タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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月へ

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 それからしばらくしたある日の夕方、ぼくとデビルとヤス子ちゃんと、そしてゆりちゃんは茶トラ先生の家へ呼ばれ、ガレージに集まった。
 実はその日、西の空に低く、三日月が光っていた。
 そしてなぜか茶トラ先生は、お月見のお団子を持ってこいというので、ヤス子ちゃんとゆりちゃんがお団子をつくって、三宝という、お月見の団子を乗せる台に乗っけて持ってきた。
 ヤス子ちゃんが作ったお団子は白くて丸いの。
 ゆりちゃんはあんこのついたの。(おいしそう!)
 それにしても三日月を見ながら、ガレージでお月見?って思ったていたら…、だってお月見は満月だし。でもどうして?
 そしてガレージには、いつもより少しだけ物々しい姿のスワンボートが置いてあった。
 ちなみにデビルは、「早速団子食おうぜ」と言ったが、ヤス子ちゃんに、
「田中君、犬みたいに食い意地はってるんだから!」とたしなめられ、さすがのデビルもヤス子ちゃんにはさからえないので、そのままおとなしくしてて、それで三宝に乗ったお団子は、その物々しいスワンボートのコックピットに「お供え」された。つまりスワンボートに乗って「三日月見」?
 ところで、どういう風に物々しいかというと、まず、両側にビジネスジェットのエンジンみたいに、追加された二個のイオンエンジンが付けてあり、ボートの後ろには大きな丸いタンクが付いていたのだ。
 水をためるタンクだそうだ。
 そしてその水は、宇宙を飛ぶときの酸素の原料だと言う。
 つまりスワンボートのエンジンで発電した電気で水を電気分解し、水素と酸素を得るらしい。
 ちなみに水素は燃料として利用されるそうだ。
 とにかく、物々しいスワンボートに乗って細いお月をお月見というわけではなく、どうやらこれからみんなで、何と、月へ行くというのだ!
 それで二つの三宝に乗せた、二種類のお月見のお団子とともに、みんなでスワンボートに乗り込み、早速出発となった。
 みんなでペダルをこぐとボートは豪快に上昇し、そしてボートが西を向いたら、目の前に見事な三日月が見えた。
 それからみんなで全力でこいだら、これまでになかったようなものすごい加速で、あっという間に地球を脱出し、よく見ているとその細い月が少しずつ大きくなり始めた。大きく…、といっても三日月、半月…、と太っていくのではなく、三日月の姿のまま大きくなっていった。つまり、ばりばり月に接近していたのだ。
「現在最高速度に到達した。秒速110キロメートル。一分間に6600キロメートルだ」
「それってものすごい速さなんだよね」
「ねえ、これってわたしがソラデンで出す速度よりもずっと速いんでしょう?」
「もしこのスピードで地球を一周したら、7分ほどしかかからないだろう」
「ひえ~! まぢ? 私、ソラデンで地球一周一時間切るかどうか…ってとこだったのに!」
「つまり現在人工衛星速度の約13倍というところだな。それで月まで約一時間で行けるのだ」
「つまり茶トラ先生の魔改造につぐ魔改造で、恐るべき性能向上ってわけね」
「だがこの速さでも火星までは十日前後かかる」
「そうなんだ」
 そんな話をしながら、ぼくらが前を見たら、やっぱり少しずつ月が大きくなり、後ろを振り返ると、地球が少しずつ小さくなっていった。
 それから、スピードが付いたらもうペダルをこぐ必要はなかった。
 宇宙空間は空気抵抗がないので、そのまま「慣性」でとんでいくのだ。
「これを慣性に法則というのだ」と、茶トラ先生がドヤ顔で言った。
 そしてそれからも、月はどんどん大きくなって、しばらくすると、それはもう巨大な月が目の前に迫った。大部分は「欠けた」部分だけど、地球の光を受け、結構明るかった。
 そしてスワンボートはそれからもどんどんと月へと近づいた。
 それから茶トラ先生は「逆噴射だ」と言って、ぼくが「どうするの?」ときくと、「ペダルを逆に回せ」という。
 なるほど! こんなところはお池の「スワンボート」そっくりだ。
 いやいや、これはスワンボートだ。
 それで、みんなで必死にペダルを逆回転させ、すると減速しながら月に近づき、それから茶トラ先生は、ちょうど「月のうさぎさん」の片方の耳のあたりに向けてスワンボートを飛行させた。
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