『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

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Phase XV

Lawless zone

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「ここを・・・いえ、私たちを捨てて下なんかに行ってしまうような奴、父親でもなんでもないわよ!」

 概ね無気力な表情と態度を取ってきたヨハンナが突然、感情的になったことでライトは全身に驚きと緊張が走った。

「ご・・・ごめんなさい」

「あ・・・いえ、こっとこそごめんなさい。・・・まだ、こんな感情があったんだね、私。驚きだわ」

「よかったら、教えてくれませんか?先生のここでの話、あまり聞けてないので知りたいです」

「・・・私の母は、先天的なここでのプローバーみたいなものなの」

「ええ!?」

「チェバラは、どうせ下でも医者やってたんでしょ?ここでも似たようなものよ。患者とばかり関わり、そうして母とも出会ったみたいね」

「ヨハンナさんがおいくつぐらいの時に、先生は下へ降りたんですか?」

「私が物心がつくかどうかぐらいよ。だから顔なんてのも薄っすらでしか覚えてなかったわ」

 ライトはずっと引っかかっていたヨハンナの言い方に、やっと合点がいった。どこかしら他人事というか、自分の実体験ではなく聞いた話のように話していたのはそういうことだったのである。

「テンプルに呼び出されたのも、父親だなんて感覚も認識もなく面会させられて・・・不愉快でしかなかった。評判も良くて、きっといい人だったんだろうけれど、それは医者としての外向けだけだったんじゃない?少なくとも、私たちはそう感じて・・・いえ、私だけ、か」

 なんだか悲しい顔というよりかは、もっと深くて辛い、絶望の淵に立って抗うのを諦めたかような印象を、ライトはヨハンナの表情から読み取って何も言えなくなっていた。

「下のプローバーってのはあなた達から聞いたので調べてみたけれど、非常に攻撃的でやっかいみたいね。ここのプローバーの大半は大人しいことが多い。中には攻撃的な人もいてるけれど、それは後天的にストレスや感情の行先が分からない状態の・・・そうね、云わばフラストレーションが溜まった爆発的なことが主だわね。それが放置され教育がされず思うがままにしていると、普通・・・って表現が正しいかどうかも分からないけれど、普通の殺人衝動が全能感や優越感に浸るとその快感がもう癖になってしまった者が、繰り返しプローバーへと定義付けられてしまう。そこに正気も狂気も関係ないわ。きっと。規則やルール、価値観や文化が無い世界では、人間も獣と変わりはなくなるの」

 ライトは第1での惨劇を目の当たりにしていたので、ヨハンナの言葉の正しさを痛感してしまっていた。

「ここではそういった事態を防ぐ意味でも、大人しいプローバーでもちゃんとした環境にて管理、監視することを義務付けられることになった。当然その使命は主に家族、親族の役割となる。まぁ、子育ての義務が親にあるのと同じようなものだから仕方がないわよね。で、チェバラが消えてからというもの母の面倒は叔母が、まだ幼かった私も含めて世話をしてくれた。しかし叔母も私が10歳ぐらいの頃に心臓が悪くなり死んでしまったの・・・それ以降は、私が・・・・・・」

 ライトはまだ、ヨハンナの心境は分からないでいる。

「ここの上層部もそういった事案が増えだしたのでみんなで思案し、プローバーはプローバー同士で集めて新たにエリアを設置することなった。管理者を選任し、一括管理、ってやつね。一定数の者は家族が自主希望し、また一定の者は専門家や研究ためにと志願した。そうすると、どうなると思う?」

「・・・いや、すいません、全く分かんないです」

「ここからは完全に主観、私の意見よ。彼らプローバーもその程度があれば種類もある。肉体的な者から精神的な者まで。認識力もそれぞれで理解力もそれぞれ。だから当然のように様々な権利もある。例えば・・・恋愛や結婚をして子供を生む権利だって当然にあるよね」

「ああ、はい、そうだと思います」

「でも、それは一定数の『自制心』や多くの感情や衝動をコントロール出来てこその‟自由”であり権利であると、私は思う。そういった操作が不可能なら・・・そこはもう無法地帯、やりたい放題な世界よ」

「やりたい・・・放題、ですか」

「私の母はその後、そのエリアで自由となった。・・・あ、勿論ここの人もそこまでバカじゃなかったから、それなりに‟程度”で分けたんだけどそれだけが正解というわけにはいかなかった」

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