70 / 121
ミッションの計画
しおりを挟む
それから数日後、ぼくは茶トラ先生の実験室へ呼ばれ、それから今回の「ミッション」の打ち合わせを行った。
例によって茶トラ先生がとうとうと計画をのべたのだ。
「あ~、今日ここに来てもらったのはほかでもない。あ~、今回のミッションでは…」
「ねえ茶トラ先生、そんなあらたまった言い方やめなよ! 運動会の時の来賓のお偉いさんの市会議員とかみたいなしゃべりかただし。ぜんぜん似合わないし。いっそ普通にしゃべれば」
「おお、そうだな。わかったわかった。それじゃ普通に話そう」
「了解」
「あ~、それでだ。前にも言ったようにチャトラを撃ち落とすなどという手荒なことは一切するつもりはない」
「やっぱりそうなの。で、どうすんの?」
「そう先を急ぐでない」
「は~い」
「それで、今回の計画では、スワンボートでチャトラに接近し、ボートの先端でチャトラを押すのだ」
「それって、スワンボートの白鳥のくちばしのあたり?」
「いや、首の蝶ネクタイのあたりがよかろう。そしてそうすることで、チャトラの軌道を変え、50年後、再び地球に接近した時の、アポフィスへの衝突を回避する」
「押すのはいいけど、で、一体どうやって、チャトラまで行くの?」
「先日の実験で、お前さん一人でこいだ場合、スワンボートは人工衛星軌道に到達できた。これが何を意味するかというと、お前さん一人の脚力で毎秒8キロメートルを出せたということになる」
「それって人工衛星のスピードなの? たった1秒で、8キロメートルも?」
「そうだ。しかしチャトラは最接近時でも地球の重力圏外、すなわち地球から約2万キロ離れた宇宙空間にある。そしてわしの計算によると、チャトラまで到達するには、言い換えるとチャトラに追いつくには、毎秒21キロメートルの速度が必要なんだ」
「そんなに?」
「そうだ。そしてお前さん一人で毎秒8キロメートルの速度を出せたので、実は計算によると、毎秒21キロメートルを出すためには、お前さん7人分の脚力が必要だ」
「どうして? ぼく一人で毎秒8キロメートルだったら、7人で8×7で、ええと、毎秒56キロメートル出るじゃん」
「実は、スワンボートに搭載されたイオンエンジンの特性上、最高速度は足こぎパワーの平方根に比例する」
「ヘイホウコン?」
「ルートともいうが、中学で習う。まあそれはいいが、とにかくこの場合、2倍の速度を得るには2×2=4倍の脚力が必要なんだ。だから毎秒21キロメートルのチャトラに追いつくにはイチロウの7倍、つまり7人が必要なんだ」
21÷8=2.625
2.625×2.625=6.89
「そうか、7人かぁ…」
「しかし残念ながら、このスワンボートは最大でも5人乗りだ。もちろん後ろの座席にペダルを増設して、あと3人分を用意した。それでわしと、イチロウと、それからデビル君と、そして、あ~、ゆりちゃんの4人がこぐとして、あとそれ以外の誰かということになるのだが、しかしあと一人は3人分の脚力をもった人物が必要ということになる。そうしないと7人分の脚力にならない。そしてそうしないと、決してチャトラに追いつけないという計算になってしまうのだ」
「つまり3人分の脚力を持った人物が必要ってこと?」
「そうだ。そこでお前さんたちの知り合いで、誰かそういう怪力を持った人はおらんか?」
「3人分の怪力? ええとええとええと…、そうだ! 同級生にヤス子ちゃんて子がいる。ゆりちゃんとも仲良しだし」
「そのヤス子ちゃんとは、一体どういう子かね」
「ええと、たしか最近、自転車のジュニアロードレースで優勝してたよ」
「それだ!」
例によって茶トラ先生がとうとうと計画をのべたのだ。
「あ~、今日ここに来てもらったのはほかでもない。あ~、今回のミッションでは…」
「ねえ茶トラ先生、そんなあらたまった言い方やめなよ! 運動会の時の来賓のお偉いさんの市会議員とかみたいなしゃべりかただし。ぜんぜん似合わないし。いっそ普通にしゃべれば」
「おお、そうだな。わかったわかった。それじゃ普通に話そう」
「了解」
「あ~、それでだ。前にも言ったようにチャトラを撃ち落とすなどという手荒なことは一切するつもりはない」
「やっぱりそうなの。で、どうすんの?」
「そう先を急ぐでない」
「は~い」
「それで、今回の計画では、スワンボートでチャトラに接近し、ボートの先端でチャトラを押すのだ」
「それって、スワンボートの白鳥のくちばしのあたり?」
「いや、首の蝶ネクタイのあたりがよかろう。そしてそうすることで、チャトラの軌道を変え、50年後、再び地球に接近した時の、アポフィスへの衝突を回避する」
「押すのはいいけど、で、一体どうやって、チャトラまで行くの?」
「先日の実験で、お前さん一人でこいだ場合、スワンボートは人工衛星軌道に到達できた。これが何を意味するかというと、お前さん一人の脚力で毎秒8キロメートルを出せたということになる」
「それって人工衛星のスピードなの? たった1秒で、8キロメートルも?」
「そうだ。しかしチャトラは最接近時でも地球の重力圏外、すなわち地球から約2万キロ離れた宇宙空間にある。そしてわしの計算によると、チャトラまで到達するには、言い換えるとチャトラに追いつくには、毎秒21キロメートルの速度が必要なんだ」
「そんなに?」
「そうだ。そしてお前さん一人で毎秒8キロメートルの速度を出せたので、実は計算によると、毎秒21キロメートルを出すためには、お前さん7人分の脚力が必要だ」
「どうして? ぼく一人で毎秒8キロメートルだったら、7人で8×7で、ええと、毎秒56キロメートル出るじゃん」
「実は、スワンボートに搭載されたイオンエンジンの特性上、最高速度は足こぎパワーの平方根に比例する」
「ヘイホウコン?」
「ルートともいうが、中学で習う。まあそれはいいが、とにかくこの場合、2倍の速度を得るには2×2=4倍の脚力が必要なんだ。だから毎秒21キロメートルのチャトラに追いつくにはイチロウの7倍、つまり7人が必要なんだ」
21÷8=2.625
2.625×2.625=6.89
「そうか、7人かぁ…」
「しかし残念ながら、このスワンボートは最大でも5人乗りだ。もちろん後ろの座席にペダルを増設して、あと3人分を用意した。それでわしと、イチロウと、それからデビル君と、そして、あ~、ゆりちゃんの4人がこぐとして、あとそれ以外の誰かということになるのだが、しかしあと一人は3人分の脚力をもった人物が必要ということになる。そうしないと7人分の脚力にならない。そしてそうしないと、決してチャトラに追いつけないという計算になってしまうのだ」
「つまり3人分の脚力を持った人物が必要ってこと?」
「そうだ。そこでお前さんたちの知り合いで、誰かそういう怪力を持った人はおらんか?」
「3人分の怪力? ええとええとええと…、そうだ! 同級生にヤス子ちゃんて子がいる。ゆりちゃんとも仲良しだし」
「そのヤス子ちゃんとは、一体どういう子かね」
「ええと、たしか最近、自転車のジュニアロードレースで優勝してたよ」
「それだ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる