タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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スワンボートの性能向上

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「あ~、わしは最近スワンボートの性能向上に成功し、とうとう月までの飛行が可能になったのだ」
「え~! それってすごいじゃん」
 ある日ぼくは、またまた茶トラ先生の実験室で話をしていたら、茶トラ先生が器用に試験管に入れたコーヒーを、口を尖らせて飲みながら、ドヤ顔でこんな話をした。
「ねえ、もう試験管しかないの?」
「フラスコもビーカーも、つい先ほど実験で使ったのだ。それはスワンボートのイオンエンジン性能向上のための、あ~、化学的な実験に必要だった」
「へぇー、そうなの。化学実験ねぇ。物理学者が? で、スワンボート、どうやったの?」
「あ~、その性能向上についてだが、それは意外と簡単な話だった。まず、スワンボートのペダルに電動アシスト自転車のアシスト装置を付けたのだ」
「電動アシスト自転車のアシスト装置の実験に化学実験をしたの?」
「いやいや、それはまた別の話だ」
「そうなんだ。じゃ、また電動アシスト自転車の廃物利用?」
「はっきり言ってそうだ。実はわしのつてで、とある電動アシスト自転車のメーカーに、アシスト装置を分けてもらったのだ。15個ほど」
「15個も?」
「そうだ。わしは工業界にも意外と顔が広いのだぞ」
「ああ、鋼鉄製の遮蔽物とか、ソルト焼き入れとかだね」
「それで、あ~、スワンボートの各ペダルに、そのアシスト装置を各々3個ずつ取り付けた」
「へぇ~」
「そして電動アシスト自転車は、ペダルをこぐ力を3倍に増やすので、3個付ければ9倍になる」
「なるほど」
「それと、ソラデンに積んでおったイオンエンジンもスワンボートに移し替えた」
「え~、じゃぁもうソラデンは飛ばないの?」
「また戻せばすぐに飛ぶ」
「そうか」
「そういうわけで、スワンボートの推力は、電動アシスト装置で9倍に。そしてイオンエンジンの数が倍になったので、合計で18倍の推力になったのだ」
「すごい!」
「それだけではない」
「まだあるの?」
「それからわしが、未来のわしらとも相談して、イオンエンジンの改良にも成功したのだ。これは、イオンを発生する電極の改良が出来たからだ。そしてこれは化学的な改良だった」
「それでその実験に、ビーカーとフラスコが必要だったのか」
「そうだ。それで、その改良で約3割の推力向上に成功した。したがってこれらの改良を全て合わせると、あ~、断わっておくが断じて魔改造ではないぞ! で、あ~、合計で25倍の推力向上となった。だから速度はその平方根で5倍だ」
「するとスピードは?」
「小惑星チャトラの軌道を変える時に、わしら、つまりわしとお前さんと、デビル君と、ゆりちゃんと、そしてヤス子ちゃんの5人の脚力で毎秒21キロメートルを記録しておる。したがって、その5倍なら毎秒110キロメートルになる」
「毎秒110キロメートルかぁ」
「そうすると毎分6600キロメートル。そして一時間で約40万キロメートルになる」
「ええと、たしか月まで38万キロメートルだから、一時間かかんない?」
「加速、減速の時間を含めても一時間と少々で月まで行けるという計算になる」
「で、月へ行くの?」
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