タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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ぴゃーちゃん未来へ

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「お~い、イチロウ、帰ってきたぞ!」
 それから茶トラ先生は興奮気味に言った。
「何と言ってもこのスワンボートは人工衛星速度で飛べるのだ。加速、減速の時間も含め、関西まで2分ほどで到着したんだ。そしてそこで製鋼会社のシブガキさんにクレーンで遮蔽物を積んでもらった。それからその足で関東まで飛び、こんどはサトウさんに早速ソルト焼入れをしてもらい、すぐさまスワンボートに積み込んで、一気にここまで飛んできた。それにしてもヤス子ちゃんの脚力はたいしたものだ。重さ5トン以上の重量物を積んでも、人工衛星速度が出せたのだ。だから移動のための時間は全部で7分ほどだった。つまりほとんどの時間は積み込みと焼入れのための時間だったんだ」
「へぇ~、関西と関東へ行って? それはそれはヤス子ちゃんお疲れさん」
「かるいもんよ。なんたって大切なぴゃーちゃんのためだし」
「で、茶トラ先生、これからどうするの?」
「まずぴゃーちゃんをカゴに入れる。カゴは昨日わしが作った。それからカゴごと遮蔽物に入れるのだ。あ~、遮蔽物に入れるに際し、カゴが縦になって、ぴゃーちゃんに少々申し訳ないが」
「どうやって入れるの?」
「このフタを開けるのだ」
 茶トラ先生はそう言ってから、その超重量級冷蔵庫、つまり、その遮蔽物の横っ腹にある小さな、だけどものすごく分厚い鉄で出来た、それはそれは重そうなフタを怪力で開け、すると中に小さな部屋があり、そのなかにぴゃーちゃんをカゴごと入れ、そしてまた超重いフタを閉めた。
 それからスワンボートからタイムエイジマシンへ、その重量級冷蔵庫をスライドして(下に小さな車輪が付いていた)タイムエイジマシンへ乗せ、それからぴゃーちゃんはタイムエイジマシンで五十年後の未来へと送られた。
「で、これからぴゃーちゃんどうなるの?」
「そうよ。わたしもこれからぴゃーちゃんがどうなるか、詳しくきいてないし。だけど未来の獣医さんに診てもらうんでしょ?」
「もちろんそうだ。実はわしは未来のわしに相談し…」
「茶トラ先生がどうやって未来のわしに相談するの?」
「簡単なことだ。タイムエイジマシンで未来へ手紙を送ればいい。幸い、手紙は歳をとらん。すなわち、無生物はエイジマシンの影響を受けないんだ」
「なるほどね。たしかに茶トラ先生が骨になったとき、着ていた服はそのままだったもんね」
「その類の話題はもう百万回聞いた。えへん。で、わしは未来に、とある獣医さんと友人になる。その人は未来のわしがフクドンと呼んでおるそうだが、それで未来のわしが、猫のぴゃーちゃんのことをフクドンに相談すると、それなら五十年後の未来なら、その状態でも楽勝で治療できるから、いつでも連れておいでと言われたそうだ。だがエイジマシンの影響があるから、ぴゃーちゃんを生きたまま五十年後の未来へ送ることは不可能だった。しかし今回、製鋼会社のシブガキさんと、ソルト焼入れのサトウさんと、そしてヤス子ちゃんのおかげで、遮蔽物の製作と焼入れと運搬が可能になった。そしておそらくぴゃーちゃんは、すでに五十年後の未来へ行き、フクドンの手厚い治療を受けておるだろう」
「そうなんだ!」
「じゃ、ぴゃーちゃんは元気になるのね」
「もちろんだ」
「やったね!」
「私、うれしい!」
「さてさて、そろそろぴゃーちゃんは、元気な姿で五十年後の未来から送り返されて来るだろう」

 ヤス子ちゃんの猫 完
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