タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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空飛ぶ電動アシスト自転車

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 初めに謹んでお断りしますが、このエピソードは、実在の人物、団体、事故、事件等とは、一切関係ありません。しかし、飛行機を愛する者として、これまでに起こった数々の航空機事故に鑑み、空の安全を切に望むものであります。同時に、これまでの航空機事故にて命を奪われた方々に対し、心からの哀悼の意を表します。
 以下 作品本文



「あ~、ヤス子ちゃんの自転車トレーニングにもちょうどいいと思って、このスペースエアロバイクを作ったんだ」
「スペースエアロバイク?」
 ある日突然、ぼくは例のダサい無線機で呼び出され、しかもよりによってヤス子ちゃんと一緒に来いといわれた。
「そうだ。これはもちろん宇宙を飛ぶ予定だが、とりあえず十分に空を飛べる。それにスピードだってスワンボートに全く劣らない」
 それは車輪のない自転車…、そして、ぼくのお父さんがずいぶん前にダイエットだとかいって買ったものの、何回かこいで、だけどすぐにぜんぜんこがなくなって、それからお母さんが速攻で物置へ追いやった、ぼくの家にあるエアロバイクそっくりだった。
 もちろんいろんな機械が付けられ、それよりはずっと複雑だったけれど。
 とりわけ、外側には流線型のかっこいいカバーが…
「見てのとおり、これはいわゆるトレーニング用のエアロバイクを元に作ってある。これはスワンボート同様、イオンエンジンで飛ぶ。実は未来のわしは、スワンボートのエンジン用に、予備のエンジンの材料として二機分を持って来てくれておったのだ。そしてその一機をエアロバイクに搭載して…」
「つまり、ぼくのお父さんが買って、速攻で放置したエアロバイクみたいなのを、ばっちり魔改造したんだね。で、そのイオンエンジンとかを無理やりのせたんだろ」
「ずっと前から気付いておったが、どうもお前さん、魔改造という摩訶不思議な言葉に妙に凝っておるな」
「だって茶トラ先生が作ったものってみんな魔改造じゃん。証明写真も、スワンボートも」
「魔改造…、まあ、まったく一から作るよりも、すでにこの世に存在する何らかの機械をベースに作るほうが楽なのだ」
「魔改造は楽しそうだしね。で、これ、ヤス子ちゃんが飛ばすの?」
「もちろんそれもある。そしてこれはスワンボートの性能向上のための実験機でもある。というのは、このスペースエアロバイクの飛ぶ原理は、スワンボートと全く同じなのだ。つまり周囲のエネルギーを吸収し、強力なイオンエンジンを作動させ、それでこぐ力をアシストするのだ」
「つまり平たく言えば、『電動アシスト宇宙自転車』だね。そうだ! それじゃこれの名称は『宇宙電アシ』にしようよ。それの方が文字数が少なくていいだろう?」
「ねえ、これって私が乗ることが多いのでしょう。だったら私に名前付けさせなさいよ! ええと、これは空飛ぶ電動アシスト自転車みたいなもんだからさぁ、ええと、よし! 決めた! ソラデン! これで一字少ないでしょ」
「まあヤス子ちゃんがそう呼びたいのならわしは特に反対はせん。お前さんもそうだろう、イチロウ」
「かまわないよ。ヤス子ちゃんの意見に反対したってどうせゴリ押しされるし、あまり反対するとぶったた…」
「私がそんなに乱暴な女だとでも思っているの? そんなに人をぶたたいたりするわけないでしょ! もうぶったたくわよ!」
「ともあれ、あ~、『ソラデン』だな。それに言われてみれば結構いい名だ。わかった。それじゃこれから、こいつの操縦法を説明しよう…」

 そのソラデンのイメージは、前にも言ったように、お父さんが買って、ちょっとだけこいで、そして速攻で物置送りとした、室内用のエアロバイクと思えばだいたいそれでいい。
 もちろん車輪はなく、サドルとペダルがあって、前には固定されたハンドルがある。
 それと空中を、場合によっては宇宙を高速度で飛ぶために、全体が流線型のカバーで覆われ、もちろん外が見えるように、窓の部分は透明になっている。
 そしてカバーに着いた小さなドアを開けると、そこから中に入って乗ることが出来る。
 それで茶トラ先生の説明では、ソラデンは、こいだら普通にまっすぐ飛ぶ。
 ハンドルを手前へ引くと上昇するし、前へ押すと降下する。
 ちなみに、手前にいっぱい引くと垂直に上昇するし、前へいっぱいに押すと垂直に降下する。
 それから曲がりたいときはその方へ体重を移動するときれいに傾いて曲がるらしい。
 それでその日、暗くなってからみんなで代わる代わる「試乗会」をやった。
 やっぱり自転車と同じ感覚で飛ばせ、ただ自転車とちがうのは上昇と降下の操作だけだ。
 もちろんヤス子ちゃんは瞬く間に上手くなり、それから時々茶トラ先生の所へ来て、そのソラデンでも自転車のトレーニングをしているようだった。
 何でも地球を一時間足らずで一周して帰ってきているようだった。
 だけどこのソラデンが、意外なことに役立ったのだ。
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