タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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その夜

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 そして物理学会出席予定の日の夜晩く、ださいケイタイ風無線機がぶーと鳴り、ぼくは茶トラ先生に「ただちに来るように」と言われた。
 それで何かあったのかな? と思って、ぼくはこっそりと家を抜け出して、自転車で先生のところへと向かった。
 もちろん茶トラ先生は出席をキャンセルしているので実験室に…、いやいや、実は先生は家の二階の小さな部屋にコントロールルームを作っていた。
 それでぼくは、そのときの無線で指示されたとおり、先生の家の裏へ回り、自転車を置き、そこにある非常階段のから直接、そっと二階へ上がり、すると先生が手招きしたので、ぼくはそのコントロールルームへ入った。
 そこにはずらりとモニターが並び、キーボードがあり、いろいろ機械があり、そして茶トラ先生はいかにも学会へ行くような出で立ちで、(茶トラスーツその他…)コントロールルームの椅子に座り、再びモニターを見始めた。
 それから茶トラ先生は、少し小さめの声でしゃべりはじめた。
「実は今日の昼過ぎ、わしは物理学会へ行くふりをして家から外出した。わしが学会へ出発したと奴らに思わせるためだ。それから暗くなってからこっそりと家へ戻り、裏口の非常階段を上がってここへ来た。お前さんがやったのと同様にな」
「そうなの。だからまだその格好?」
「それで実は、先ほどホシがわしの実験室へ押し入り、そして現在タイムエイジマシンの中へ入っておる」
「星? じゃ、天体望遠鏡でぶっ叩く?」
「ホシとは犯人のことだ」
「うん。わかってるよ」
「そして現在、タイムエイジマシンの中の時間は止めてある。あの空間の時を制御しておるのだ」
「あの運動会のときのマイムマイムみたいに? でもどうして?」
「とりあえずこれでホシは、身動きできん」
「じゃ、タイムエイジマシンはホシの捕獲器なんだね」
 それでぼくがモニターの一つを見たら、それはマシン内部を写す監視カメラの映像で、犯人らしい人物が、マイムマイムのときのゆりちゃんみたいに、思い切り固まっていた。
 ちなみに別のモニターには顔認証のために撮影された犯人の顔が映し出させていたけれど、目出し帽をかぶり、顔は全く分からない様子だった。
「ホシはこんな格好で押し入ってくるのだ。ろくでもない連中であることは間違いない。だが顔認証システムはまだ動作させておらん」
「どうして?」
「奴をおとりにするからだ」
「へぇ~、だけどマイムマイムのとき地震を何とかした、この時の制御機能が、犯人を金縛りにもできるんだね。すごいよね」
「ひとつのアイディアにはたくさんの利用法があるのだ。頭は使いようだ」
「なるほどねえ。で、どうするの?」
「とりあえずこのホシは泳がせる」
「マシンの中にプールなんかないけど」
「泳がせるとは、とりあえず監視しながら自由に行動させ、それを観察するのだ」
 そう言うと、それから茶トラ先生は時の制御を解いた。
 すると犯人は手袋をした手でリモコンを操作しはじめた。
 もちろん操作の内容はコントロールルームの別のモニターにもリアルタイムで表示されている。
「やっぱりな。ホシは来年の物理学会の日程中の日に移動しようとしておる。つまり行った先でもわしはおらんという計算だろう」
 それから未来の実験室の監視カメラを通して、犯人はマシンを出て、実験室も出て、どこかへと行ってしまうのがわかった。
「いいの? そんなことさせて」
「心配いらん。必ず戻ってくるわい」
「じゃ、ここでモニター見ながら待つの? ところで、ええと、もしかして、これって未来の映像?」
「そうだ。現在この監視システムが存在する以上、未来にもそのシステムは存在する。そして現在と未来はマシンの内部でリンクしておるから、未来の映像も見ることができるのだ」
「へぇー。いつもながら、茶トラ先生ってものすごい機械作るよね」
「長年ず~~と研究しておるからだ。それで、あ~、しかもこのシステムでは、時の流れは自由自在だ。だからホシが帰ってくるまで延々とここでモニターとにらめっこの必要もない」
 そういうと茶トラ先生はキーボードを操作し、未来の時を「早送り」した。
 するとしばらくして、例の目出し帽姿の犯人が資料のようなものを小脇に抱え、コマ送りするようにさくさくと実験室へ戻ってくる映像が見え、それからタイムエイジマシンに入った。
 それで茶トラ先生が時の制御を元に戻すと、犯人は再びリモコンを操作し、それからぼくらのいる現在へと戻ってきた。
 それで茶トラ先生は再び時を制御して止めた。
 すると犯人はまた固まった。
 それから茶トラ先生はなぜかぼくに、時の制御の操作法を教え始めた。
 とにかく「時を止める」と、そして「元に戻す」の操作法を手早く教えてくれたのだ。
 理由はさておき。
 それから茶トラ先生は、「モニターをよく見ていろ」と言ってから、得意のハンカチとクロロホルムの入った茶色の小瓶を手に取り、コントロールルームを出て階段を降り、一階の実験室へと向かった。
 ちなみにクロロフォルムとは、以前、ラジコン飛行場でぼくがお父さんの替え玉になるときに、トイレでお父さんを眠らせたアイテムだ。
 それからイカサマ契約を阻止するためにデビルのお父さんを眠らせたり、それからペテン師を眠らせたりいろいろ…
 それから茶トラ先生は実験室のタイムエイジマシンの前で、例の茶色の小瓶を開け、ハンカチにクロロフォルムを浸しているようだった。
 その様子は実験室の監視カメラでとらえられ、モニターできれいに見ることが出来た。
 そして茶トラ先生は監視カメラに向かって合図をし、それは「時の制御を元に戻せ」という意味だとすぐに分かったので、ぼくは言われたとおり、キーボードを操作して時の制御を元に戻した。
 つまり、そのとき犯人は普通に動けるのだ。
 そして何と、茶トラ先生は、タイムエイジマシンのカーテンをガバっと開けた。
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