131 / 149
Phase XV
Balloon
しおりを挟む
「人が人で無くなる。そんな言い伝えは、下でもあるんでしょ?」
「ああ。基礎として学ぶぐらいにね」
「それはここでも同じ。そしてその原因は一つや二つじゃない。先天的、後天的、物質的、精神的・・・自ら陥る者も他者から落とされる者までいる。要因はなんであれ、そういった者たちをみんなどうしているのか、ね。出来るだけ関わらないようにしたい者が殆ど。誰かがなんとかする、そんな他力本願な姿勢が大半だ」
ライトとサルヒコは、下層のCheaterなどを思い浮かべる。
「でも、家族や周りの人が面倒を見たり、世話をしたりするでしょう?」
ライトはそうは言いながらも、第3や第1で見てきた光景を思い浮かべてしまう。
「・・・そうね。ただ、決して現実ではそうじゃないこともあるし、そしてそうあるべきだ、という無言の圧力や義務感がまた人を狂わすこともあるのよ」
二人は何も返答出来ないでいる。要領を得ない言い回しで且つ、何か思い悩むようなことがありそうな言葉と態度で、自分たちが何を言っても相手の感情部分に食い込んでしまうような、そんな気がしていた。
「教育であれ何らかの世話であれ、それはどうしても上の優位者が下へと手を貸すという縦の構図があって初めて成り立つもの。例えば有識者に対して講義だなんてただの蛇足、釈迦に説法よね。日常が不自由な者への配慮。これは大切だと思う。ただ・・・・・・」
「「・・・ただ??」」
「・・・その重荷を何の支援もなく世話をする側への配慮が全く無いこの世界なんて・・・そんな不条理な世界なんて・・・私は納得が出来ない」
「あなたに、いったい何があったんです?」
「・・・あ、ここよ」
ヨハンナが立ち止まり示すその一室へ部屋の扉は、他の部屋となんら変わりはなかった。ただ違いとしてはその部屋だけは少し厳重に、南京錠をプラス増やされた鍵を追加してありヨハンナはそれを開錠しようとしている。
二人は気になる話の部分で滞り、釈然としない気持ちとなった。
「ここは、あなたが来たら案内するようにとチェバラ氏に言われている部屋なの」
部屋の奥は、上へと昇る階段しか見当たらなかった。
ヨハンナは何も語らず、ただ上へと昇る。ライトとサルヒコもそれに続いた。
階段の先にも部屋らしい空間は無く、そこは上階フロアの側面、鳥葬用の鳥たちの住処なのか下からの侵入を防ぐためか、はたまた景観のためなのかも分からない木々が生い茂げ、中からも外からも殆ど視認が出来ないバルコニーのような空間へと繋がっていた。上階の木々と同じく何のために作られた通路なのか、そしてこのバルコニーも使用目的はヨハンナや上層階の民ですら誰にも分からないでいる。表層界の者である二人には尚更、想像すらできないでいた。
そのバルコニーの先、木々の間には手作り感が強い小さな小屋が作られていて、二人はそこへ案内されたのである。
「とりあえず、二人はここで待機してて。あ。そうそう、ライトさんはこれ、読んで熟知して」
渡されたのは何らかの説明書のような書類だった。
「・・・あの、これは・・・?」「あ、後はあなたは、どうしたらいいのかしらねぇ」
ライトの疑問は完全に無視し、ヨハンナはサルヒコの方へと向き思案している。
「・・・え?」
「あなた、ウェルバーじゃないでしょ?」
「!?・・・なんで分かった?あ、別に隠してるつもりもなかったんだけど、一応に聞いていいか?」
「聞いていた印象、例えば体格や二人の関係とかが全然違うし、何て言うか、言葉の節々に違和感もあった。それに、最近ここで捕まった下層民ってあなたのことでしょ?」
「・・・ああ、そうだ」
「あ、別に報告なんてしないから安心してね。私はここなんて無くなればいいと思っている人だから。捕まってくれたあなたの素性を経て、あなた達の足取りを追わせてもらったからもあるし」
「・・・なるほど、だからこんなにも信用はしてくれている、ってことか」
「そゆこと。ライトさんがそれを把握するまでの間、ここを隠れ蓑にしてて。ちょっと二人じゃ狭いけど。・・・あ、その布の集まりは寝具じゃないから触らないでね。重要な物だから破いたりしちゃだめだから」
ヨハンナは部屋の奥に無造作に敷き詰められているおおきな布の集まりを指挿して言う。
「これは、なんなの??」
「・・・詳細は分からないわ。ただチェバラ氏はこう呼んでいた。『気球』、と」
「ああ。基礎として学ぶぐらいにね」
「それはここでも同じ。そしてその原因は一つや二つじゃない。先天的、後天的、物質的、精神的・・・自ら陥る者も他者から落とされる者までいる。要因はなんであれ、そういった者たちをみんなどうしているのか、ね。出来るだけ関わらないようにしたい者が殆ど。誰かがなんとかする、そんな他力本願な姿勢が大半だ」
ライトとサルヒコは、下層のCheaterなどを思い浮かべる。
「でも、家族や周りの人が面倒を見たり、世話をしたりするでしょう?」
ライトはそうは言いながらも、第3や第1で見てきた光景を思い浮かべてしまう。
「・・・そうね。ただ、決して現実ではそうじゃないこともあるし、そしてそうあるべきだ、という無言の圧力や義務感がまた人を狂わすこともあるのよ」
二人は何も返答出来ないでいる。要領を得ない言い回しで且つ、何か思い悩むようなことがありそうな言葉と態度で、自分たちが何を言っても相手の感情部分に食い込んでしまうような、そんな気がしていた。
「教育であれ何らかの世話であれ、それはどうしても上の優位者が下へと手を貸すという縦の構図があって初めて成り立つもの。例えば有識者に対して講義だなんてただの蛇足、釈迦に説法よね。日常が不自由な者への配慮。これは大切だと思う。ただ・・・・・・」
「「・・・ただ??」」
「・・・その重荷を何の支援もなく世話をする側への配慮が全く無いこの世界なんて・・・そんな不条理な世界なんて・・・私は納得が出来ない」
「あなたに、いったい何があったんです?」
「・・・あ、ここよ」
ヨハンナが立ち止まり示すその一室へ部屋の扉は、他の部屋となんら変わりはなかった。ただ違いとしてはその部屋だけは少し厳重に、南京錠をプラス増やされた鍵を追加してありヨハンナはそれを開錠しようとしている。
二人は気になる話の部分で滞り、釈然としない気持ちとなった。
「ここは、あなたが来たら案内するようにとチェバラ氏に言われている部屋なの」
部屋の奥は、上へと昇る階段しか見当たらなかった。
ヨハンナは何も語らず、ただ上へと昇る。ライトとサルヒコもそれに続いた。
階段の先にも部屋らしい空間は無く、そこは上階フロアの側面、鳥葬用の鳥たちの住処なのか下からの侵入を防ぐためか、はたまた景観のためなのかも分からない木々が生い茂げ、中からも外からも殆ど視認が出来ないバルコニーのような空間へと繋がっていた。上階の木々と同じく何のために作られた通路なのか、そしてこのバルコニーも使用目的はヨハンナや上層階の民ですら誰にも分からないでいる。表層界の者である二人には尚更、想像すらできないでいた。
そのバルコニーの先、木々の間には手作り感が強い小さな小屋が作られていて、二人はそこへ案内されたのである。
「とりあえず、二人はここで待機してて。あ。そうそう、ライトさんはこれ、読んで熟知して」
渡されたのは何らかの説明書のような書類だった。
「・・・あの、これは・・・?」「あ、後はあなたは、どうしたらいいのかしらねぇ」
ライトの疑問は完全に無視し、ヨハンナはサルヒコの方へと向き思案している。
「・・・え?」
「あなた、ウェルバーじゃないでしょ?」
「!?・・・なんで分かった?あ、別に隠してるつもりもなかったんだけど、一応に聞いていいか?」
「聞いていた印象、例えば体格や二人の関係とかが全然違うし、何て言うか、言葉の節々に違和感もあった。それに、最近ここで捕まった下層民ってあなたのことでしょ?」
「・・・ああ、そうだ」
「あ、別に報告なんてしないから安心してね。私はここなんて無くなればいいと思っている人だから。捕まってくれたあなたの素性を経て、あなた達の足取りを追わせてもらったからもあるし」
「・・・なるほど、だからこんなにも信用はしてくれている、ってことか」
「そゆこと。ライトさんがそれを把握するまでの間、ここを隠れ蓑にしてて。ちょっと二人じゃ狭いけど。・・・あ、その布の集まりは寝具じゃないから触らないでね。重要な物だから破いたりしちゃだめだから」
ヨハンナは部屋の奥に無造作に敷き詰められているおおきな布の集まりを指挿して言う。
「これは、なんなの??」
「・・・詳細は分からないわ。ただチェバラ氏はこう呼んでいた。『気球』、と」
2
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる