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お父さんの仕事場を偵察2
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ぼくらがそんな話をしているあいだも、そのデモフライトの準備が着々と整っていき、いかにも「最新鋭」という感じのラジコン飛行機が三機、ズラリと並べられた。
それらをよく見ると、各々の垂直尾翼に1,2,3と数字が書いてあった。
きっとそれらは「一号機」、「二号機」、「三号機」なのだろう。
それにしても茶トラ先生の双眼鏡は良~く見える。
それからもぼくらが様子を見ていると、会社の建物から、イカしたグレーのスーツを着たお父さんらしい人物が、キザなサングラスなんかを掛け、ラジコン飛行機の送信機なんかも持って、口笛を吹きながら歩いて来るのが分かった。
そんなお父さんの様子を双眼鏡の視野の中で見ていると、死んだはずのお父さんが生き返ったような、不思議な感覚が、そのときぼくの心の中に生まれた。
そして茶トラ先生がどんな作戦を考えているのか、そのときのぼくには、さっぱり分からなかったけれど、とにかくこの作戦が成功するといいなと、ぼくは心から願っていた。
ちなみにぼくは双眼鏡で見ていたから、お父さんの口笛の音は聞こえない。
だけど口の動かし方から、お父さんの十八番の「お散歩」だろうと、ぼくは推理した。
それからお父さんは送信機をもったまま、駐機場の少し向こうにある小さな建物に入った。
多分そこはトイレだ。
「おいおい、こいつはまたとないチャンスだぞ!」
双眼鏡を見ながら、茶トラ先生が興奮気味に言った。
「どういうチャンスなの?」
「いいからいいから」
「で、そんなにすごいチャンスなの?」
「いいからいいから」
「もう!いいからいいからばっかし!」
とにかくそれはすごいチャンスだったらしいのだけど、そのときのぼくには意味不明だった。
さて、それから駐機場の方を見ると、デモフライトの準備なんかがどんどん進んでいるようで、スタッフが忙しそうに動き回り、それから商談相手の会社の、とても太った、そしてとても偉そうな感じの威張ったお偉いさんらしい人たちがのっしのっしと歩いてきて、準備してある折りたたみイスにドカンドカンと座りはじめた。
イスのパイプが曲がって壊れそうだった。(それにしてもこの双眼鏡はよく見える!)
そしてまたトイレの方を見ると、お父さんが送信機をぶら下げてトイレから出てきて、また(多分)お散歩を口笛で吹きながら駐機場へと向かった。
そして駐機場へ着くと、相手企業の太ったお偉いさんたちにぺこりと頭を下げ、そしてスタッフの一人と何やら打ち合わせを始めた。
それを終えると、お父さんは駐機場で送信機を構え、それからスタッフに「準備OK」という感じの合図をした。
するとスタッフたちが飛行機のエンジンを掛けた。
飛行機から排気の青白い煙が出始めた。
それからお父さんが操縦を始め、飛行機はゆっくりと動き出し、やがて滑走路のいちばん端っこでくるりと向きを変え、一旦そこで止まった。
「当機は間もなく離陸いたします」という状態だ。
それからややあって、エンジンがブイーンとうなる音が、ぼくらのいるところにもはっきりと聞こえ、そして飛行機はぐんぐんと速度を上げ、それから軽やかに離陸した。
離陸するとしばらくの間、飛行機は安定してばっちり飛んだ。
それからかっこよく宙返りやロールや、背面飛行なんかもやってみせた。
その間、ぼくは双眼鏡でお父さんが飛ばす飛行機を追ったり、送信機を持つお父さん、とくにその手元を見たりしていた。
それでぼくが双眼鏡でくわしく観察していると、お父さんはしばらく飛行機を飛ばした後、送信機の左前方のスイッチを操作し、それから何と送信機を地面にぽんと置き、そして両手をぶらぶらとさせてみせた。
どうやら飛行機が自動操縦で飛んでいるということを、商談相手のお偉いさんたちにアピールしているのだと、ぼくにも分かった。
そして送信機を地面に置いても、飛行機は勝手にばっちり飛行を続けた。
それからしばらく飛び、やがて着陸コースに入り、そして滑るようにきれいに滑走路に着陸し、少し走ってからお父さんの足元にぴたりと止まったのだ。
その様子を見て、相手企業の人たちはみな立ち上がり、拍手をし、それから相手企業の、一番偉そうなひときわ太った偉そうな人が、お父さんの元にのっしのっしと歩み寄り、がっちりと握手をした。
そこまで見届けると、茶トラ先生は一度実験室へ帰ると言い、軽自動車を動かした。
「お前さんの親父さんは、自動操縦装置の開発をやり、しかもラジコン飛行機のテストパイロットでもあるのだな」
「すごいだろう?」
「わしは不器用だからあんなことは出来ん」
「だけど茶トラ先生は、ぼくの自転車を一瞬で修理したじゃない。だから器用だよ」
「だめだだめだ。ラジコン飛行機なんか飛ばすと、手が震えてしまう」
「へぇ~、茶トラ先生はラジコン飛行機を飛ばしたことがあるんだ!」
「一応な」
「ところでさあ、ぼく、飛行機を飛ばしているお父さんの姿を双眼鏡で見て、お父さん生き返った、いや、きっと生き返る!っていう気分に、ちょっぴりだけどなったんだ」
「そうだそうだ。勇気を持とう。これからそのために、我々は最善を尽くすんだ!」
それらをよく見ると、各々の垂直尾翼に1,2,3と数字が書いてあった。
きっとそれらは「一号機」、「二号機」、「三号機」なのだろう。
それにしても茶トラ先生の双眼鏡は良~く見える。
それからもぼくらが様子を見ていると、会社の建物から、イカしたグレーのスーツを着たお父さんらしい人物が、キザなサングラスなんかを掛け、ラジコン飛行機の送信機なんかも持って、口笛を吹きながら歩いて来るのが分かった。
そんなお父さんの様子を双眼鏡の視野の中で見ていると、死んだはずのお父さんが生き返ったような、不思議な感覚が、そのときぼくの心の中に生まれた。
そして茶トラ先生がどんな作戦を考えているのか、そのときのぼくには、さっぱり分からなかったけれど、とにかくこの作戦が成功するといいなと、ぼくは心から願っていた。
ちなみにぼくは双眼鏡で見ていたから、お父さんの口笛の音は聞こえない。
だけど口の動かし方から、お父さんの十八番の「お散歩」だろうと、ぼくは推理した。
それからお父さんは送信機をもったまま、駐機場の少し向こうにある小さな建物に入った。
多分そこはトイレだ。
「おいおい、こいつはまたとないチャンスだぞ!」
双眼鏡を見ながら、茶トラ先生が興奮気味に言った。
「どういうチャンスなの?」
「いいからいいから」
「で、そんなにすごいチャンスなの?」
「いいからいいから」
「もう!いいからいいからばっかし!」
とにかくそれはすごいチャンスだったらしいのだけど、そのときのぼくには意味不明だった。
さて、それから駐機場の方を見ると、デモフライトの準備なんかがどんどん進んでいるようで、スタッフが忙しそうに動き回り、それから商談相手の会社の、とても太った、そしてとても偉そうな感じの威張ったお偉いさんらしい人たちがのっしのっしと歩いてきて、準備してある折りたたみイスにドカンドカンと座りはじめた。
イスのパイプが曲がって壊れそうだった。(それにしてもこの双眼鏡はよく見える!)
そしてまたトイレの方を見ると、お父さんが送信機をぶら下げてトイレから出てきて、また(多分)お散歩を口笛で吹きながら駐機場へと向かった。
そして駐機場へ着くと、相手企業の太ったお偉いさんたちにぺこりと頭を下げ、そしてスタッフの一人と何やら打ち合わせを始めた。
それを終えると、お父さんは駐機場で送信機を構え、それからスタッフに「準備OK」という感じの合図をした。
するとスタッフたちが飛行機のエンジンを掛けた。
飛行機から排気の青白い煙が出始めた。
それからお父さんが操縦を始め、飛行機はゆっくりと動き出し、やがて滑走路のいちばん端っこでくるりと向きを変え、一旦そこで止まった。
「当機は間もなく離陸いたします」という状態だ。
それからややあって、エンジンがブイーンとうなる音が、ぼくらのいるところにもはっきりと聞こえ、そして飛行機はぐんぐんと速度を上げ、それから軽やかに離陸した。
離陸するとしばらくの間、飛行機は安定してばっちり飛んだ。
それからかっこよく宙返りやロールや、背面飛行なんかもやってみせた。
その間、ぼくは双眼鏡でお父さんが飛ばす飛行機を追ったり、送信機を持つお父さん、とくにその手元を見たりしていた。
それでぼくが双眼鏡でくわしく観察していると、お父さんはしばらく飛行機を飛ばした後、送信機の左前方のスイッチを操作し、それから何と送信機を地面にぽんと置き、そして両手をぶらぶらとさせてみせた。
どうやら飛行機が自動操縦で飛んでいるということを、商談相手のお偉いさんたちにアピールしているのだと、ぼくにも分かった。
そして送信機を地面に置いても、飛行機は勝手にばっちり飛行を続けた。
それからしばらく飛び、やがて着陸コースに入り、そして滑るようにきれいに滑走路に着陸し、少し走ってからお父さんの足元にぴたりと止まったのだ。
その様子を見て、相手企業の人たちはみな立ち上がり、拍手をし、それから相手企業の、一番偉そうなひときわ太った偉そうな人が、お父さんの元にのっしのっしと歩み寄り、がっちりと握手をした。
そこまで見届けると、茶トラ先生は一度実験室へ帰ると言い、軽自動車を動かした。
「お前さんの親父さんは、自動操縦装置の開発をやり、しかもラジコン飛行機のテストパイロットでもあるのだな」
「すごいだろう?」
「わしは不器用だからあんなことは出来ん」
「だけど茶トラ先生は、ぼくの自転車を一瞬で修理したじゃない。だから器用だよ」
「だめだだめだ。ラジコン飛行機なんか飛ばすと、手が震えてしまう」
「へぇ~、茶トラ先生はラジコン飛行機を飛ばしたことがあるんだ!」
「一応な」
「ところでさあ、ぼく、飛行機を飛ばしているお父さんの姿を双眼鏡で見て、お父さん生き返った、いや、きっと生き返る!っていう気分に、ちょっぴりだけどなったんだ」
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