12 / 121
作戦会議2
しおりを挟む
「本当だよね。未来は変えられるんだよね」
「おそらくそうだ」
「でもどうやって?」
「タイムエイジマシンを使うにきまっとる」
「じゃ、お父さんが横断歩道で寝ころぶ時間へ移動して、それを妨害する…、とか?」
「そうすると、誰かが代わりに寝ころぶかも知れんな」
「どうして?」
「運命とはそういうものなんだ。いいか、時の流れというのは宇宙の流れだ」
「何なのそれ?」
「つまりだな、八月二十三日の夜にお前さんの親父さんがトラックにひかれて死んでしまうというのは、宇宙の流れとして『予定』されてしまっていることなんだ」
「宇宙の中で予定されてしまっている?」
「運動会の予定であっても、大雨が降れば中止される。つまり予定とはその程度のものだ。しかしその次の日に晴れれば、運動会は予定通りに行われるかもしれない。つまり宇宙の流れは…」
「え~! それってちょっと分かりにくいたとえ話!」
「まあいい。具体的に言えば、とにかく、親父さんを尾行をして後ろから捕まえて、寝ころばないようにするなどというような、ちゃちな行動を取ったとしても、時の流れは変えられんかも知れんのだ。つまり、宇宙の流れは変わらんかも知れんのだ」
「宇宙の流れは、変わらない…」
「そうだ。それどころか、お前さんが寝ころんでしまい、親父さんの代わりにトラックにひかれるかも知れん」
「次の月曜日に運動会がある…、みたいな?」
「お前さん、運動会のたとえ話をよく理解しておる。そうだ! つまり身代わりだ」
「え~? 月曜日に身代わりの運動会? ええと、また分かんなくなった」
「わからんでもいい。とにかく、もっともっと、でかいことをやらんといかん」
「でかいこと?」
「ちゃちなことをやっても、運命は変わらんかも知れんのだ。はたまた、似たようなことが起こるだけかも知れんのだ。しかし、とてもでかいことをやれば…」
「とてもでかいこと?」
「そうだ」
「でかいことやると?」
「でかいことをやると、時の流れ、宇宙の流れ、つまり運命が変わるかもしれんのだ。これは宇宙的なスケールの話だ」
「宇宙的なスケールででかいことなら、ええと、最低でも地球を爆破しなきゃいけないの?」
「ばかなことを言わん。そこまでばかでかいことはやらんでもよかろう。しかし、あ~、親父さん一人だけではなく、例えば多数の人間の行動を変えれば、それはかなり大きな変化が起こるかもしれん」
「多数の? だけど一体どうやったら多数の人間の行動を変えられるの? お父さん一人の行動を変えるのだって大変だろうに…」
「そのヒントは、お前さんのおふくろさんが言っておった」
「お母さんが何と言っていたっけ?」
「おふくろさんは『あんなパーティーさえ開かれなければ…』と言っておられただろう」
「たしかにお母さん、そう言ってたね。で、パーティーが開かれなければどうなるの?」
「パーティーが開かれなければ、出席予定者全員の運命が変わるんだ」
「出席予定者全員の運命が変わる? たしかにね。で?」
「出席予定者全員だけではない。パーティーがなければ、出席者の奥さんたちは余分に夕食を作る羽目になる」
「う~ん…」
「そしてそれは、夫婦喧嘩の元になるかもしれんし…」
「それは大変だね」
「そうかと思えば、奥さんがパーティーの会場まで旦那さんを車で送る必要もなくなるな」
「うん。それもあるね。お母さんは楽だね」
「で、パーティーがなければその中華料理屋で出す予定だった料理も作られない。そして帰りのタクシーも要らない」
「うんうん」
「すると何台ものタクシーの動き、運転手の仕事、そしてタクシーの売上も変更されるはずだ」
「そうかぁ…」
「つまり考えれば考えるほど、いろんな変化が起こると予測される」
「そうだよね」
「だが、気がかりなこともある」
「何?」
「たとえ何らかの変化が起こったとしても、それが元々の現象と『似たもの』である可能性もあるということだ」
「似たもの?」
「そうだ」
「やっぱり月曜日の運動会みたいな?」
「お前さん、これで運動会のたとえ話を完全に理解したな」
「え~、よくわかんない!」
「まあいい。ともあれ時の流れ、宇宙の流れとはそういうものなんだ」
「へぇ~」
「そして一番怖いのは、ほかの誰かが犠牲になるということだ」
「犠牲?」
「そうだ!」
「犠牲…」
「しかしそれを今、あーだのこーだの言っておっても何も出来ん」
「うん…」
「だから、当面の目標はまず、パーティーの開催を阻止することだ」
「そうだよね。だけどどうやったら、パーティーは開かれなくなるの?」
「そこが問題だ」
「問題だよね」
「しかし方法は、ないわけではない」
「おそらくそうだ」
「でもどうやって?」
「タイムエイジマシンを使うにきまっとる」
「じゃ、お父さんが横断歩道で寝ころぶ時間へ移動して、それを妨害する…、とか?」
「そうすると、誰かが代わりに寝ころぶかも知れんな」
「どうして?」
「運命とはそういうものなんだ。いいか、時の流れというのは宇宙の流れだ」
「何なのそれ?」
「つまりだな、八月二十三日の夜にお前さんの親父さんがトラックにひかれて死んでしまうというのは、宇宙の流れとして『予定』されてしまっていることなんだ」
「宇宙の中で予定されてしまっている?」
「運動会の予定であっても、大雨が降れば中止される。つまり予定とはその程度のものだ。しかしその次の日に晴れれば、運動会は予定通りに行われるかもしれない。つまり宇宙の流れは…」
「え~! それってちょっと分かりにくいたとえ話!」
「まあいい。具体的に言えば、とにかく、親父さんを尾行をして後ろから捕まえて、寝ころばないようにするなどというような、ちゃちな行動を取ったとしても、時の流れは変えられんかも知れんのだ。つまり、宇宙の流れは変わらんかも知れんのだ」
「宇宙の流れは、変わらない…」
「そうだ。それどころか、お前さんが寝ころんでしまい、親父さんの代わりにトラックにひかれるかも知れん」
「次の月曜日に運動会がある…、みたいな?」
「お前さん、運動会のたとえ話をよく理解しておる。そうだ! つまり身代わりだ」
「え~? 月曜日に身代わりの運動会? ええと、また分かんなくなった」
「わからんでもいい。とにかく、もっともっと、でかいことをやらんといかん」
「でかいこと?」
「ちゃちなことをやっても、運命は変わらんかも知れんのだ。はたまた、似たようなことが起こるだけかも知れんのだ。しかし、とてもでかいことをやれば…」
「とてもでかいこと?」
「そうだ」
「でかいことやると?」
「でかいことをやると、時の流れ、宇宙の流れ、つまり運命が変わるかもしれんのだ。これは宇宙的なスケールの話だ」
「宇宙的なスケールででかいことなら、ええと、最低でも地球を爆破しなきゃいけないの?」
「ばかなことを言わん。そこまでばかでかいことはやらんでもよかろう。しかし、あ~、親父さん一人だけではなく、例えば多数の人間の行動を変えれば、それはかなり大きな変化が起こるかもしれん」
「多数の? だけど一体どうやったら多数の人間の行動を変えられるの? お父さん一人の行動を変えるのだって大変だろうに…」
「そのヒントは、お前さんのおふくろさんが言っておった」
「お母さんが何と言っていたっけ?」
「おふくろさんは『あんなパーティーさえ開かれなければ…』と言っておられただろう」
「たしかにお母さん、そう言ってたね。で、パーティーが開かれなければどうなるの?」
「パーティーが開かれなければ、出席予定者全員の運命が変わるんだ」
「出席予定者全員の運命が変わる? たしかにね。で?」
「出席予定者全員だけではない。パーティーがなければ、出席者の奥さんたちは余分に夕食を作る羽目になる」
「う~ん…」
「そしてそれは、夫婦喧嘩の元になるかもしれんし…」
「それは大変だね」
「そうかと思えば、奥さんがパーティーの会場まで旦那さんを車で送る必要もなくなるな」
「うん。それもあるね。お母さんは楽だね」
「で、パーティーがなければその中華料理屋で出す予定だった料理も作られない。そして帰りのタクシーも要らない」
「うんうん」
「すると何台ものタクシーの動き、運転手の仕事、そしてタクシーの売上も変更されるはずだ」
「そうかぁ…」
「つまり考えれば考えるほど、いろんな変化が起こると予測される」
「そうだよね」
「だが、気がかりなこともある」
「何?」
「たとえ何らかの変化が起こったとしても、それが元々の現象と『似たもの』である可能性もあるということだ」
「似たもの?」
「そうだ」
「やっぱり月曜日の運動会みたいな?」
「お前さん、これで運動会のたとえ話を完全に理解したな」
「え~、よくわかんない!」
「まあいい。ともあれ時の流れ、宇宙の流れとはそういうものなんだ」
「へぇ~」
「そして一番怖いのは、ほかの誰かが犠牲になるということだ」
「犠牲?」
「そうだ!」
「犠牲…」
「しかしそれを今、あーだのこーだの言っておっても何も出来ん」
「うん…」
「だから、当面の目標はまず、パーティーの開催を阻止することだ」
「そうだよね。だけどどうやったら、パーティーは開かれなくなるの?」
「そこが問題だ」
「問題だよね」
「しかし方法は、ないわけではない」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる