40 / 121
25年後の医学1
しおりを挟む
そしてぼくらは二十五年後の未来に着いた。
タイムエイジマシンの外に出ると、そこはマンションの一室…、なんてことはなく、そこは相変わらず茶トラ先生の実験室だった。
ずいぶん古ぼけてはいたけれど。
床やテーブルにはいっぱいほこりが積り、実験室のいろんな機械なんかは錆びついて、もう何年も使われていないようだった。
「どうやらここは無人のようだな。この時代にわしが生きておる保証はない。わしはこの時代、九十歳だからな。多分生きてはおらんだろう」
「きっと近くの有料老人ホームかなんかに入っているんだよ。九十歳の茶トラ先生って、めちゃくちゃイメージわくけど」
「そうだといいが」
それから家の外に出ると、庭は荒れ果て、草木が生い茂り、それとくらべると周りには近代的な建物がずらりと並んでいた。
「周りの様子はすっかり変わっておる」
「そうみたいだね」
「さて、亜里沙ちゃんに会いに行こう。順調にいけば医学部を卒業し、とっくに一人前だろう」
「そうだといいけど…」
「お前さんはこの時代三十七歳で、一つ年下の亜里沙ちゃんは三十六歳だ。だからちょうど中堅の医者になっておるだろう」
「だけどこの時代、あいつがどこで働いているのか、分からないんじゃないの?」
「だからわしは亜里沙ちゃんに『そうそう。それから亜里沙ちゃん、三十六歳くらいになったら大学病院の内科で働いていてくれないか』と言ったのだ」
「なるほどそういうことか! じゃ、あいつはこの時代、大学病院の内科にいる『予定』なんだ」
「そういうことだ」
「それにしても茶トラ先生は何でも用意周到だね。クロロホルムとか気付け薬とか、それから、お父さんをこかした救急箱とかさ」
「救急箱はお前さんの親父さんが横断歩道に飛び出すのを止めたんだぞ!」
「はいはい。そういうことにしといてあげるよ。ところでさあ、ぼくはこの時代、何をしていると思う?」
「そうだなあ、最先端のテクノロジーの研究者あたりかな」
「本当かなあ」
「夢は大きく持て」
それからぼくらは、大学病院へ行くことにした。
ところで、茶トラ先生の車があったらいいのだけど、二十五年もたっているので、多分だめだろうと思ったけれど、念のため探してみたら、草木の生い茂ったガレージに、朽ちたようなポンコツ軽自動車が見つかった。
「何年も乗ってないようだな。こりゃだめだ。よし。タクシーで行くか」
それからぼくらは、デビルのお母さんの病気の、あらいざらいの資料や医局花見のアイスボックスなんかを抱え、歩いて大通りに出た。
そこは歩道、自転車道、車道にきちんと別かれ、その車道には未来のイカした自動車が音もなく走っていた。
それからぼくらが歩道に立っていると、いかにも「タクシー」という感じの、これまた、とてもイカした自動車が走って来たので、茶トラ先生が手を上げると止まってくれた。
そしてその二十五年後のイカしたタクシーのトランクに、例の洗いざらいの資料やらアイスボックスやらを積み込み、二人で後ろの座席に座り、大学病院へと向かった。
タクシーを降りるときお金を払ったら、運転手さんが「こんな古いお札は珍しい」と、とても喜んで受け取ってくれた。
ただし物価の関係で、料金は一桁多かったので、茶トラ先生は眼が飛び出した。
「有り金は全部使い果たした。帰りは歩きだ。『テクシー』とも言うんだぞ」
「テクシー?」
「テクテク歩くタクシーのことだ。さっきまでわしらがいた時代でさえ、とっくに死語になっとる」
「へぇ~」
それからぼくらは、立派な建物の大学病院に入った。
タイムエイジマシンの外に出ると、そこはマンションの一室…、なんてことはなく、そこは相変わらず茶トラ先生の実験室だった。
ずいぶん古ぼけてはいたけれど。
床やテーブルにはいっぱいほこりが積り、実験室のいろんな機械なんかは錆びついて、もう何年も使われていないようだった。
「どうやらここは無人のようだな。この時代にわしが生きておる保証はない。わしはこの時代、九十歳だからな。多分生きてはおらんだろう」
「きっと近くの有料老人ホームかなんかに入っているんだよ。九十歳の茶トラ先生って、めちゃくちゃイメージわくけど」
「そうだといいが」
それから家の外に出ると、庭は荒れ果て、草木が生い茂り、それとくらべると周りには近代的な建物がずらりと並んでいた。
「周りの様子はすっかり変わっておる」
「そうみたいだね」
「さて、亜里沙ちゃんに会いに行こう。順調にいけば医学部を卒業し、とっくに一人前だろう」
「そうだといいけど…」
「お前さんはこの時代三十七歳で、一つ年下の亜里沙ちゃんは三十六歳だ。だからちょうど中堅の医者になっておるだろう」
「だけどこの時代、あいつがどこで働いているのか、分からないんじゃないの?」
「だからわしは亜里沙ちゃんに『そうそう。それから亜里沙ちゃん、三十六歳くらいになったら大学病院の内科で働いていてくれないか』と言ったのだ」
「なるほどそういうことか! じゃ、あいつはこの時代、大学病院の内科にいる『予定』なんだ」
「そういうことだ」
「それにしても茶トラ先生は何でも用意周到だね。クロロホルムとか気付け薬とか、それから、お父さんをこかした救急箱とかさ」
「救急箱はお前さんの親父さんが横断歩道に飛び出すのを止めたんだぞ!」
「はいはい。そういうことにしといてあげるよ。ところでさあ、ぼくはこの時代、何をしていると思う?」
「そうだなあ、最先端のテクノロジーの研究者あたりかな」
「本当かなあ」
「夢は大きく持て」
それからぼくらは、大学病院へ行くことにした。
ところで、茶トラ先生の車があったらいいのだけど、二十五年もたっているので、多分だめだろうと思ったけれど、念のため探してみたら、草木の生い茂ったガレージに、朽ちたようなポンコツ軽自動車が見つかった。
「何年も乗ってないようだな。こりゃだめだ。よし。タクシーで行くか」
それからぼくらは、デビルのお母さんの病気の、あらいざらいの資料や医局花見のアイスボックスなんかを抱え、歩いて大通りに出た。
そこは歩道、自転車道、車道にきちんと別かれ、その車道には未来のイカした自動車が音もなく走っていた。
それからぼくらが歩道に立っていると、いかにも「タクシー」という感じの、これまた、とてもイカした自動車が走って来たので、茶トラ先生が手を上げると止まってくれた。
そしてその二十五年後のイカしたタクシーのトランクに、例の洗いざらいの資料やらアイスボックスやらを積み込み、二人で後ろの座席に座り、大学病院へと向かった。
タクシーを降りるときお金を払ったら、運転手さんが「こんな古いお札は珍しい」と、とても喜んで受け取ってくれた。
ただし物価の関係で、料金は一桁多かったので、茶トラ先生は眼が飛び出した。
「有り金は全部使い果たした。帰りは歩きだ。『テクシー』とも言うんだぞ」
「テクシー?」
「テクテク歩くタクシーのことだ。さっきまでわしらがいた時代でさえ、とっくに死語になっとる」
「へぇ~」
それからぼくらは、立派な建物の大学病院に入った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる