『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

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Phase Ⅻ

Colony Ⅷ

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 残されたフォレスターの二人、マオリとナバホは木々を縫うようにしてコロニアの外部壁へと向かっていた。

 身体の大きなマオリは先陣を切るナバホの指示を待ちながら、問題がなければナバホの元へと駆け付けるという万全を期しながらの進行なので蛇足ではあるが、そろそろだという頃には既に何らかの呻き声のような、喚き声が様々に聞こえて来ていた。直ぐに草むらを匍匐前進に切り替え、視認が出来るまで慎重に近づいてみると、ぞろぞろと浮浪者のように歩き回るプローバーが点々とだが、数は数十人ほど壁に沿ってどこへともなく流浪している。

 何を求めて歩いているのか、目的は何なのか、マオリとナバホに知る術は皆無である。


 第8からのプローバーが何故、人を食うのかのその真意としては「ドラッグ」を求めてのことだった。

 監獄エリア、第8コロニー・・・・・・

 囚人に埋め尽くされていくその世界でも、他の世界コロニーと同じく格差ヒエラルキーがあり、ただのそれだけでなく搾取、争奪も普通ではない。

 第2、第3などで捉えられた多くのチーターたち。酒や薬に溺れ多くの者にやっかみを受けた者。それぞれ各地の反乱軍として立ち上がったが、不運にも捕まった反逆者。殺人鬼。違法者。そしてセンター教に敵視された者など、その種類は時と場合で様々だが、一番その中でも最下層となるのがだ。

 中ではなんらかの作業というものは一切無く、ただひたすらに目的もなく「生きる」というそれだけの世界が基本の第8コロニー。ただ閉じ込められ、生きる。死ぬことすら許されないその世界では、そもそもに気が狂うだけであった。

『悪魔に憑りつかれて「」となり、もはや人ではなくなってしまう』

 ただでさえ他のコロニーでも生きる目的も無く暮らすと、そう言い伝えられている。そんな世界で更に異端として集められた監獄第8コロニーの者たちの間では、ある「遊び」が流行する。

 イジメから始まり、人権搾取、そして迫害、暴力、から肉体的精神的からも「廃人」と化す。

 彼らにとってはただの「暇つぶし」。そこに人権や個人の意見などは全く通用しない。その場、その時の「仮初の権力者」が楽しむ為の存在を作り上げていくのみである。

 第8の中では一応に、収監は男女に分けられる。

 しかしこの暇つぶし、遊びの‟習慣”に男女に違いなんてのは無い。強いて言うならば、女囚側は比較的その「楽しみ方」は精神的な屈辱を与える事に重きを置き、男囚側は物理的にもその両方が課される。

 新人には平等にその「洗礼」は必ず受けることになる。そこで耐えれる人間なのか、そして「仮初の権力者」たちにどう取り入るか。その狡猾さは今まで自由だった‟シャバ”とは比べ物にならない程のやり取りの毎日となるのだ。

 洗礼とは・・・・・・
 公開自慰、糞尿入りの食事、同居人全員の性処理道具としての奉公、気分次第での暴力、体内への異物混入、そして酒漬け、薬漬けなどなど。その種類は仮初の権力者の気紛れな発想と思い着きで多岐に何でもやらされる。

 そこで既に強制的、もしくは自発的な現実逃避として薬への依存となり、その環境では逆に薬のお陰で正気を保つ唯一の方法となってしまう。
 どこから入手するのかは誰にもわからないその『Z Saltsジーソルト』の成物も、もはや第8独自の調合がされていて巷の物とは比べ物にならないほどに粗悪品と化している。瞬間的な快楽の為だけを追求していくその薬は、ひたすらに禁断症状も誘発しヒエラルキーの打破が出来ない者は廃人化して、そこで初めてODオーバードーズとして死ぬことが許された。
 その時点で死ねた者は、まだ「強運」とも言える。

 そこまでに至る前に、陳家なプライドがある者は自らの手首を噛み切ってなんとかするしか無い。それすらも、誰かにバレると速攻で治療され死なせてはくれない。生き地獄とは正にこのことである。

 第8内部で完全に廃人となった者は、仮初の権力者たちからは飽きたオモチャのように放置される。
 反応、反抗、苦痛、悲鳴、悲観、謝罪、嗚咽、後悔・・・そういったものが彼ら、彼女らの楽しみであり、それらを失ったただの「物」「肉塊」には興味は無い。

 そんな最中、勝手に打たれた薬の禁断症状に苦しみだすが、得られ安らぐことも無い者たちが最後に取る手段として、薬を打っているその者の体内、血中に流れている『Z Saltsジーソルト』を求めて食うだけの存在が出来上がっていくのだった。
 前頭葉などの思考回路は壊され、本能だけがむき出しとなった者の貪欲さはイヌ科の動物をも顔負けである。


 マオリとナバホの目の前を「彷徨っているプローバーWanderer」は、それだけを求めて人を探している。空腹だとかではなく、己の苦痛を取り除く目的で人を食うことしかないただの化け物として、生かされてしまった結果だった。

 プローバー同士の共食いも当然、廃人初期は行われている。しかし、それもお互いに枯渇した者同士では無意味だと本能だけで理解して行く。嗅覚が鋭敏な者は稀に嗅ぎ分けるが、苦痛と渇きの支配からはそんなに逃れられるものでもなかった。

 コロニーの外壁を沿って歩いているのも、その中に「人=薬」が有ることを本能で理解しているからである。

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