『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

文字の大きさ
135 / 149
Phase XVI

Central floor talk

しおりを挟む
「すごく、子沢山なんですね。下でもそんな家族は珍しくはないですよ」

「・・・親がちゃんと子育てをしてくれるんなら、そんな悠長なことでいいのかもね」

「え?」

「とにかく、私は当事者だけが配慮されその周りの人間に全ての責任を押し付ける、そんな世の中が憎いのよ。権力を振りかざす横暴な強者も、権利を主張するだけの怠惰な弱者も、どっちも同じ属性の人種だわ。それに巻き込まれ挟まれてしまう人こそが、真に同情の余地が与えられて当然なのに・・・こんな世の中なんて、消えて無くなってしまえばいい」

「・・・ヨハンナさんの苦労は、きっと僕らには芯に理解することは難しいかもしれません。想像は出来るけど多分、想像以上の苦労と想いがそこにはあってやり切れない程の感情や気持ちが渦巻いていることでしょう・・・ただ・・・・・・」

「・・・ただ?」

「先生の、チャバラ先生の件だけは言わせて下さい。先生がなぜ僕らの元から去ってまたここ上層階に戻ったのか、分かった気がします。・・・多分ヨハンナさん、あなたに会いに来たんです。どこからか誰からかに聞いたのでしょう。あなたの今の存在を・・・そして、僕もこうして、まだまだ未熟だとは思うけど何とか独り立ちっていうか、大人の人と同じように考えて自分の気持ちや何かを思い考えれるようには成長しました。先生にとっては、下での罪はもう償われたと考えたのでしょう。後は・・・・・・」

「だからって何?!あいつが、あいつさえ下に行かなければ!私は!私は・・・・・・」

 ヨハンナは怒りと悔しさだけではなく、寂しさや切なさを込めた涙を流す。

「きっとヨハンナさん・・・先生と会った時もそうやって自分の気持ちを名一杯、一生懸命にぶつけたんじゃないですか?それまでの十何年分の苦労や、寂しさを、まるで初めて甘えるように・・・それは決して悪いってことを言いたいんじゃありません。責める意味ではないですよ。それで良いと思います。存分に甘えるべきです。恐らく、ヨハンナさんは誰かに甘えるなんてことは出来ずに、ずっと頑張ってきたんでしょう。だからこそ、先生は何も言わなかった。そんな権利が、あなたにはあると思います。だから・・・多分ですが、『ごめん』とか『愛してる』とか、先生はそんなことしか言わなかったんじゃないですか?」

「なんで・・・分かるのよ」

「僕の実の両親は両方とも、下の争いで死にました。僕にとっても先生は父親のような存在です。数年前まで一緒に暮らしてたんですから。誰よりも先生のことを知っているつもりなんで・・・だから、少なくとも先生は悪い人ではありません。それだけは言えます。ここへ来てあなたに会い、そしてあなたの話を沢山聞きに。それは例え罵倒であれ、甘えであれなんでもよかったんです。今のあなたの悩みも、真摯に聞いたでしょう。そして、先生が今ここに居ない理由も、きっとあなたの為に・・・・・・」

「・・・概ね、正解よ。私はあの人のこと、全然知らない、何一つ・・・何が好きだったのかも、何にも・・・・・・」

 ライトはヨハンナに、チェバラの話を何時間も飽きることなく続けた。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...