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猫カゼをなおす不思議な棒
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前にも言ったように、ぼくには猫カゼの持病がある。
ぼくが仔猫のころにかかったんだ。そして毎年冬になると、いつもそれに悩まされた。
ある朝起きると、ものすごくきつくて、目やにで目は開けにくいし、鼻はつまるしくしゃみは出るし、だからこれはもう完全に猫カゼだった。
それでぼくが、顔をどろどろにして、段ボールの巣から出てみると、ちょうどやってきたあの人間が、心配そうにぼくを見た。
そしてちょうどそのときぼくは豪快にくしゃみが出て、鼻水が飛び散った。
するとあの人間は「おやまあ、どうしたの?」という顔をして、それから少し心配そうな顔になり、だけどとぼとぼと歩いてどこかへと行ってしまった。
ぼくは少しだけ「薄情な奴」と思ったけれど、あの人間にだってすることがいろいろあるだろう。
キャットフードの狩りもしないといけないだろうし。
そう思って、それでぼくはあの人間が作ってくれた巣に入り、一日中寝ていた。
それから夕方になり、あの人間がキャットフードを持ってきたのかと思うとそうではなく、いきなりぼくは抱っこされ、仰向けにされた。
それからあの人間は、いきなりぼくの口の中に、何か棒のようなものを押し込んだ。
何というひどいこと、と、ぼくは思ったけれど、そのうちにその棒から水のようなどろんとした、変なものが出て来た。
味はそれほど悪くはなかった。
だけど最初ぼくは「とんでもないことをされた」と思っていた。
あのおじいさん猫は「いい人間」だと言っていたけれど、やっぱりとんでもない人間だと、そのときぼくはちょっとだけ思った。
でもその変などろんとしたものを飲み終えると、それからすぐにぼくの鼻や目を、何か白いひらひらしたものでなめてくれた。
それでぼくはなんとなく、あの人間はぼくの猫カゼをなめて治してくれるのかな♪ なんて考えたりもした。
だけど、どちらでもよかった。
そもそも、ぼくは猫カゼでとても体がきつかったし、それで「もういいや!」と、豪快にあきらめることにした。
あきらめた頃、ぼくは元通り地面に戻され、それから目の前に置かれたキャットフードを食べた。
口の中が痛かったのでキャットフードの味もあまり分からず、それでぼくはキャットフードを丸のみにして必死に食べた。
それから何日かのあいだ、ぼくは朝に夕にあの人間に抱っこされ、仰向けにされ、それから口の中に棒を押し込まれ、どろんとしたものが出てきて、それをぼくはぺちゃぺちゃと飲み込んだ。
それから何日かして、ぼくはどんどん元気になっていった。
不思議だった。
だけど、とにかくぼくは元気になり、あの人間はそれを見計らうように、ぼくを仰向けにすることはなくなった。
きっとあの棒には、病気を治す不思議な力があるのだろう。ぼくは後からそう考えた。
ぼくが仔猫のころにかかったんだ。そして毎年冬になると、いつもそれに悩まされた。
ある朝起きると、ものすごくきつくて、目やにで目は開けにくいし、鼻はつまるしくしゃみは出るし、だからこれはもう完全に猫カゼだった。
それでぼくが、顔をどろどろにして、段ボールの巣から出てみると、ちょうどやってきたあの人間が、心配そうにぼくを見た。
そしてちょうどそのときぼくは豪快にくしゃみが出て、鼻水が飛び散った。
するとあの人間は「おやまあ、どうしたの?」という顔をして、それから少し心配そうな顔になり、だけどとぼとぼと歩いてどこかへと行ってしまった。
ぼくは少しだけ「薄情な奴」と思ったけれど、あの人間にだってすることがいろいろあるだろう。
キャットフードの狩りもしないといけないだろうし。
そう思って、それでぼくはあの人間が作ってくれた巣に入り、一日中寝ていた。
それから夕方になり、あの人間がキャットフードを持ってきたのかと思うとそうではなく、いきなりぼくは抱っこされ、仰向けにされた。
それからあの人間は、いきなりぼくの口の中に、何か棒のようなものを押し込んだ。
何というひどいこと、と、ぼくは思ったけれど、そのうちにその棒から水のようなどろんとした、変なものが出て来た。
味はそれほど悪くはなかった。
だけど最初ぼくは「とんでもないことをされた」と思っていた。
あのおじいさん猫は「いい人間」だと言っていたけれど、やっぱりとんでもない人間だと、そのときぼくはちょっとだけ思った。
でもその変などろんとしたものを飲み終えると、それからすぐにぼくの鼻や目を、何か白いひらひらしたものでなめてくれた。
それでぼくはなんとなく、あの人間はぼくの猫カゼをなめて治してくれるのかな♪ なんて考えたりもした。
だけど、どちらでもよかった。
そもそも、ぼくは猫カゼでとても体がきつかったし、それで「もういいや!」と、豪快にあきらめることにした。
あきらめた頃、ぼくは元通り地面に戻され、それから目の前に置かれたキャットフードを食べた。
口の中が痛かったのでキャットフードの味もあまり分からず、それでぼくはキャットフードを丸のみにして必死に食べた。
それから何日かのあいだ、ぼくは朝に夕にあの人間に抱っこされ、仰向けにされ、それから口の中に棒を押し込まれ、どろんとしたものが出てきて、それをぼくはぺちゃぺちゃと飲み込んだ。
それから何日かして、ぼくはどんどん元気になっていった。
不思議だった。
だけど、とにかくぼくは元気になり、あの人間はそれを見計らうように、ぼくを仰向けにすることはなくなった。
きっとあの棒には、病気を治す不思議な力があるのだろう。ぼくは後からそう考えた。
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