Ⅱ

しおりを挟む
「よし、第2コロニーへ行こう」

 翌朝、ウェルバーは腹を決めたように言い出した。

「え、でも、チーターとか色々さぁ・・・・・・」

「なにも全員でとは言わない。俺一人で行ってくる。そして、第1の現状を第2のみんなに伝えて壁の強化や警戒をさせないと、また多くの犠牲者が出てしまう」

 ライト達は沈黙し考える。

「・・・あの、私もご一緒させて下さい。やはり、父が心配で」

 ライトがパメラの話を遮るように口火を切った。

「いや、兄さん、パメラさん・・・僕が行きます。二人とも第2では色々と顔を指すでしょう?僕なら殆ど、というか全然、眼中にも入っていないはず・・・誰よりも安全に行けるでしょう。セーラさんは、ここでこの子を診てて下さい、お願いします。兄さんの森での生活術もここのみんなには必要ですし。必ず、僕がパメラさんのお父さん、見つけてみせるよ」

「しかし・・・・・・」

「今も、思い出すと手が震えてるよ、兄さん。矢が貫く感触がまるで槍で刺したかのように残っている・・・でも僕は昨日、二人もプローバーを倒せたんだ。こんな細い腕でも・・・心の奥では勇気と自信が溢れている。そんな気がするんだ。僕も強くなれる。いや、強くなりたいんだ」

「・・・そうか。分かった。お前も『漢』になったな」

 そう言ってウェルバーは笑顔で、ライトが強く見つめている目先のパメラを見ながら、ライトの肩に手を力強く叩いた。

「本当に大丈夫ですか・・・ライト様」

「ああ。森の獣たちから身を隠すのよりか簡単なんだって、第1で実感できたよ。隠れたり存在を消すのは兄さんよりも僕の方が優秀なんだよ、実は」

 笑顔でみんなにウインクし陽気に見せた。

「ああ、確かに。こいつの気配はイタチ並みに読みにくいな」

 みんなが少しづつ穏やかになっていく。

「・・・では、ライト様、これを・・・・・・」

 パメラが首に掛けている麻紐の綺麗な石を取り出し、ライトへと渡す。

「この石は父から私へと頂いた物です。これを見せれば直ぐに私からだと分かってくれるでしょう」

 じっと見ていると、吸い込まれそうになるような菱形で「深紫色のクォーツ」が、差し込む朝日を反射させライトの顔を彩った。

「わぁ・・・キレイだねぇ」

「大事な私の宝物です。必ず、生きて帰ってきて下さい。そして、それを失くさずに私の所にまで絶対に返しに来て下さい。約束です」

 パメラの目は力強く、そして顔は優しくも悲しい表情でライトの目を見つめながら、両手でライトの石を持った手を強く握りしめる。
 ライトは少し、鼓動が早くなった気がした。これは異性に対する反応なのか、それともこれから巻き起こる未来への緊張からなのか、ライト自身にもまだ分かっていなかった。

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...