『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

文字の大きさ
86 / 149
Phase Ⅹ

Devil's Forest Awakening

しおりを挟む
 パメラ、マオリ、ナバホの三人はフォレスター達の集落へと戻ってきた。


 ナバホは休むことなく無言で、そのままそそくさと村の奥へと去って行く。手には重そうな麻袋の底、内部から色濃い血がまだ滴っていてそれを見るとパメラはつい先ほどの光景を思い出し、胸から胃の内容物が込み上げてくる。

「お前の言葉、信ジル。奴ラ何トカシナイト大変。中、外、言ッテラレナイ。一緒ニ戦ウ」

「・・・うん」

 パメラにはまだこれからどうなって行くのか、先の未来への実感が持てなかった。しかしフォレスター達は予想以上の危機感を持ってくれているようで、その緊張感はパメラにも伝わってくる程である。


 センター教の教えとしては、何が在ってもCSタワーが守ってくれるという『タワー崇拝』が小さい時から言われ続けられた為に、タワーから一番遠いであろうこの地が不安でならなかった。なんとか意志を保てるのは、まだ休養中だがレイアとウェルバーが手の届く所に居るという信頼と自身の求愛があってこそであり、皆の回復と身の安全、先の未来よりもすぐ目の前の出来事の処理で精一杯な部分もあった。

 マオリはパメラにひとことだけ言い残してから、ナバホの後を追うように去って行った。



 パメラがみんなのいる小屋に戻ると、ウェルバーが目を覚ましていた。

「ウェルバー様!!」

 急いで駆け寄ると、ウェルバーは笑顔で待ち構えた。

「ああ、パメラ・・・すまない、なんか、色々と迷惑をかけたみたいで」

 どうやらセーラが経緯を説明をしてくれていたようだ。

「いいえ!とにかく、ご無事でなによりです」

 パメラの目には涙がもう、零れ落ちていた。つられてセーラも目に涙を浮かべる。

「ここの者にも、悪い事をしたみたいだね。・・・それに、レイア・・・・・・」

 ウェルバーは愛おしい者を見る目と心配な目をしてレイアを一瞬、見つめる。パメラにはその顔を見ることは直視出来ないでいた。

「レイア様も、まだ意識は戻っていませんが何とかお身体は大丈夫なようで、ご安心ください」

「ああ、聞いたよ。フォレスター達には感謝し切れないな。後でお礼と謝罪に行きたい」

「まだ、もう少し安静にしてて下さい。せめて、後一日ぐらい様子を見ましょう」

 セーラがまるで主治医のように指示をする。それはしかし妥当とも言える立場であった。

「ああ、分かった」

「・・・で、パメラどうだった?第1の様子は」

「あ、えっとね・・・・・・」

 パメラは改めてウェルバーに説明をするためにも、マオリとの会話やフォレスター達の状況、そして現状を伝えた。


「・・・そうか。事態は、奴らはどんどんと拡大し広がっているようだな」

「ええ。その代わり、仲間も増えている。バラバラだったこの世界のみんなが、共通の敵を前にして団結していくかもしれない。そんな気もするの」

「だと・・・いいんだがな」

 ウェルバーはこの世界の未来に、何を見ているのか。
 それ以上は語らずにまた、回復のためにも眠りに付いた。

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...