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作戦会議1
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それで、茶トラ先生が聞き出した、お父さんが死んだいきさつとは、大体こんな感じだった。
お父さんは会社でラジコン飛行機の自動操縦装置の開発の仕事をしていて、最近それが完成した。
その装置はすごい性能で、自動操縦でものすごく正確にラジコン飛行機を飛ばすことが出来たらしい。
どんな強風の中でも決して墜落することはなかったし、決められた場所に正確に着陸することも出来たらしい。
しかもラジコン飛行機の狭いスペースにのせるものだから、その装置はとても小さくて、とても軽くて、しかも本当にすばらしい性能で、それは社内でも評判になった。
そしてそれに目を付けたのが、ある大手の企業だった。
その装置が本物の飛行機の自動操縦にも応用出来そうだという話だったのだ。
そしてそれは、お通夜前日の八月二十三日のこと。
お父さんの会社に、その企業のおえらいさんたちが招かれ、お父さんは、その自動操縦装置を使った飛行を見事に実演してみせたんだ。
それでその企業の人たちはその自動操縦装置をとても気に入り、その後、商談が行われ、そして見事に契約が成立したという話だった。
しかもそれはとてもとても大きな契約で、お父さんの会社には、ものすごい利益が上がるだろうということだった。
そしてその日の夜、一番街のイカ天という中華料理屋に開発スタッフみんなが集まり、お祝いのパーティーが開かれた。
それから二次会へ行くとかいって、オーラムというカラオケへみんなで向かっている途中、ちょうどデパート前交差点の横断歩道に差し掛かったとき、お父さんは何を思ったのかとつぜん「やったぞ~」と叫びながら、よりによって、横断歩道の上で、大の字になって寝ころんだらしい。
しかもその直後、そこへ左折中の大型トラックがやってきて、それでお父さんはそのトラックにひかれてしまったのだ。
何という運命…
お父さんはお酒が弱いのに、よっぽど嬉しかったんだろう。
多分、大酒を飲んだに違いない。
だけどこんな詳しい話を、茶トラ先生はぼくの家の庭先で、例の「耳打ちしてくれた人」から聞きだしていたんだ。何だか警察の取り調べみたいに、茶トラ先生は次から次に、その人に質問していたから。
とにかく茶トラ先生のねばりに、ぼくはとても感謝したい気持ちだった。
それからぼくらはあいかわらず喪服を着たまま、茶トラ先生の実験室で作戦会議を続けた。
「これは未来に起こる出来事だから、きっと変えられるはずなんだ」
茶トラ先生が言った。
確かに茶トラ先生が「すごい機械を発明した」とか言ってぼくを呼び出した、あの七月十九日から見れば、「お父さんの死」は、未来の出来事だ。
「未来だから変えられる?」
「そうだ。過去は変えられないが」
「過去は、幽霊って話だったっけ?」
「幽霊? あ~、つまり過去に起こってしまったことは、もはや変えようがないんだ」
「茶トラ先生が過去へもどって、自分を殺すとどうなるかって話…みたいな?」
「まあそういう話だ。つまり厳然と決まった過去はもはや変えようがない」
「ゲンゼンって?」
「きちんと決まったという意味だ。しかし未来は違う」
「じゃ、未来は変えられる?」
「そうだ。未来の出来事なら変えられる…かもしれんのだ」
「本当?」
「とにかく運命を変えて、親父さんの事故を回避することは、可能なはずなんだ」
ぼくは茶トラ先生のその言葉にすがるような思いだった。
お父さんが「死んだ」のは未来のこと…
いや、本当は「死んだ」ではなく、きっとただ単に、「これから死ぬかもしれない」なんだ!
お父さんは会社でラジコン飛行機の自動操縦装置の開発の仕事をしていて、最近それが完成した。
その装置はすごい性能で、自動操縦でものすごく正確にラジコン飛行機を飛ばすことが出来たらしい。
どんな強風の中でも決して墜落することはなかったし、決められた場所に正確に着陸することも出来たらしい。
しかもラジコン飛行機の狭いスペースにのせるものだから、その装置はとても小さくて、とても軽くて、しかも本当にすばらしい性能で、それは社内でも評判になった。
そしてそれに目を付けたのが、ある大手の企業だった。
その装置が本物の飛行機の自動操縦にも応用出来そうだという話だったのだ。
そしてそれは、お通夜前日の八月二十三日のこと。
お父さんの会社に、その企業のおえらいさんたちが招かれ、お父さんは、その自動操縦装置を使った飛行を見事に実演してみせたんだ。
それでその企業の人たちはその自動操縦装置をとても気に入り、その後、商談が行われ、そして見事に契約が成立したという話だった。
しかもそれはとてもとても大きな契約で、お父さんの会社には、ものすごい利益が上がるだろうということだった。
そしてその日の夜、一番街のイカ天という中華料理屋に開発スタッフみんなが集まり、お祝いのパーティーが開かれた。
それから二次会へ行くとかいって、オーラムというカラオケへみんなで向かっている途中、ちょうどデパート前交差点の横断歩道に差し掛かったとき、お父さんは何を思ったのかとつぜん「やったぞ~」と叫びながら、よりによって、横断歩道の上で、大の字になって寝ころんだらしい。
しかもその直後、そこへ左折中の大型トラックがやってきて、それでお父さんはそのトラックにひかれてしまったのだ。
何という運命…
お父さんはお酒が弱いのに、よっぽど嬉しかったんだろう。
多分、大酒を飲んだに違いない。
だけどこんな詳しい話を、茶トラ先生はぼくの家の庭先で、例の「耳打ちしてくれた人」から聞きだしていたんだ。何だか警察の取り調べみたいに、茶トラ先生は次から次に、その人に質問していたから。
とにかく茶トラ先生のねばりに、ぼくはとても感謝したい気持ちだった。
それからぼくらはあいかわらず喪服を着たまま、茶トラ先生の実験室で作戦会議を続けた。
「これは未来に起こる出来事だから、きっと変えられるはずなんだ」
茶トラ先生が言った。
確かに茶トラ先生が「すごい機械を発明した」とか言ってぼくを呼び出した、あの七月十九日から見れば、「お父さんの死」は、未来の出来事だ。
「未来だから変えられる?」
「そうだ。過去は変えられないが」
「過去は、幽霊って話だったっけ?」
「幽霊? あ~、つまり過去に起こってしまったことは、もはや変えようがないんだ」
「茶トラ先生が過去へもどって、自分を殺すとどうなるかって話…みたいな?」
「まあそういう話だ。つまり厳然と決まった過去はもはや変えようがない」
「ゲンゼンって?」
「きちんと決まったという意味だ。しかし未来は違う」
「じゃ、未来は変えられる?」
「そうだ。未来の出来事なら変えられる…かもしれんのだ」
「本当?」
「とにかく運命を変えて、親父さんの事故を回避することは、可能なはずなんだ」
ぼくは茶トラ先生のその言葉にすがるような思いだった。
お父さんが「死んだ」のは未来のこと…
いや、本当は「死んだ」ではなく、きっとただ単に、「これから死ぬかもしれない」なんだ!
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