タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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制御された街2

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 それからぼくらは手分けして、街の様子を見て回った。
 パトロールの分担では、学校のある地域はぼくが担当することになった。
 デビルに担当させると、学校へ行って運動場でマイムマイムを見たら、デビルが「変な気」を起こすといけないという、茶トラ先生の提案もあったからだ。
 それからぼくらは茶トラ先生から、「この制御された時間の中でも正常に動くよう、特別に処理して作ったんだ」という時計を貸してもらった。
 これを持って3人で手分けしてパトロールし、この時計で2時間ごとに茶トラ先生のところへ集まり、状況を報告するということになっていた。
 そして茶トラ先生が言ったように、地震の揺れは10秒ほど続くらしく、だからぼくらの時間で10時間ほど時を制御し、そしてその間、ぼくらはパトロールする必要があったんだ。
 パトロールでは建物が崩れていないか、地面にひび割れなんかが発生していないか、けが人はいないか。
 とにかくそういうことが起こっていないかを確認するためだった。

 それからぼくは、てくてく歩きながら街を見回った。
 自転車で見回ればって思うかもしれないけれど、ぼくの自転車はすでに制御された時の中にあり、乗ったとしても、ものすごくゆっくりしか動かないから、とても使いものにならないらしい。
 だからぼくらは防護服を着て、てくてく歩いて見回るしかないらしかった。
 見回ると、「止まっている街」は、一見平和そのものに思えてしまう。
 ある家で、庭に水をまいているおじさんがいた。
 だけどその水は止まっていて、水の小さなつぶつぶまでが見える。
 それに虹が架かっていた。
 とてもきれいだった。
 野球場へ行ったら、ピッチャーの投げたボールが空中でぴたりと止まっている。
 バッターも、守備についた選手もみなじっとしている。
 公園では飛び立ったばかりのカラスがいた。
 めったに見れないから少し近づいて、しげしげと見た。
 翼を広げるとものすごく大きくて、そしてその翼の先端では、一本一本の羽毛が分かれているんだ。
 まるで写真みたいだ。
 それから運動会をやっている学校の運動場へ行くと、あたりまえだけど、まだぼくらの学年はマイムマイムを踊っていて、ぼくが学校を出たときはみんな「ぴょん」として浮いていたけれど、そのときぼくが見ると、みんなの靴は地面に着いていた。
 だからあれから1秒やそこらの時間が過ぎていたんだなと、ぼくは妙に感心した。
 学校を出ると、やっぱり道路で自動車が固まっていて、道路工事も固まっていた。
 それから通りかかったセブンイレブンでは、誰かが入ろうとして自動ドアが開いていた。
 1秒が1時間だから、ドアが閉まるまで十分な時間があるだろうと思い、様子を見にぼくも入ってみた。
 店の中では、棚から物が落ちたような様子もなく、レジではお姉さんがにこやかに立っていたので、やっぱりこの世界の人たちにとって、地震はほとんど、いや、全く体に感じないものなんだと納得した。
 そしてぼくは開いたままの自動ドアから店を出た。

 とにかくぼくが見回ったかぎり、一見、何も異変はなさそうだった。
 そしてそういうことをやって、ぼくもデビルも定期的に茶トラ先生に、「街に異常なし」と報告していったんだ。
 茶トラ先生も街を見回ったり、実験室のモニターをチェックしたりして、緊張して過ごしているようだった。
 モニターでは地震の震度なんかが表示してあり、震度は最大で7に達していたらしいけれど、ぼくらが見回っても街は全く平穏だった。タイムエイジマシンが時を、そして地震を制御したおかげなんだと、ぼくは感動した。
 そして茶トラ先生の話ではあと1、2数秒、だからぼくらの時間であと1、2時間制御もすれば、無事に地震は収まるだろうということだった。
 だけどその次の報告のとき、何故かデビルは戻って来なかったんだ。
 少し遅れてくるのかと思ったけれど、いくら待っても来なかった。
 デビルはどうしたのだろう?
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