『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

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Phase Ⅺ

White costume

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 ・・・・・・

 ドンッ!ガンガンガン!ウィーーーン・・・ガスッ!


 まるで近くで工事でもしているかのような騒音で、ライトは目覚める。酒気をまだ寝て起きても感じて、そしてまだ酒の臭気に少し頭が痛くなっていた。
 すると、自分の樽が持ち上がる感覚を感じて、意識が少しハッキリする。両手足を踏ん張り、揺れや衝撃に耐えれるように体勢を整えながらも、自分が中に居ることがバレないようにスッ、と息を殺す。

《いよいよ、上へと運ばれている!》

 緊張や期待、そして‟便意”がライトを襲う。


 騒音が少し遠くに離れ、ライトが入っている樽がどこかに置かれた。


 開けられた穴から外を覗き込むが、目の前には自分と同じ樽の木目しか見えない。
 反対側の穴を覗くと、表層界のようなレンガ式に積まれた石壁や石畳みでなく滑らかに、まるで鋭利に切られたような岩の断面をした壁が見えた。

 外の騒音に紛れて、ライトは上部の蓋に掌底を当てながら外していく。

 一時、ライトは考えた。積み荷作業をしている今の内に動くべきか、逆に静かになり誰も居なくなってから動くべきか。
 自分達、というこの酒類がこの後どう処理されるかが分からない。一時、ここに置いたままにしておくのか、それとも直ぐにどこかへと運ばれるかもしれない。

 勇気を出して浮いた蓋から外が見える範囲まで顔を出し、更に周囲を確認する。
 先ず見えたのは、大きな杭のような物に紐が吊り下げられ、それで荷物を上げ下げしている様子だった。太い綱などではなく細い紐のような細さなのに、重そうな荷物を難なく吊り上げている。よっぽど丈夫な素材なのだろうと、ライトは思った。

 階段部分にはが設置され、次々と小から中規模の荷物が何人かの手作業で下へと降ろされていた。まるで巨人の胃袋かのように次々と荷物が階段へと動く床にて消えて行き、下とは文化レベルの違いを感じた。それらの動く物を動かす滑車や手押し車は見当たらない。

 見える範囲ではその作業をしている者は五人ほどしか見当たらなかった。みんな作業に没頭している。今の内だと直感的に感じて、ライトは慎重に樽の中から身を乗り出し、直ぐにそのままその樽群の影へと隠れて様子を見る。

 下からいつも眺めていたこの上層『界』の底を、今、逆に降り立ちその上に立っている自分が信じられなかった。そこにはタワーを中心に多くの物資の数々が無造作に置かれているが、それ以外には何も無いただの広場となっている。

 この荷物の品が全て下へ降ろされるのどうかは分からないが、もし大半が無くなってしまうと自分の身を隠す場所が無くなる。そう思い、周囲をもっと目端を利かせながら移動場所を求め探していた。

 タワーの、自分がいる場所の更に上を見上げてみる。そこにはまだ上が確かに存在している様で、窓のような吹き抜けがいくつか見える。
 逃げ場所としてそこまで登ることは目立つし、このまるで切り取られたかのような石の壁では捕まる部分が全く無い。

 この上層階の屋上のような場所の最端にはぐるっと、タワーと同じ材質の滑らかな壁が隔たっている。
 どこから生えているのか、その壁の先には木々の枝葉が視界を妨げるかのように生い茂り、下から見上げた風景の中に居ることが如実に伝わる。

 その手前に、滑らかな石の地面が広がる中にポツン、と木材で出来た扉が開け放たれていた。もしかしてあそこから上層階の内部へと降りられるかもしれないと考えるが、十メートルほど荷物も何も無い空間を走り切らないといけなかった。

 積み荷群の、なんとか身を隠せるギリギリの所までやってくるがその先からは運に任せるしかないのかと、鼓動が早まる。
 その最中、しゃがんで心の準備をしながら身体を支えている右手の上には白い布が無造作に置かれていることにライトは気が付いた。
 積み荷作業をしている上層民を改めて確認すると、丈夫な釣り糸や動く床を恐らく操作している風の者は、今ライトの右手の上の置かれた白い布を全身に纏っている。階段周辺の手作業で荷だしを行っている者は、その布を脱いで腰に同じ素材であろう白い布で下半身を隠しているだけだった。力仕事をする者は汗を掻き、暑い。きっと作業前に脱いでおいた物がこれだと感づいたライトはそれを拝借し、見よう見真似で同じく‟それ”を纏い、焦らず走らず、作業員として溶け込むかの様にその下への扉を潜り降りて行った。

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