137 / 149
Phase XVI
Contingency
しおりを挟む
ライトがのんびりとヨハンナが持ってきてくれた食事を堪能していると、突然部屋中の照明が赤く変化した。
松明や篝火の照明しかない下界とは違い、一部の上層階では炎の明かり以外にもランタンのようにガラス容器から発生される明かりを使っている。その仕組みは電気を使うとライトは聞いて、その構造にも興味はあったがその知的好奇心はなんとか誤魔化しながら『気球』の完成に勤しんできたのだった。
「え?!急に・・・どうしたんですか?これは」
「緊急事態みたいね。どこかで何かが起きた・・・例えば過去の判例では、大規模なクーデター、とか・・・・・・」
「ええ?!まさか、こんな時に・・・もしかして、下のどこかのコロニーでプローバーに侵略されて、上へと押し寄せているんじゃあ・・・・・・」
「・・・見てくるわ。ちょっと待ってて」
そう言ってヨハンナは足早に去って行った。 ライトは嫌な予感がし、完成している気球が置かれている外部室へと向かった。
ライトが気球を点検しているぐらいの間で、ヨハンナは戻ってきた。
「大変!第8監獄エリアの下から、あんたが言ってた奴らがここへ上がってきたみたい!」
「ええ?!くそっ!下の皆は間に合わなかったのか・・・・・・」
「まだ分からないわよ。横の侵略が上手くいかずに滞ったから、上へと来たかもしれない。とにかく、逃げるか隠れるかした方が良さそうだわ」
「そうだね。どこかいい場所、知ってますか?」
「・・・隠れるのならここが一番、最適ってことになるわね」
「ここ・・・ですか。しかし、ここの、上層民のみんなは?!」
「あなたはここでそのまま隠れてて。最悪は・・・分かっているわね?」
「え、ちょっと待って、ヨハンナさんは?!」
「こんな所はこのまま、なんなら潰れてしまったらいいわ。でも、一応に数少ない友達は居るからね。妹たちも。その人たちの所へ行って手伝ってくる。あ、後は一応にサルヒコも探さなきゃだしね。ご両親を探してる彼を見つけたらここに連れてくるから」
「僕も行きますよ!」
「今まで通り侵入者のあんたらを引き連れるよりも、私一人のが動きやすいのは変わらないわ。大丈夫、任せて。あなたはあの気球・・・えっと、あれに名前を付けたんだっけ。名前、なんだっけ?」
「モンゴルフィエ号です」
「そう、それ。下で仲良くしてた三人の子供の名前から付けたのよね。『気球・モンゴルフィエ』を念のため直ぐに動かせるようにしてて。もし、この世界がもう壊滅に近ければ、三人でここから脱出してしまおう」
「そか・・・了解!気を付けて」
「ええ、ありがとう」
ライトは急いで外室へ行き、気球の球皮部分を広げ円滑に上昇するためのフックに紐を通していく。
マニュアルには大人数での作業にて球皮内部に空気を入れて膨らませ、内部空気が熱せられるまで待機する必要があると書いていた。しかし、ここではそんな人員は用意できないため外室周辺の木々にフックを作り、予め球皮を持ち上げ広げられるようにしていた。これでスロートから安易に炎による熱を送り込めば後は全体が上がるのを待ち、後は各フックにスリップノット(引き解け結び)で結んでおいた紐を解けば上昇し浮かび上がる寸法となっていた。
人が乗り入れる部分の頭上、スロート部分には火力を調整出来るように鍛冶屋の鍛造炉に似た構造の暖炉を作っている。
炭も大量に下層階から調達してあり、下部から上部にかけて開けてある空気溝の調整と炭の量で熱の温度調整をし、気球の上下操作を可能とする。
その球皮と炭を燃やす作業をしているライトを、ヨハンナは悲しい眼差しを送ってから、二人のアジトの扉を閉めた。
松明や篝火の照明しかない下界とは違い、一部の上層階では炎の明かり以外にもランタンのようにガラス容器から発生される明かりを使っている。その仕組みは電気を使うとライトは聞いて、その構造にも興味はあったがその知的好奇心はなんとか誤魔化しながら『気球』の完成に勤しんできたのだった。
「え?!急に・・・どうしたんですか?これは」
「緊急事態みたいね。どこかで何かが起きた・・・例えば過去の判例では、大規模なクーデター、とか・・・・・・」
「ええ?!まさか、こんな時に・・・もしかして、下のどこかのコロニーでプローバーに侵略されて、上へと押し寄せているんじゃあ・・・・・・」
「・・・見てくるわ。ちょっと待ってて」
そう言ってヨハンナは足早に去って行った。 ライトは嫌な予感がし、完成している気球が置かれている外部室へと向かった。
ライトが気球を点検しているぐらいの間で、ヨハンナは戻ってきた。
「大変!第8監獄エリアの下から、あんたが言ってた奴らがここへ上がってきたみたい!」
「ええ?!くそっ!下の皆は間に合わなかったのか・・・・・・」
「まだ分からないわよ。横の侵略が上手くいかずに滞ったから、上へと来たかもしれない。とにかく、逃げるか隠れるかした方が良さそうだわ」
「そうだね。どこかいい場所、知ってますか?」
「・・・隠れるのならここが一番、最適ってことになるわね」
「ここ・・・ですか。しかし、ここの、上層民のみんなは?!」
「あなたはここでそのまま隠れてて。最悪は・・・分かっているわね?」
「え、ちょっと待って、ヨハンナさんは?!」
「こんな所はこのまま、なんなら潰れてしまったらいいわ。でも、一応に数少ない友達は居るからね。妹たちも。その人たちの所へ行って手伝ってくる。あ、後は一応にサルヒコも探さなきゃだしね。ご両親を探してる彼を見つけたらここに連れてくるから」
「僕も行きますよ!」
「今まで通り侵入者のあんたらを引き連れるよりも、私一人のが動きやすいのは変わらないわ。大丈夫、任せて。あなたはあの気球・・・えっと、あれに名前を付けたんだっけ。名前、なんだっけ?」
「モンゴルフィエ号です」
「そう、それ。下で仲良くしてた三人の子供の名前から付けたのよね。『気球・モンゴルフィエ』を念のため直ぐに動かせるようにしてて。もし、この世界がもう壊滅に近ければ、三人でここから脱出してしまおう」
「そか・・・了解!気を付けて」
「ええ、ありがとう」
ライトは急いで外室へ行き、気球の球皮部分を広げ円滑に上昇するためのフックに紐を通していく。
マニュアルには大人数での作業にて球皮内部に空気を入れて膨らませ、内部空気が熱せられるまで待機する必要があると書いていた。しかし、ここではそんな人員は用意できないため外室周辺の木々にフックを作り、予め球皮を持ち上げ広げられるようにしていた。これでスロートから安易に炎による熱を送り込めば後は全体が上がるのを待ち、後は各フックにスリップノット(引き解け結び)で結んでおいた紐を解けば上昇し浮かび上がる寸法となっていた。
人が乗り入れる部分の頭上、スロート部分には火力を調整出来るように鍛冶屋の鍛造炉に似た構造の暖炉を作っている。
炭も大量に下層階から調達してあり、下部から上部にかけて開けてある空気溝の調整と炭の量で熱の温度調整をし、気球の上下操作を可能とする。
その球皮と炭を燃やす作業をしているライトを、ヨハンナは悲しい眼差しを送ってから、二人のアジトの扉を閉めた。
2
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる