タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

文字の大きさ
11 / 121

作戦会議1

しおりを挟む
 それで、茶トラ先生が聞き出した、お父さんが死んだいきさつとは、大体こんな感じだった。
 お父さんは会社でラジコン飛行機の自動操縦装置の開発の仕事をしていて、最近それが完成した。
 その装置はすごい性能で、自動操縦でものすごく正確にラジコン飛行機を飛ばすことが出来たらしい。
 どんな強風の中でも決して墜落することはなかったし、決められた場所に正確に着陸することも出来たらしい。
 しかもラジコン飛行機の狭いスペースにのせるものだから、その装置はとても小さくて、とても軽くて、しかも本当にすばらしい性能で、それは社内でも評判になった。
 そしてそれに目を付けたのが、ある大手の企業だった。
 その装置が本物の飛行機の自動操縦にも応用出来そうだという話だったのだ。
 そしてそれは、お通夜前日の八月二十三日のこと。
 お父さんの会社に、その企業のおえらいさんたちが招かれ、お父さんは、その自動操縦装置を使った飛行を見事に実演してみせたんだ。
 それでその企業の人たちはその自動操縦装置をとても気に入り、その後、商談が行われ、そして見事に契約が成立したという話だった。
 しかもそれはとてもとても大きな契約で、お父さんの会社には、ものすごい利益が上がるだろうということだった。
 そしてその日の夜、一番街のイカ天という中華料理屋に開発スタッフみんなが集まり、お祝いのパーティーが開かれた。
 それから二次会へ行くとかいって、オーラムというカラオケへみんなで向かっている途中、ちょうどデパート前交差点の横断歩道に差し掛かったとき、お父さんは何を思ったのかとつぜん「やったぞ~」と叫びながら、よりによって、横断歩道の上で、大の字になって寝ころんだらしい。
 しかもその直後、そこへ左折中の大型トラックがやってきて、それでお父さんはそのトラックにひかれてしまったのだ。
 何という運命…
 お父さんはお酒が弱いのに、よっぽど嬉しかったんだろう。
 多分、大酒を飲んだに違いない。
 だけどこんな詳しい話を、茶トラ先生はぼくの家の庭先で、例の「耳打ちしてくれた人」から聞きだしていたんだ。何だか警察の取り調べみたいに、茶トラ先生は次から次に、その人に質問していたから。
 とにかく茶トラ先生のねばりに、ぼくはとても感謝したい気持ちだった。
 それからぼくらはあいかわらず喪服を着たまま、茶トラ先生の実験室で作戦会議を続けた。

「これは未来に起こる出来事だから、きっと変えられるはずなんだ」
 茶トラ先生が言った。
 確かに茶トラ先生が「すごい機械を発明した」とか言ってぼくを呼び出した、あの七月十九日から見れば、「お父さんの死」は、未来の出来事だ。
「未来だから変えられる?」
「そうだ。過去は変えられないが」
「過去は、幽霊って話だったっけ?」
「幽霊? あ~、つまり過去に起こってしまったことは、もはや変えようがないんだ」
「茶トラ先生が過去へもどって、自分を殺すとどうなるかって話…みたいな?」
「まあそういう話だ。つまり厳然と決まった過去はもはや変えようがない」
「ゲンゼンって?」
「きちんと決まったという意味だ。しかし未来は違う」
「じゃ、未来は変えられる?」
「そうだ。未来の出来事なら変えられる…かもしれんのだ」
「本当?」
「とにかく運命を変えて、親父さんの事故を回避することは、可能なはずなんだ」
 ぼくは茶トラ先生のその言葉にすがるような思いだった。
 お父さんが「死んだ」のは未来のこと…
 いや、本当は「死んだ」ではなく、きっとただ単に、「これから死ぬかもしれない」なんだ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

処理中です...