『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

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Phase XVI

Having hope for the future

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 ヨハンナは上層階中心部の牢屋が並ぶエリアの誰も入っていない一室の監房で、蹲るサルヒコを見つけた。

「・・・ちょっとあんた、そこで何してんのよ」

「・・・ああ・・・いや、なんでもない」

「どうしたの??・・・とにかく、あんたも早く逃げるか隠れるかしなきゃ危ないわよ。どうやら下からあなた達が言っていたプローバーってのが大量にここへ侵入し押し寄せてきたらしいの。ちょっとした修羅場になると考えられるわ」

「ああ・・・そう、それ・・・俺のせいなんだぁ」

「え?」

「俺が・・・下へ行ったせいで、あいつらが・・・・・・」

「・・・なんだかわかんないけど、とにかく付いて来なさい」

 ヨハンナはうな垂れるサルヒコの腕を掴み引き上げ、手を引いて無理矢理に引っ張り出した。ヨハンナは聞こえるかどうか微妙な、小さな声で「ナイス、良い感じだわ」と呟いた。


 上層階ではこういった不測の事態への対策として、慰霊や食堂のような幾つかある大広間の一室に保存食を蓄えた隠れシェルターのような場所を大昔から設定していた。
 その部屋自体が一部の人間、多くはゲート教の上層部の人間や秘密結社であるファティマ正教の者とその家族から優先的に避難が出来る制度になっている。ヨハンナは現在のその職務と、そして家系からそのリストに入っていて自身が個人的に人として正しいと認めた友人を家族と偽り、そこへ誘導しようとしていた。

「サル!あんた、下へ戻りたい?それとも、ここに残るの?急ぎだから、早く決めてちょうだい」

「・・・・・・」

 ヨハンナは左右に分かれる分岐の道で立ち止まる。

「いい?落ち込んでる理由なんてなんだかわからないけれど、この事態は遅かれ早かれなの。あなた達がここへ来ようが来てなかろうが、きっとこの世界の崩壊は訪れた・・・私は、これを予想し、そして望んでいたことだしね。・・・自責に駆られようがなんだろうが、これは人類全員の罪よ。あなた達だけの問題じゃない。全人類が自責の念を持たなければならない。個人であれ組織単位であれ、自分さえ、と考える愚か者どもの怠慢と傲慢がもたらせた人類究極の大罪・・・自分が生きる残酷な現実、‟今”から逃れる為だけの薬物、そしてそれは宗教も同じだわ。自身を正当化させるためだけのその思想により、次世代の子供やその後、周囲のことなんて何一つ考えもしないで、自分可愛さに救いを求め他者を、家族すら救おうとしない者達。・・・施し?布教??それらも自分が救われるための行動原理でしょ?そのような、現実からかけ離れたモノのためじゃなく、目の前とそして間近に迫る未来に確実にそして実際に存在している人たちへ目を向け、耳を傾け、手を差し伸べなきゃならないの。今だけ、未来だけ、過去だけじゃダメなのよ。わかる?!空想だとか被害妄想だとか、勝手な自虐な妄想に走ってないで、今あなたが出来ることを最大限に考えて行動しなさい!」

「あ・・・ああ・・・・・・」

「下に大切な人はいる?居るならそこへ行ってあげなさい。それともまだ見ぬ、その母の影を追うためにここに残る??あなたにとって誰が、どっちが大切なのか、心に問いかけなさい。もしかすると、本当に世界の終焉かもしれないんだから。あなたが後悔しない選択肢を、しっかりと考えなさい」

「・・・ここに・・・ここに、残る」

「・・・そう。じゃ、避難場所へ行くかライトの元へと帰るかね。例の気球の準備は万全よ。ライトにいつでも飛び立てるよう準備しとけと言っといた。つまり、逃げるか隠れるか、どっちがいい?」

「これは・・・俺のせいでもあるかもしれないんだ。あんたの言う通り、このまま放っとけばきっと後悔する。だから俺はここに残る。下だろうが外だろうが、逃げることはしたくない。・・・下の、第2の奴らはそんなに軟じゃない。屈強な漢ばかりだ。きっと、大丈夫。逆に俺なんかが戻ったって、そんな大差ないさ。・・・それと、もしかしてその避難所に母が居るかもしれない。そんな、ちょっとした望みにも賭けたい。最後かもしれない。だからこそね。その点は、あんたの言葉で目が覚めたよ。目の前の大切な人を、そしてその後のことを考える。そうだ。俺を見捨てたという母の記憶のままだと、このまま恨んでしまう。これは正にヨハンナ・・・君と同じく、後悔したくないからね。これは自分本位かもしれないが、少し先の未来を考えてみた俺の結果だよ」

「分かったわ。じゃ、行きましょう。ちょっとその前に何人かと一緒に行くから、付いてきて」

 ヨハンナとサルヒコは、一切の迷いは無くそれぞれの希望ある未来へと歩むことを心に決めた。
 しかしその道は全く逆の結果と思想ではあるが、それぞれに正しいと信じる想いを胸に強さへと同調していったのである。
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