タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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お父さんの仕事場を偵察1

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 それからぼくらはタイムエイジマシンで、お通夜前日の八月二十三日の朝へと移動した。
 茶トラ先生の話では、どうやらこれから偵察をするらしいのだ。
 ところでこの時間、茶トラ先生は物理学会に出発する前なので、まだ家にいるはずだ。
 だからもし二人の茶トラ先生が鉢合わせしたら…と、ぼくは少し不安だったから、ぼくがそれを言うと茶トラ先生は「わしはいつも昼過ぎまで豪快にグーグー寝ておるから、わしとわしが鉢合わせする心配はほとんどない」と言ったので、ぼくは少し安心した。
 だけどそんなことより、その八月二十三日は、お父さんたちが大きな契約に成功し、その夜、お祝いのパーティーへ行き、そしてお父さんは事故に遭う運命の日なのだ。
 とにかくそれが大問題なのだ!
 それで、そのままお揃いの喪服を着ていたぼくらは、茶トラ先生の運転する360ccのボロ軽自動車でお父さんの会社へと出発した。
 多分、偵察に…
 でも探偵なら黒い喪服は都合がいいかもしれない。
 目立たないからね。

 実は茶トラ先生は、お父さんの会社のある場所なんかも、例の耳打ちしてくれた人からしっかりと聞き出していた。
 お通夜の時、ぼくの家の庭先で、その人からいろんな情報を、根掘り葉掘り引き出しているようだったんだ。
 それにしても茶トラ先生はすごい能力のある人だ。
 ぼくはいつもながら感心する。
 ところでぼくは、茶トラ先生の車の中でお父さんの会社へと向かう途中、「よくもまあそんなに詳しく話を聞き出せたよね」と、たずねてみた。
 すると茶トラ先生は「それは、わしが作った頭脳透視装置のおかげだ」と、にやにやしながら言った。(きっとうそだ!)
 そういう話は置いといて、それで茶トラ先生がその人から聞き出したという話、つまり、
「お父さんはラジコン飛行機の自動操縦飛行を見事に実演し、商談は成立!」
という話から、茶トラ先生は、その飛行が行われた場所を推理した。
 それはラジコン飛行場だ!
 それで茶トラ先生はそのラジコン飛行場へと車を走らせたのだ。
 じつはその場所は、茶トラ先生がその人からきき出していたけれど、もちろんぼくも、普段お父さんの話から大体の場所は知っていた。
 だけど実際に行ってみるのは初めてだった。
 それで、お父さんの会社は意外と郊外にあった。
 いやいや、郊外というより、周りには広い草原が広がっているような、豪快なとんでもない田舎だった。
 それで、そこへ着いてから、会社の敷地のフェンス沿いに車を走らせると、ラジコン飛行場らしいものが見渡せる場所があって、そこのフェンス近くの小道に車を止めた。
 そしてぼくらは車の窓から、フェンスの向こう側の様子を観察することにした。
 そこはとても広い場所で、芝生が生えていた。
 そしてその中央に、アスファルトで舗装された道があった。
 いや道ではない。滑走路だ。
 幅二十メートル、長さ百メートルくらい。
「ここが親父さんの会社所有のラジコン飛行場だ」
 茶トラ先生が言った。
 ぼくはそのとき初めて、ラジコン飛行場などというものを見た。
 そして舗装された滑走路の脇には駐機場、つまり飛行機の「駐車場」があり、小さな飛行機が何機か置いてあった。
 そしてその向こうには会社の建物が見え、その手前、駐機場の少し向こうにはトイレという感じの小さな建物があった。
 ちなみにこういう細かいところまで見えたのは、茶トラ先生から借りた高性能の双眼鏡のおかげだ。
 それにしても楽しそうな場所だ。
 広い公園みたいな感じ。
 お父さんがいつもこんなに楽しそうな場所で仕事をしているのなら、一度見せてもらいに来ればよかったと、そのときぼくは思った。
「わしの推理ではだな、まず間違いなくここで自動操縦飛行の実演が行われる」
 茶トラ先生はそう言い、それからもぼくらは車の窓から、飛行場の観察を続けた。
 ちなみに茶トラ先生は、もう一つの双眼鏡を使っていた。
 茶トラ先生は少なくとも二つの双眼鏡を持っているらしい。

 それからしばらく観察していると、駐機場にいろんな人たちがぞろぞろと集まり始めた。
 何かの催し物でも始まりそうな雰囲気だ。
「おそらくこれから、自動操縦のデモフライトの準備が始まるのだろう」
「デモフライト?」
「要するにお前さんの親父さんが、ラジコン飛行機の自動操縦飛行を実演すると言うことだ。そしてそれに成功すれば、商談成立間違いなしという寸法だろう」
「商談が成立すると?」
「契約が成立し、今夜、お祝いのパーティーが開かれる」
「そしたらお父さんはトラックに…」
「だから何とかせんといかんのだ」
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