139 / 149
Phase XVI
Having hope for the future
しおりを挟む
ヨハンナは上層階中心部の牢屋が並ぶエリアの誰も入っていない一室の監房で、蹲るサルヒコを見つけた。
「・・・ちょっとあんた、そこで何してんのよ」
「・・・ああ・・・いや、なんでもない」
「どうしたの??・・・とにかく、あんたも早く逃げるか隠れるかしなきゃ危ないわよ。どうやら下からあなた達が言っていたプローバーってのが大量にここへ侵入し押し寄せてきたらしいの。ちょっとした修羅場になると考えられるわ」
「ああ・・・そう、それ・・・俺のせいなんだぁ」
「え?」
「俺が・・・下へ行ったせいで、あいつらが・・・・・・」
「・・・なんだかわかんないけど、とにかく付いて来なさい」
ヨハンナはうな垂れるサルヒコの腕を掴み引き上げ、手を引いて無理矢理に引っ張り出した。ヨハンナは聞こえるかどうか微妙な、小さな声で「ナイス、良い感じだわ」と呟いた。
上層階ではこういった不測の事態への対策として、慰霊や食堂のような幾つかある大広間の一室に保存食を蓄えた隠れシェルターのような場所を大昔から設定していた。
その部屋自体が一部の人間、多くはゲート教の上層部の人間や秘密結社であるファティマ正教の者とその家族から優先的に避難が出来る制度になっている。ヨハンナは現在のその職務と、そして家系からそのリストに入っていて自身が個人的に人として正しいと認めた友人を家族と偽り、そこへ誘導しようとしていた。
「サル!あんた、下へ戻りたい?それとも、ここに残るの?急ぎだから、早く決めてちょうだい」
「・・・・・・」
ヨハンナは左右に分かれる分岐の道で立ち止まる。
「いい?落ち込んでる理由なんてなんだかわからないけれど、この事態は遅かれ早かれなの。あなた達がここへ来ようが来てなかろうが、きっとこの世界の崩壊は訪れた・・・私は、これを予想し、そして望んでいたことだしね。・・・自責に駆られようがなんだろうが、これは人類全員の罪よ。あなた達だけの問題じゃない。全人類が自責の念を持たなければならない。個人であれ組織単位であれ、自分さえ、自分達さえよければ他はどうでもいいと考える愚か者どもの怠慢と傲慢がもたらせた人類究極の大罪・・・自分が生きる残酷な現実、‟今”から逃れる為だけの薬物、そしてそれは宗教も同じだわ。自身を正当化させるためだけのその思想により、次世代の子供やその後、周囲のことなんて何一つ考えもしないで、自分可愛さに救いを求め他者を、家族すら救おうとしない者達。・・・施し?布教??それらも自分が救われるための行動原理でしょ?そのような、現実からかけ離れたモノのためじゃなく、目の前とそして間近に迫る未来に確実にそして実際に存在している人たちへ目を向け、耳を傾け、手を差し伸べなきゃならないの。今だけ、未来だけ、過去だけじゃダメなのよ。わかる?!空想だとか被害妄想だとか、勝手な自虐な妄想に走ってないで、今あなたが出来ることを最大限に考えて行動しなさい!」
「あ・・・ああ・・・・・・」
「下に大切な人はいる?居るならそこへ行ってあげなさい。それともまだ見ぬ、その母の影を追うためにここに残る??あなたにとって誰が、どっちが大切なのか、心に問いかけなさい。もしかすると、本当に世界の終焉かもしれないんだから。あなたが後悔しない選択肢を、しっかりと考えなさい」
「・・・ここに・・・ここに、残る」
「・・・そう。じゃ、避難場所へ行くかライトの元へと帰るかね。例の気球の準備は万全よ。ライトにいつでも飛び立てるよう準備しとけと言っといた。つまり、逃げるか隠れるか、どっちがいい?」
「これは・・・俺のせいでもあるかもしれないんだ。あんたの言う通り、このまま放っとけばきっと後悔する。だから俺はここに残る。下だろうが外だろうが、逃げることはしたくない。・・・下の、第2の奴らはそんなに軟じゃない。屈強な漢ばかりだ。きっと、大丈夫。逆に俺なんかが戻ったって、そんな大差ないさ。・・・それと、もしかしてその避難所に母が居るかもしれない。そんな、ちょっとした望みにも賭けたい。最後かもしれない。だからこそね。その点は、あんたの言葉で目が覚めたよ。目の前の大切な人を、そしてその後のことを考える。そうだ。俺を見捨てたという母の記憶のままだと、このまま恨んでしまう。これは正にヨハンナ・・・君と同じく、後悔したくないからね。これは自分本位かもしれないが、少し先の未来を考えてみた俺の結果だよ」
「分かったわ。じゃ、行きましょう。ちょっとその前に何人かと一緒に行くから、付いてきて」
ヨハンナとサルヒコは、一切の迷いは無くそれぞれの希望ある未来へと歩むことを心に決めた。
しかしその道は全く逆の結果と思想ではあるが、それぞれに正しいと信じる想いを胸に強さへと同調していったのである。
「・・・ちょっとあんた、そこで何してんのよ」
「・・・ああ・・・いや、なんでもない」
「どうしたの??・・・とにかく、あんたも早く逃げるか隠れるかしなきゃ危ないわよ。どうやら下からあなた達が言っていたプローバーってのが大量にここへ侵入し押し寄せてきたらしいの。ちょっとした修羅場になると考えられるわ」
「ああ・・・そう、それ・・・俺のせいなんだぁ」
「え?」
「俺が・・・下へ行ったせいで、あいつらが・・・・・・」
「・・・なんだかわかんないけど、とにかく付いて来なさい」
ヨハンナはうな垂れるサルヒコの腕を掴み引き上げ、手を引いて無理矢理に引っ張り出した。ヨハンナは聞こえるかどうか微妙な、小さな声で「ナイス、良い感じだわ」と呟いた。
上層階ではこういった不測の事態への対策として、慰霊や食堂のような幾つかある大広間の一室に保存食を蓄えた隠れシェルターのような場所を大昔から設定していた。
その部屋自体が一部の人間、多くはゲート教の上層部の人間や秘密結社であるファティマ正教の者とその家族から優先的に避難が出来る制度になっている。ヨハンナは現在のその職務と、そして家系からそのリストに入っていて自身が個人的に人として正しいと認めた友人を家族と偽り、そこへ誘導しようとしていた。
「サル!あんた、下へ戻りたい?それとも、ここに残るの?急ぎだから、早く決めてちょうだい」
「・・・・・・」
ヨハンナは左右に分かれる分岐の道で立ち止まる。
「いい?落ち込んでる理由なんてなんだかわからないけれど、この事態は遅かれ早かれなの。あなた達がここへ来ようが来てなかろうが、きっとこの世界の崩壊は訪れた・・・私は、これを予想し、そして望んでいたことだしね。・・・自責に駆られようがなんだろうが、これは人類全員の罪よ。あなた達だけの問題じゃない。全人類が自責の念を持たなければならない。個人であれ組織単位であれ、自分さえ、自分達さえよければ他はどうでもいいと考える愚か者どもの怠慢と傲慢がもたらせた人類究極の大罪・・・自分が生きる残酷な現実、‟今”から逃れる為だけの薬物、そしてそれは宗教も同じだわ。自身を正当化させるためだけのその思想により、次世代の子供やその後、周囲のことなんて何一つ考えもしないで、自分可愛さに救いを求め他者を、家族すら救おうとしない者達。・・・施し?布教??それらも自分が救われるための行動原理でしょ?そのような、現実からかけ離れたモノのためじゃなく、目の前とそして間近に迫る未来に確実にそして実際に存在している人たちへ目を向け、耳を傾け、手を差し伸べなきゃならないの。今だけ、未来だけ、過去だけじゃダメなのよ。わかる?!空想だとか被害妄想だとか、勝手な自虐な妄想に走ってないで、今あなたが出来ることを最大限に考えて行動しなさい!」
「あ・・・ああ・・・・・・」
「下に大切な人はいる?居るならそこへ行ってあげなさい。それともまだ見ぬ、その母の影を追うためにここに残る??あなたにとって誰が、どっちが大切なのか、心に問いかけなさい。もしかすると、本当に世界の終焉かもしれないんだから。あなたが後悔しない選択肢を、しっかりと考えなさい」
「・・・ここに・・・ここに、残る」
「・・・そう。じゃ、避難場所へ行くかライトの元へと帰るかね。例の気球の準備は万全よ。ライトにいつでも飛び立てるよう準備しとけと言っといた。つまり、逃げるか隠れるか、どっちがいい?」
「これは・・・俺のせいでもあるかもしれないんだ。あんたの言う通り、このまま放っとけばきっと後悔する。だから俺はここに残る。下だろうが外だろうが、逃げることはしたくない。・・・下の、第2の奴らはそんなに軟じゃない。屈強な漢ばかりだ。きっと、大丈夫。逆に俺なんかが戻ったって、そんな大差ないさ。・・・それと、もしかしてその避難所に母が居るかもしれない。そんな、ちょっとした望みにも賭けたい。最後かもしれない。だからこそね。その点は、あんたの言葉で目が覚めたよ。目の前の大切な人を、そしてその後のことを考える。そうだ。俺を見捨てたという母の記憶のままだと、このまま恨んでしまう。これは正にヨハンナ・・・君と同じく、後悔したくないからね。これは自分本位かもしれないが、少し先の未来を考えてみた俺の結果だよ」
「分かったわ。じゃ、行きましょう。ちょっとその前に何人かと一緒に行くから、付いてきて」
ヨハンナとサルヒコは、一切の迷いは無くそれぞれの希望ある未来へと歩むことを心に決めた。
しかしその道は全く逆の結果と思想ではあるが、それぞれに正しいと信じる想いを胸に強さへと同調していったのである。
2
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる