『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

文字の大きさ
124 / 149
Phase XIV

a counterattack

しおりを挟む
 ウェルバー達は急ぎ早に、第6コロニーを去ることにした。
 それはオーヴィルに迷惑をかけない為が一番だが、彼は彼でやってもらわなければならないことがある。第6ではヘクトール率いるセントラル教から見れば「密会」とも見えてしまうウェルバー、レイアとの接触は、これだけにしなければならない。

 再度、再会のプラン、約束をしてお互いに検討を祈った。

 ウェルバーとレイアはもう一晩だけ、ノーマッド達に匿って貰いながら第6外壁エリアに留まることとなった。
 その理由は第5コロニーへの侵入の際にノーマッド達に扮して入ろうということで、団長はそれも快く引き受けてくれて家畜などの撤退準備が必要とのことである。


 二人は密やかにだがその夜、久しぶりの二人きりの状況に心躍らせた。


 熱い口づけを交わし、馬小屋に敷かれ積み上げた藁のベッドの上で愛し合おうとしたその時
「・・・しっ・・・・・・」

 レイアはウェルバーの口を押えて聞き耳を立てる。
 二人ともが半裸状態にまで進展していたので、レイアは身を整えて匍匐で小屋の入口の方向へと音を立てずに前進した。

 二人が現在いる場所は小屋の二階部分で休んでいた。
 いつもなら下には何らかの動物がいるのだが、ノーマッド達が外へと移動させた後だったために誰も何も無いはずである。

 ウェルバーはレイアを見ながら、流石、隠密のプロだ・・・と感心しながらも、レイアとは一歩遅れて行動を追う。
 レイアが見下ろしている隣へと、引っ付く様にやってくると小屋の入口の方で微かな光源が動くのを見つけた。

「・・・誰かが来る」

「ノーマッドの誰かじゃないのか?」

「・・・・・・」

 外に一つの松明を持った者が一人。その微かな灯りを背後に一つの人影が小屋の内部へと、明らかにコソコソとした隠密行動で様子を伺いながら入ってくる。

 ウェルバーとレイアは目線だけで会話して、ウェルバーはそのまま入口方向の上部。レイアは反対側、梯子の上へと陣取った。

 馬小屋の内部を探っている者が一階部分を調べ終えて、レイアの眼下である梯子に気が付く。


 ・・・ギィ・・・ギィ・・・ギィ・・・・・・


 ゆっくりと梯子を上ってくる音が、より緊張を際立たせる。


 ・・・ドン!
「!!うぅあぁ・・・・・・」
 影が梯子を登り切った所で、レイアは影の胴を梯子からひっぺ剥がすように蹴りを入れた。

 ・・・ドスンッ!!
「うっ!!・・・ぐあぁぁぁぁ」

 七メートルほどの高さから勢いよく地面に叩き落とされ、確実に腰や背骨が折れてもう身動き一つ取れない状況が伺える。

 入口で見張りでもしていたであろう者が衝撃音や叫びを聞いて、松明を持ってかけ入ってこようとした。
 ウェルバーはその光に目掛けて飛び出し、落下の勢いのまま胴体を蹴り踏みつけた。

「ぐぼあぁぁぁ!!」
 口から血を巻き散らし、肋骨の粉砕と内臓の破裂で間もなく即死する。


 小屋周辺を警戒しながら一回りするが、他に暗殺部隊と思われる気配は疎か一般人の姿すら無かった。

「・・・なんで私たちの居場所がバレた?もしかして・・・・・・」

 息絶えたセンター教の死体を片付けながら、二人は考察を始める。

「・・・いや、そんな訳はないよ。オーヴィルが俺たちを裏切る訳がない。信じてくれ」

「だったら、ノーマッド達の中に敬虔なセンター、もしくはセントラル教の者が居る」

「在り得るのか?そんなことが」

「ノーマッドは来る者拒まず、去る者は追わず。どんな者も受け入れるのさ。・・・ただ、逆にセンター教信者の方がこんな生活はしたくないはずだが」

「・・・情報、か」

「なるほど。確かに、ノーマッドほどこのコロニア全体のことを広く知っている者はいない。ノーマッドがセンター中心へと深く関わらない分、自分達の情報は届きにくく、世界の風俗を知れる格好の情報網って訳か」

「・・・ってなると、朝までのんびりしている場合ではないな。この暗殺の失敗が朝にはバレる。多くの人員が動員されて押し寄せて来るな」

「そうなると、ノーマッド達にも迷惑がかかる」

「・・・行こう」

 レイアとウェルバーの二人は身支度を開始した。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...