オーラム星の少年プロ野球

山田みぃ太郎

文字の大きさ
35 / 50

本当のことを言ったのに

しおりを挟む
 今シーズン、僕はそこそこ活躍したし、だから僕の年俸は結構上がるはずだったけれど、セリア君は球団事務所の人に、
「ええと、実はダイスケ君はおうちの人の都合でぇ、突然田舎へ帰らなければいけなくなったんですぅ…」と、入団の時と同様でたらめな説明をし、そうして僕はプロキオンズを去る事となった。
 それから僕が地球へ帰る日が近づいた。
 だけど僕は、くどくどとだだをこねていた。

「ねえ、タイムエイジマシンさえあればぁ、僕は何年でもここにいられるんじゃないの? 帰るときに僕を十二歳の夏休みに戻せばいいだけじゃん。簡単だよ」
 僕はみんなと野球を続けたいという思いもあったけれど、何と言ってもエリアちゃん!
 だから僕はもっとこの星にいたかった。だってエリアちゃんと別れるのはとてもつらいんだもん。
 もちろんお父さんの事も心配だけど、運命変更にはカップラーメンみたいに「頃合いを見計る」方がいいらしい。
 そうすると僕がこの星にあと少々長くいるのは、運命変更にもかえって都合がいいのでは? なんて、僕は思い切り我田引水な考え方をしていたんだ。

「そういう訳にもいかないんだ。君の本当の年齢、つまり君が生まれてから実際に経験した時間の長とぉ…、ええと、わかるかい?」
「僕が生まれてから今までに流れた時の長さ?」
「よく分っているじゃん♪つまり君が生まれてから流れた時間とエイジマシンで作られた年齢に、あまり大きな差があってはいけないんだ」
「でも、この前僕はお父さんの年齢になったよ」
「そういう意味じゃない! あれは一時間かそこらの間だったから。だけどもし君がオーラム星に何年もいた後に地球へ帰ったら、君は一生そのずれた年齢で生きていかなければならない。だから年齢のずれは半年くらいが限界なんだ。というのは、エイジマシンの効果は一年ほどで自然に消えてしまうからさ」
「一年で? で、そうすると?」
「一年で自然に本当の年齢に戻る。だから君が十年もオーラム星にいたらとんでもない事になる。例えば君が地球で十三歳の時、二十三歳の姿になったらどうする?」
「へぇ~♪」
「へぇ~♪じゃない。まじめに聞け! だから半年くらいが限界だろう? それにカップラーメンだって十年も待っていたらどうなると思う?」
 どうもカップラーメンの例えは分かりにくい。だけどやっぱり僕は半年くらいで地球へ帰らないといけないみたいだった。
 例えば僕が何十年もここにいて、それからタイムエイジマシンで十二歳の姿に戻って、で、時間も戻して、そして地球へ帰る。
 だけど一年後にエイジマシンの効果が消えて本当の姿に戻る。何十年もいたならば、僕はいきなりおじいさん。これじゃリアル浦島太郎だ。

 そういうわけで、僕はおとなしく地球へ帰る事になった。で、慣れ親しんだ選手寮の自分の部屋を片付け始めた。ちなみに愛車のイカルス350はギューリキ君にあげる事にした。
 まだ安月給だったから、とても喜んでくれたみたい。
 だけど僕にとって大問題はエリアちゃんだ!
 そりゃお父さんやお母さんや妹に逢えるのは嬉しかった。お父さんの事も、もちろん心配だし。
 だけどエリアちゃんと逢えなくなるのは、僕にとっては重大問題だったんだ。
 それにもし僕が地球へ帰るのなら、僕はエリアちゃんに何て言えばいいの?
 この夏、セントバーナード山頂でデートしたとき、僕が地球人だと打ち明けても、エリアちゃんは信じてくれなかった。(サファイア星だぞ!)
 前にも言ったように、一般の人は地球に知的生命はいないと思わされているからだ。もちろん硫酸銅の海の事も…

「…という訳なんだ。僕は本当にサファイア星人なんだ。だから僕はもうすぐサファイア星に帰らないといけないんだ」
 その夜、僕はイカルスを飛ばしてエリアちゃんに逢いに行った。
 きっとこれが最後のデートだ。
 僕らはスコーピオンのイカしたベンチに座り、僕は思い切ってもう一度、その話した。

「サファイア星には知的生命なんていないのよ! そんな事も知らないの? あそこは硫酸銅の海なよ!」
「本当なんだ。嘘じゃない。そして僕は半年しかオーラム星にいる事が許されていないんだ。だからもうじきサファイア星へ帰らないと…」
「そんなの嘘に決まっているわ! つまりもう私とは逢いたくないという事なのね。だったらそんなおとぎ話なんかしないで、本当の事を言って欲しかった。男らしく、『君にはもう逢いたくない』って。最後の最後に、あなたがそんなふざけた事を言って優位に立とうとしてることくらい、私には分かるわ。もう最低! 幻滅だわ。本当に酷い。ダイスケ君ってそんな人だったのね!」
 パチン!ビシ!
 いきなりエリアちゃんに往復ビンタを食わされた。
 その勢いで通訳メガネと通訳耳栓が吹っ飛んだ。
 エリアちゃんはそれからも怒っていろいろとしゃべっていたけれど、僕には……
「★☆*?!▲☆◆☆*★□◎………」
 だけど通訳ガムの効果でしゃべる事は出来た。
「違うよ違うよ。本当に僕はサファイア星へ……」
 何を言っても無駄だったけれど…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...