タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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それからなぜか健診を受けまくった茶トラ先生

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 その次の日から、何故か茶トラ先生は毎日毎日健康診断を受けるようになった。
 毎日毎日と言っても、実際は一年ごとだ。
 というのはタイムエイジマシンで毎日毎日、次の年次の年、そのまた次の年と、順に遠い未来へ行き、連動しているのでそのまま一歳ずつ年を取っては健康診断を受けていたんだ。
 もちろん、未来から戻ってくれば元の年齢に戻れる。
 考えてみれば、タイムエイジマシンは便利な機械になったもんだ。
 それで、ぼくがそのことを知ったのは、それから何日か過ぎたある日のことだった。
 ぼくが先生のところへ遊びに行くと、数年分の健康診断の結果をファイルにして、それをぼくに見せてくれたんだ。
「わしは毎日一年ごとに、健診を受けることにしたのだ」
「何、その毎日一年ごとって?」
「タイムエイジマシンで一年ずつ遠い未来へ行き、健康診断を受ける。幸いタイムとエイジは連動しておるから、わしは行った先々の未来で、その年代にふさわしい年齢になっておる」
「それで?」
「健康診断の結果を見て、万一重大な病気が見付かったら、すぐにその半年ほど前へ戻り、さっそく病院へ行き、治療を受けるんだ」
「へぇ~」
「実際、わしは八年後に、1センチほどの胃がんを発見される」
「え~!」
「なーに、驚くほどの話ではない。それで、そのときから半年前の、つまり今から七年半後へ行って、その時代の病院へ行き、胃がんが発見される予定の場所を詳しく調べてもらったんだ」
「へぇ~」
「もちろんその前に、八年後に健康診断を受けた施設から、わしの胃がんの情報を洗いざらいもらい…」
「じゃ、また水鉄砲なんかを使って、お医者さんを威嚇したの?」
「その必要はない。これはわしの個人情報だ。あっさりと洗いざらいくれたよ。つまり、紹介状としてだ」
「へぇ~、それで?」
「それで、いまから七年半後の病院で、拡大内視鏡という検査を受けた」
「拡大内視鏡?」
「その時代の最新のやつだ。胃の検査をする内視鏡という機械の先に、顕微鏡が付いていると思えばよい」
「すごい!」
「それで胃の中の物凄く小さなところまで分かるんだ」
「へぇ~」
「それで、その内視鏡で調べてもらったら、三ミリ四方ほどの胃がんが見付かった」
「たったの三ミリ?」
「そうだ。しかしそれほど小さな胃がんは、さすがに健康診断では発見できない。健康診断で見つかった胃がんは一センチほどだったらしいが、半年前に戻れば、三ミリだったというわけだ」
「ねえ、半年前に病院へ行くのだったら、あらいざらいの紹介状の日付が半年後だと、お医者さんは不審に思わないの?」
「まあ、うまいことしらばっくれたよ」
「そうか! いざとなれば水鉄砲があるし」
「まあ、それはともかくだ。とにかく三ミリ四方の胃がんを見付けてもらったわけだが、かといって、拡大内視鏡で胃の中をくまなく調べてもらっておったら、ものすごい時間が掛かる」
「どうしてものすごい時間が掛かるの?」
「虫眼鏡で体育館ほどの広さを調べるようなものだ」
「んー、分かるような分からないような…」
「まあいい。ところがだ。胃がんの正確な場所の情報があれば、そこを徹底的に検査してもらえる。それで、とにかく物凄く小さな胃がんが見付かったというわけだ。もちろん検査をした先生も、とても驚いておった」
「へぇ~ それで?」
「それからさっそく内視鏡で手術してもらったよ。簡単な手術だった。ものの三十分も掛からんかった」
 とにかく茶トラ先生は「健康診断マニア」になったんだ。
 そしてそれからも茶トラ先生は、連動したタイムエイジマシンを使い、一年ごとに健康診断を受け続け、病気を発見してもらうたび、半年ほど前へ戻り病院へ行った。
 だから、茶トラ先生はどんどん長生きする「予定」になっていったんだ。
 ちなみに、発見された主だった病気では、八十歳くらいでおなかの大きな血管に、こぶのようなものが出来ることが分かり、それは動脈瘤というもので、破裂する危険があったらしい。
 それでまた半年前へ戻り、人工血管に取り換える手術を受ける予約をした。
 なぜ予約をしたかというと、動脈瘤が出来ないうちに人工血管に代える手術を受けてもしょうがないからだと、茶トラ先生は言っていた。
 九十歳くらいになると、健康診断で心臓の血管がつまる、心筋梗塞という病気が危ないと言われ、これまた半年前に戻り、それを予防する手術を受ける予約をした。
 百歳くらいで肺がんになったが、その頃は医学が進んでいて、肺がんは風邪みたいに簡単に治療できるようになっていたらしく、何も予約しなかったそうだ。
 とにかくそういうことを延々とやっているみたいだった。
 何のためかはさておいて…
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