『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

文字の大きさ
97 / 149
Phase Ⅺ

Devil's Forest Appreciation

しおりを挟む
 ウェルバーはパメラ達から聞いた経緯から、とにかくマオリというフォレスターの男を探しに仲間のみんながいる小屋を後にする。自分達のこともそうだが、何よりもレイアを救ってくれたお礼が言いたくて仕方がなかった。

 じろじろとフォレスターの民からの視線を感じる。ひそひそと何かを話しているような気もする。それも仕方がない。ウェルバーもここへ乗り込みに来た時に、何人かのフォレスターをなぎ倒してきたのだから。敵意とそして不安が大半で、一部の興味がウェルバーへと一心に注がられる。

 彼女らが逃げるようにと去る方向へと、追いかけるように付いて行った。


 すると案の定、その先に装飾が少し派手な小屋の前で、更に他のフォレスターとは違い着飾りが少し派手にしている三人の男が話し合っていた。


「すまない、マオリという者に会いたい」

 言葉が通じないこともパメラ達に聞いていたが、マオリという名前を言えば分かるかと思いそのままの言葉を口にした。

「ワタシガソウダ。モウ元気カ?」

 偶然にも左手にいるふくよかな男が、自分がマオリだと名乗りを上げた。

「・・・ありがとう!そして、すまない!レイアを・・・俺の妻を助けてくれたそうだな!本当に、本当にありがとう!!」

 ウェルバーはマオリの存在を確認するや否や、地面にひれ伏し頭を下げて、心からのお礼と感謝の気持ちを全面に表した。
 ウェルバーは何度も何度も「ありがとう」と良い放ち、顔を隠しながら号泣している。その震える声や嗚咽は決して隠しきれるものでは無かったが、マオリは無言でひれ伏し詫びる男の肩に手を置き、脇を支えて起こしにかかる。

 立ち上がったウェルバーの顔は涙と鼻水で情けない姿だったが、その場にいた長老とマオリ、そして右手にいたナバホは突然に泣き崩れる大の男を目の当たりにして、最初は驚いたがそのウソも偽りもない行動と反応、目に見えて伝わる感情に心打たれる者はいない。
 ナバホは特に、身に染みてウェルバーの強さも分かっていた。ウェルバーを最終的に捕らえたのはナバホだからである。
 普通であれば大の男が泣き崩れるなんて情けなく、軽蔑に値するだろうがその屈強な男がここまでの状況になるのだからと、言葉は通じないが心で通じたのであった。

 マオリに続きナバホ、そして長老までもがウェルバーの肩や腰に手を貸し、微笑みかけた。

 ウェルバーはまたその心意気を感じて更に感謝し、マオリを抱き締めた。力強く、そして感謝を込めて。ナバホ、長老と勝手に手を取り、ありがとう、ありがとう、と強く握手をしながら純粋な感謝の言葉を投げかけた。

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...