86 / 121
ぴゃーちゃん未来へ
しおりを挟む
「お~い、イチロウ、帰ってきたぞ!」
それから茶トラ先生は興奮気味に言った。
「何と言ってもこのスワンボートは人工衛星速度で飛べるのだ。加速、減速の時間も含め、関西まで2分ほどで到着したんだ。そしてそこで製鋼会社のシブガキさんにクレーンで遮蔽物を積んでもらった。それからその足で関東まで飛び、こんどはサトウさんに早速ソルト焼入れをしてもらい、すぐさまスワンボートに積み込んで、一気にここまで飛んできた。それにしてもヤス子ちゃんの脚力はたいしたものだ。重さ5トン以上の重量物を積んでも、人工衛星速度が出せたのだ。だから移動のための時間は全部で7分ほどだった。つまりほとんどの時間は積み込みと焼入れのための時間だったんだ」
「へぇ~、関西と関東へ行って? それはそれはヤス子ちゃんお疲れさん」
「かるいもんよ。なんたって大切なぴゃーちゃんのためだし」
「で、茶トラ先生、これからどうするの?」
「まずぴゃーちゃんをカゴに入れる。カゴは昨日わしが作った。それからカゴごと遮蔽物に入れるのだ。あ~、遮蔽物に入れるに際し、カゴが縦になって、ぴゃーちゃんに少々申し訳ないが」
「どうやって入れるの?」
「このフタを開けるのだ」
茶トラ先生はそう言ってから、その超重量級冷蔵庫、つまり、その遮蔽物の横っ腹にある小さな、だけどものすごく分厚い鉄で出来た、それはそれは重そうなフタを怪力で開け、すると中に小さな部屋があり、そのなかにぴゃーちゃんをカゴごと入れ、そしてまた超重いフタを閉めた。
それからスワンボートからタイムエイジマシンへ、その重量級冷蔵庫をスライドして(下に小さな車輪が付いていた)タイムエイジマシンへ乗せ、それからぴゃーちゃんはタイムエイジマシンで五十年後の未来へと送られた。
「で、これからぴゃーちゃんどうなるの?」
「そうよ。わたしもこれからぴゃーちゃんがどうなるか、詳しくきいてないし。だけど未来の獣医さんに診てもらうんでしょ?」
「もちろんそうだ。実はわしは未来のわしに相談し…」
「茶トラ先生がどうやって未来のわしに相談するの?」
「簡単なことだ。タイムエイジマシンで未来へ手紙を送ればいい。幸い、手紙は歳をとらん。すなわち、無生物はエイジマシンの影響を受けないんだ」
「なるほどね。たしかに茶トラ先生が骨になったとき、着ていた服はそのままだったもんね」
「その類の話題はもう百万回聞いた。えへん。で、わしは未来に、とある獣医さんと友人になる。その人は未来のわしがフクドンと呼んでおるそうだが、それで未来のわしが、猫のぴゃーちゃんのことをフクドンに相談すると、それなら五十年後の未来なら、その状態でも楽勝で治療できるから、いつでも連れておいでと言われたそうだ。だがエイジマシンの影響があるから、ぴゃーちゃんを生きたまま五十年後の未来へ送ることは不可能だった。しかし今回、製鋼会社のシブガキさんと、ソルト焼入れのサトウさんと、そしてヤス子ちゃんのおかげで、遮蔽物の製作と焼入れと運搬が可能になった。そしておそらくぴゃーちゃんは、すでに五十年後の未来へ行き、フクドンの手厚い治療を受けておるだろう」
「そうなんだ!」
「じゃ、ぴゃーちゃんは元気になるのね」
「もちろんだ」
「やったね!」
「私、うれしい!」
「さてさて、そろそろぴゃーちゃんは、元気な姿で五十年後の未来から送り返されて来るだろう」
ヤス子ちゃんの猫 完
それから茶トラ先生は興奮気味に言った。
「何と言ってもこのスワンボートは人工衛星速度で飛べるのだ。加速、減速の時間も含め、関西まで2分ほどで到着したんだ。そしてそこで製鋼会社のシブガキさんにクレーンで遮蔽物を積んでもらった。それからその足で関東まで飛び、こんどはサトウさんに早速ソルト焼入れをしてもらい、すぐさまスワンボートに積み込んで、一気にここまで飛んできた。それにしてもヤス子ちゃんの脚力はたいしたものだ。重さ5トン以上の重量物を積んでも、人工衛星速度が出せたのだ。だから移動のための時間は全部で7分ほどだった。つまりほとんどの時間は積み込みと焼入れのための時間だったんだ」
「へぇ~、関西と関東へ行って? それはそれはヤス子ちゃんお疲れさん」
「かるいもんよ。なんたって大切なぴゃーちゃんのためだし」
「で、茶トラ先生、これからどうするの?」
「まずぴゃーちゃんをカゴに入れる。カゴは昨日わしが作った。それからカゴごと遮蔽物に入れるのだ。あ~、遮蔽物に入れるに際し、カゴが縦になって、ぴゃーちゃんに少々申し訳ないが」
「どうやって入れるの?」
「このフタを開けるのだ」
茶トラ先生はそう言ってから、その超重量級冷蔵庫、つまり、その遮蔽物の横っ腹にある小さな、だけどものすごく分厚い鉄で出来た、それはそれは重そうなフタを怪力で開け、すると中に小さな部屋があり、そのなかにぴゃーちゃんをカゴごと入れ、そしてまた超重いフタを閉めた。
それからスワンボートからタイムエイジマシンへ、その重量級冷蔵庫をスライドして(下に小さな車輪が付いていた)タイムエイジマシンへ乗せ、それからぴゃーちゃんはタイムエイジマシンで五十年後の未来へと送られた。
「で、これからぴゃーちゃんどうなるの?」
「そうよ。わたしもこれからぴゃーちゃんがどうなるか、詳しくきいてないし。だけど未来の獣医さんに診てもらうんでしょ?」
「もちろんそうだ。実はわしは未来のわしに相談し…」
「茶トラ先生がどうやって未来のわしに相談するの?」
「簡単なことだ。タイムエイジマシンで未来へ手紙を送ればいい。幸い、手紙は歳をとらん。すなわち、無生物はエイジマシンの影響を受けないんだ」
「なるほどね。たしかに茶トラ先生が骨になったとき、着ていた服はそのままだったもんね」
「その類の話題はもう百万回聞いた。えへん。で、わしは未来に、とある獣医さんと友人になる。その人は未来のわしがフクドンと呼んでおるそうだが、それで未来のわしが、猫のぴゃーちゃんのことをフクドンに相談すると、それなら五十年後の未来なら、その状態でも楽勝で治療できるから、いつでも連れておいでと言われたそうだ。だがエイジマシンの影響があるから、ぴゃーちゃんを生きたまま五十年後の未来へ送ることは不可能だった。しかし今回、製鋼会社のシブガキさんと、ソルト焼入れのサトウさんと、そしてヤス子ちゃんのおかげで、遮蔽物の製作と焼入れと運搬が可能になった。そしておそらくぴゃーちゃんは、すでに五十年後の未来へ行き、フクドンの手厚い治療を受けておるだろう」
「そうなんだ!」
「じゃ、ぴゃーちゃんは元気になるのね」
「もちろんだ」
「やったね!」
「私、うれしい!」
「さてさて、そろそろぴゃーちゃんは、元気な姿で五十年後の未来から送り返されて来るだろう」
ヤス子ちゃんの猫 完
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる