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Phase XVI
Sacrifice
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ライトは『気球・モンゴルフィエ号』の準備を終え、旅路道中に考え得る必要な物の想像を働かせ、多くのシミュレーションを頭の中で行いながら確認として操作方法のマニュアルにもう一度目を通していた。
炭はひび割れや乾燥状態の良い物を厳選し、食料は少なく高カロリーな物を集め、水は外気と気球内部の温度差で空気中の湿気を容器に付着させ水滴を集められる物もマニュアルに書いてあり、それも作っておいた。が、実際に水の確保が可能かの実験もしなくてはならず、執り行おうとしたその時、勢いよく内室扉が開かれそしてバタンッ!と閉じられる音がした。尋常ではない雰囲気がしたため、ライトは直ぐに外室から内室へと急ぐ。
するとそこには背中で扉を必死に抑えているヨハンナが汗に塗れ、決死な表情をしている。
「!?どうしたんですか!まさか!!」
ライトはヨハンナからの回答を聞くまでもなく抑える扉を手伝う。すると扉の向こうからは異質で禍々しい呻きとも唸りとも言えぬ、獣とも違う奇声が聞こえてくる。これに似た声をライトは第1で、トラウマのように聞いたことがあったので直ぐ様に察しが付いた。
「まさかもう!・・・こんな所まで!!」
「ごめんなさい・・・はぁ、はぁ、ああ、ここまで追い込まれちゃった」
「こうなったらもう、逃げるしかありませんね!ここは僕は押さえておきますからヨハンナさん、あの、木炭の入った袋や机をここへ!」
「OK!分かった!!」
ヨハンナは言われた物と、そして重くて扉の支えになりそうな物を次々と運ぶ。
なんとか大丈夫そうな所でライトも扉から離れ、二人が押さえる扉から自由になった。
ドンドンドン!「ぐるるるる」「ぎゃぁぁ!」「ぐあぁぁ!」
ギシギリ!ガリガリガリ!ドン! バキッ!!
木で作られた扉が何人かのプローバーからの外圧により、壊されかけている。
「急いで!」
ライトはモンゴルフィエ号へと戻り出発の、離陸の準備を開始した。
既に暖炉に火種は着火していて、後は火を大きくし気球内部を一気に温めるだけである。
「ヨハンナさん!早く!!」
ライトが暖炉に空気を送るレバーを動かしながらゴンドラから外室を見下ろすと、ヨハンナはまだ上がって来ない。内室の扉を一心に見つめている。
「・・・ダメ、間に合わない」
ヨハンナは扉自体の破壊状態と、二人でそのまま気球に乗り浮かぶまでの時間を見越していた。
バキャ!!
バキバキバキッ!!
まるでヨハンナのその予想を裏付けるかのように木製の扉は壊れ、部屋の外からどんどんと木片として扉から削がれていく。
瞬く間にプローバーの狂える者が上半身を隙間から捻じ込み、つっかえさせている家具や麻袋を掴んでは投げていく。
「う・・・うぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁ!!」
ヨハンナは自分の命そのものを振り切るかのようにして物置の引き戸の一部を外し、それを盾のようにして戸口へと突っ込んだ。
上半身を乗り出していたゴーマッドは壁とヨハンナが持つ引き戸扉に挟まれるが、負けじと暴れヨハンナを掴もうと腕を伸ばす。
「ヨハンナさん!!」
ライトは反射的にヨハンナを手伝おうとするが
「ダメ!来ないで!!あなたは行きなさい!」
「何を言ってるんです!」
ライトはゴンドラから降りてヨハンナの元へ行こうとする。すると
「チェバラが・・・私たちの父が外で待っている!」
ライトはその言葉で足を止めた。
「私は、いいの。最初からこの世界と心中するつもりだった・・・世界の終わりを願い、企み、そしてそうなるように仕向けていった。なのに自分だけ助かるなんて、そんな都合のいいようなクズじゃないわ。願いが叶ったの・・・十分満足よ」
「ウソだ!先生の、お父さんとの話をしていたあなたはきっと・・・また、お父さんに会いたいはずだ!僕らと同じように」
「・・・ふふふ、そうね・・・会って、この手で殺したかったかもね」
「!?!?」
「実際の私の親なんて、親とは言えなかった。だから、憧れてた。普通に遊んだり、話したり・・・そんな夢を持っていた時期もあったわ。でも、もういいの。弟妹たちと、後ついでにサルヒコも安全な所へ連れて行ったわ。でもね、母と義父は放ったわ。こんな時にも関わらず、いつものように子作りに励んでた。ほんと、どうしようもないのよ。・・・だからって、そうやって人の命に優劣を付ける私は善人でもなんでもないわ。『防安室』へ入る人を選別する役人たちとなんら変わりはしない。私もクソみたいなここの住人。共に滅び、共に死人へと成り下がるべきなの。あなた達とは違う、正に悪魔なの」
「何言ってるんですか!?」
「うるさい!いいから聞きなさい!!・・・チェバラは恐らく、この事態も予測してたはず。それを知りまた一人で逃げ出した・・・私たちをまた置いてって、ね。そんな人間にまた会ったら、私はもうどうするか分からないのも事実よ。そしてその真偽なんて、もうどうでもいい。あなたはこんな私と一緒に外の世界へと、そしてあなたから聞いてきたこの数日のチェバラとの話を聞くに、大切な親に会わせられるっていうの?もしかして、あなたの目の前でチェバラを殺すかもしれないわ」
「そ、そんな・・・・・・」
「分かった?だから、あなた一人で行きなさい。そして外の世界で、父と共に・・・・・・」
ヨハンナは押さえていた扉を離し、足元に転がっているゴーマッドが壊し剥がした木片を掴みそれをプローバーの喉元に突き刺した。
「ギイヤァァァァァ!!」「ライト!行って!」
バキバキバキ!!
扉はほぼ完全に壊され、続々と彷徨う者がふらふらと入り込んでくる。それに対峙するようにヨハンナが木片で対応するが、痛みを諸共しないワンダラーは一撃を胸に受けるがそのままヨハンナに襲い掛かり、あっという間に何人もがハイエナのように群がりライトからはヨハンナの姿が消える。
ライトはその光景を見るに絶えず、目に涙を浮かべながらゴンドラへと戻り作業を再開した・・・・・・
炭はひび割れや乾燥状態の良い物を厳選し、食料は少なく高カロリーな物を集め、水は外気と気球内部の温度差で空気中の湿気を容器に付着させ水滴を集められる物もマニュアルに書いてあり、それも作っておいた。が、実際に水の確保が可能かの実験もしなくてはならず、執り行おうとしたその時、勢いよく内室扉が開かれそしてバタンッ!と閉じられる音がした。尋常ではない雰囲気がしたため、ライトは直ぐに外室から内室へと急ぐ。
するとそこには背中で扉を必死に抑えているヨハンナが汗に塗れ、決死な表情をしている。
「!?どうしたんですか!まさか!!」
ライトはヨハンナからの回答を聞くまでもなく抑える扉を手伝う。すると扉の向こうからは異質で禍々しい呻きとも唸りとも言えぬ、獣とも違う奇声が聞こえてくる。これに似た声をライトは第1で、トラウマのように聞いたことがあったので直ぐ様に察しが付いた。
「まさかもう!・・・こんな所まで!!」
「ごめんなさい・・・はぁ、はぁ、ああ、ここまで追い込まれちゃった」
「こうなったらもう、逃げるしかありませんね!ここは僕は押さえておきますからヨハンナさん、あの、木炭の入った袋や机をここへ!」
「OK!分かった!!」
ヨハンナは言われた物と、そして重くて扉の支えになりそうな物を次々と運ぶ。
なんとか大丈夫そうな所でライトも扉から離れ、二人が押さえる扉から自由になった。
ドンドンドン!「ぐるるるる」「ぎゃぁぁ!」「ぐあぁぁ!」
ギシギリ!ガリガリガリ!ドン! バキッ!!
木で作られた扉が何人かのプローバーからの外圧により、壊されかけている。
「急いで!」
ライトはモンゴルフィエ号へと戻り出発の、離陸の準備を開始した。
既に暖炉に火種は着火していて、後は火を大きくし気球内部を一気に温めるだけである。
「ヨハンナさん!早く!!」
ライトが暖炉に空気を送るレバーを動かしながらゴンドラから外室を見下ろすと、ヨハンナはまだ上がって来ない。内室の扉を一心に見つめている。
「・・・ダメ、間に合わない」
ヨハンナは扉自体の破壊状態と、二人でそのまま気球に乗り浮かぶまでの時間を見越していた。
バキャ!!
バキバキバキッ!!
まるでヨハンナのその予想を裏付けるかのように木製の扉は壊れ、部屋の外からどんどんと木片として扉から削がれていく。
瞬く間にプローバーの狂える者が上半身を隙間から捻じ込み、つっかえさせている家具や麻袋を掴んでは投げていく。
「う・・・うぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁ!!」
ヨハンナは自分の命そのものを振り切るかのようにして物置の引き戸の一部を外し、それを盾のようにして戸口へと突っ込んだ。
上半身を乗り出していたゴーマッドは壁とヨハンナが持つ引き戸扉に挟まれるが、負けじと暴れヨハンナを掴もうと腕を伸ばす。
「ヨハンナさん!!」
ライトは反射的にヨハンナを手伝おうとするが
「ダメ!来ないで!!あなたは行きなさい!」
「何を言ってるんです!」
ライトはゴンドラから降りてヨハンナの元へ行こうとする。すると
「チェバラが・・・私たちの父が外で待っている!」
ライトはその言葉で足を止めた。
「私は、いいの。最初からこの世界と心中するつもりだった・・・世界の終わりを願い、企み、そしてそうなるように仕向けていった。なのに自分だけ助かるなんて、そんな都合のいいようなクズじゃないわ。願いが叶ったの・・・十分満足よ」
「ウソだ!先生の、お父さんとの話をしていたあなたはきっと・・・また、お父さんに会いたいはずだ!僕らと同じように」
「・・・ふふふ、そうね・・・会って、この手で殺したかったかもね」
「!?!?」
「実際の私の親なんて、親とは言えなかった。だから、憧れてた。普通に遊んだり、話したり・・・そんな夢を持っていた時期もあったわ。でも、もういいの。弟妹たちと、後ついでにサルヒコも安全な所へ連れて行ったわ。でもね、母と義父は放ったわ。こんな時にも関わらず、いつものように子作りに励んでた。ほんと、どうしようもないのよ。・・・だからって、そうやって人の命に優劣を付ける私は善人でもなんでもないわ。『防安室』へ入る人を選別する役人たちとなんら変わりはしない。私もクソみたいなここの住人。共に滅び、共に死人へと成り下がるべきなの。あなた達とは違う、正に悪魔なの」
「何言ってるんですか!?」
「うるさい!いいから聞きなさい!!・・・チェバラは恐らく、この事態も予測してたはず。それを知りまた一人で逃げ出した・・・私たちをまた置いてって、ね。そんな人間にまた会ったら、私はもうどうするか分からないのも事実よ。そしてその真偽なんて、もうどうでもいい。あなたはこんな私と一緒に外の世界へと、そしてあなたから聞いてきたこの数日のチェバラとの話を聞くに、大切な親に会わせられるっていうの?もしかして、あなたの目の前でチェバラを殺すかもしれないわ」
「そ、そんな・・・・・・」
「分かった?だから、あなた一人で行きなさい。そして外の世界で、父と共に・・・・・・」
ヨハンナは押さえていた扉を離し、足元に転がっているゴーマッドが壊し剥がした木片を掴みそれをプローバーの喉元に突き刺した。
「ギイヤァァァァァ!!」「ライト!行って!」
バキバキバキ!!
扉はほぼ完全に壊され、続々と彷徨う者がふらふらと入り込んでくる。それに対峙するようにヨハンナが木片で対応するが、痛みを諸共しないワンダラーは一撃を胸に受けるがそのままヨハンナに襲い掛かり、あっという間に何人もがハイエナのように群がりライトからはヨハンナの姿が消える。
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