『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

文字の大きさ
95 / 149
Phase Ⅺ

a stakeout

しおりを挟む
 慰霊室とはまた別の広間へと辿り着いたライトは、そこで食事を摂った。

 その広間は食堂のようで、ここもフリースペースになっている。
 大きな鉄のような入れ物に大量の様々な食糧が料理済みの状態で並んでいて、いつでも自由に選び自由に食べれらる仕組みだった。

 そこでライトはまた、違和感に怯える。

 他の上層階の民はこの食堂に数人いるが、みんな何一つ会話をしていない。黙々と食べ、小柄な体格の部外者であるライトには目もくれず、まるでみんな幽霊のように一連の動作を繰り返すだけだった。

 その不穏な空気にライトは食欲を失い、目の前にあるまた見た事も無い食事は小食で終わった。

 自分だけが小柄な風格で場違いなライトだったが、ここにも子供の姿らしき者は居てこの体格差は異常、とまでには至らなかったようである。どこかの誰かの子のような認識でいて、上層民からすれば不自然という訳でもなかった。
 一部の子供の装束は白ではなく黒や碧といった色付きの生地の子がたまに居て、何らかの区分けがされている。その点にライトは、ただ子供は色付きなんだとだけ認識した。



 そしてまた方々を歩き周り、途方に暮れる。


 こんな辛気臭く陰気な人々、そして閉鎖的な部屋の数々と迷路のような空間の中で、どうやってチェバラを見つけ出せばいのだろうか。


 仕方なく、ライトは食堂の広間に戻りそこの一角で人々を見張ることにした。

 明朝に下層世界への荷出しが行われていたとして、体感的にだがそろそろ昼時だと思われる。このような世界では朝昼晩という習慣があるのかどうかも分からないが、いつかは誰もが食事に出向くであろうと思い、食堂前の様々な食器類が置かれている部屋で目ぼしい者をチェックしていった。

 巨漢な人々の中で、子供のように小さくはないぐらいに背丈があり、比較的に小柄な人を見つける。これほど簡単な張り込みがあるだろうか。しかし、屋上で従事していた者のように、恐らくここでも何らかの肉体労働を行っている者は少なからずにいた。そういった者を見かければしっかりと見張り尾行して、食事風景を確認し人相を見る。
 しかし、また稀に食堂で食事をせずにそのまま見繕った食事を持って、恐らく自室に戻る者もいてその場合はどうしたものかと思案していると、通路の向こうから手錠を付けられ装束を纏っていない人物が連行されてこっちへとやって来た。

 見張りのような白装束の上層民らしき者が前後に貼り付き、その真ん中の連行者は、なんとライトをここへと道案内をしてくれたサルヒコの姿であった。

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...