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本当のことを言ったのに
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今シーズン、僕はそこそこ活躍したし、だから僕の年俸は結構上がるはずだったけれど、セリア君は球団事務所の人に、
「ええと、実はダイスケ君はおうちの人の都合でぇ、突然田舎へ帰らなければいけなくなったんですぅ…」と、入団の時と同様でたらめな説明をし、そうして僕はプロキオンズを去る事となった。
それから僕が地球へ帰る日が近づいた。
だけど僕は、くどくどとだだをこねていた。
「ねえ、タイムエイジマシンさえあればぁ、僕は何年でもここにいられるんじゃないの? 帰るときに僕を十二歳の夏休みに戻せばいいだけじゃん。簡単だよ」
僕はみんなと野球を続けたいという思いもあったけれど、何と言ってもエリアちゃん!
だから僕はもっとこの星にいたかった。だってエリアちゃんと別れるのはとてもつらいんだもん。
もちろんお父さんの事も心配だけど、運命変更にはカップラーメンみたいに「頃合いを見計る」方がいいらしい。
そうすると僕がこの星にあと少々長くいるのは、運命変更にもかえって都合がいいのでは? なんて、僕は思い切り我田引水な考え方をしていたんだ。
「そういう訳にもいかないんだ。君の本当の年齢、つまり君が生まれてから実際に経験した時間の長とぉ…、ええと、わかるかい?」
「僕が生まれてから今までに流れた時の長さ?」
「よく分っているじゃん♪つまり君が生まれてから流れた時間とエイジマシンで作られた年齢に、あまり大きな差があってはいけないんだ」
「でも、この前僕はお父さんの年齢になったよ」
「そういう意味じゃない! あれは一時間かそこらの間だったから。だけどもし君がオーラム星に何年もいた後に地球へ帰ったら、君は一生そのずれた年齢で生きていかなければならない。だから年齢のずれは半年くらいが限界なんだ。というのは、エイジマシンの効果は一年ほどで自然に消えてしまうからさ」
「一年で? で、そうすると?」
「一年で自然に本当の年齢に戻る。だから君が十年もオーラム星にいたらとんでもない事になる。例えば君が地球で十三歳の時、二十三歳の姿になったらどうする?」
「へぇ~♪」
「へぇ~♪じゃない。まじめに聞け! だから半年くらいが限界だろう? それにカップラーメンだって十年も待っていたらどうなると思う?」
どうもカップラーメンの例えは分かりにくい。だけどやっぱり僕は半年くらいで地球へ帰らないといけないみたいだった。
例えば僕が何十年もここにいて、それからタイムエイジマシンで十二歳の姿に戻って、で、時間も戻して、そして地球へ帰る。
だけど一年後にエイジマシンの効果が消えて本当の姿に戻る。何十年もいたならば、僕はいきなりおじいさん。これじゃリアル浦島太郎だ。
そういうわけで、僕はおとなしく地球へ帰る事になった。で、慣れ親しんだ選手寮の自分の部屋を片付け始めた。ちなみに愛車のイカルス350はギューリキ君にあげる事にした。
まだ安月給だったから、とても喜んでくれたみたい。
だけど僕にとって大問題はエリアちゃんだ!
そりゃお父さんやお母さんや妹に逢えるのは嬉しかった。お父さんの事も、もちろん心配だし。
だけどエリアちゃんと逢えなくなるのは、僕にとっては重大問題だったんだ。
それにもし僕が地球へ帰るのなら、僕はエリアちゃんに何て言えばいいの?
この夏、セントバーナード山頂でデートしたとき、僕が地球人だと打ち明けても、エリアちゃんは信じてくれなかった。(サファイア星だぞ!)
前にも言ったように、一般の人は地球に知的生命はいないと思わされているからだ。もちろん硫酸銅の海の事も…
「…という訳なんだ。僕は本当にサファイア星人なんだ。だから僕はもうすぐサファイア星に帰らないといけないんだ」
その夜、僕はイカルスを飛ばしてエリアちゃんに逢いに行った。
きっとこれが最後のデートだ。
僕らはスコーピオンのイカしたベンチに座り、僕は思い切ってもう一度、その話した。
「サファイア星には知的生命なんていないのよ! そんな事も知らないの? あそこは硫酸銅の海なよ!」
「本当なんだ。嘘じゃない。そして僕は半年しかオーラム星にいる事が許されていないんだ。だからもうじきサファイア星へ帰らないと…」
「そんなの嘘に決まっているわ! つまりもう私とは逢いたくないという事なのね。だったらそんなおとぎ話なんかしないで、本当の事を言って欲しかった。男らしく、『君にはもう逢いたくない』って。最後の最後に、あなたがそんなふざけた事を言って優位に立とうとしてることくらい、私には分かるわ。もう最低! 幻滅だわ。本当に酷い。ダイスケ君ってそんな人だったのね!」
パチン!ビシ!
いきなりエリアちゃんに往復ビンタを食わされた。
その勢いで通訳メガネと通訳耳栓が吹っ飛んだ。
エリアちゃんはそれからも怒っていろいろとしゃべっていたけれど、僕には……
「★☆*?!▲☆◆☆*★□◎………」
だけど通訳ガムの効果でしゃべる事は出来た。
「違うよ違うよ。本当に僕はサファイア星へ……」
何を言っても無駄だったけれど…
「ええと、実はダイスケ君はおうちの人の都合でぇ、突然田舎へ帰らなければいけなくなったんですぅ…」と、入団の時と同様でたらめな説明をし、そうして僕はプロキオンズを去る事となった。
それから僕が地球へ帰る日が近づいた。
だけど僕は、くどくどとだだをこねていた。
「ねえ、タイムエイジマシンさえあればぁ、僕は何年でもここにいられるんじゃないの? 帰るときに僕を十二歳の夏休みに戻せばいいだけじゃん。簡単だよ」
僕はみんなと野球を続けたいという思いもあったけれど、何と言ってもエリアちゃん!
だから僕はもっとこの星にいたかった。だってエリアちゃんと別れるのはとてもつらいんだもん。
もちろんお父さんの事も心配だけど、運命変更にはカップラーメンみたいに「頃合いを見計る」方がいいらしい。
そうすると僕がこの星にあと少々長くいるのは、運命変更にもかえって都合がいいのでは? なんて、僕は思い切り我田引水な考え方をしていたんだ。
「そういう訳にもいかないんだ。君の本当の年齢、つまり君が生まれてから実際に経験した時間の長とぉ…、ええと、わかるかい?」
「僕が生まれてから今までに流れた時の長さ?」
「よく分っているじゃん♪つまり君が生まれてから流れた時間とエイジマシンで作られた年齢に、あまり大きな差があってはいけないんだ」
「でも、この前僕はお父さんの年齢になったよ」
「そういう意味じゃない! あれは一時間かそこらの間だったから。だけどもし君がオーラム星に何年もいた後に地球へ帰ったら、君は一生そのずれた年齢で生きていかなければならない。だから年齢のずれは半年くらいが限界なんだ。というのは、エイジマシンの効果は一年ほどで自然に消えてしまうからさ」
「一年で? で、そうすると?」
「一年で自然に本当の年齢に戻る。だから君が十年もオーラム星にいたらとんでもない事になる。例えば君が地球で十三歳の時、二十三歳の姿になったらどうする?」
「へぇ~♪」
「へぇ~♪じゃない。まじめに聞け! だから半年くらいが限界だろう? それにカップラーメンだって十年も待っていたらどうなると思う?」
どうもカップラーメンの例えは分かりにくい。だけどやっぱり僕は半年くらいで地球へ帰らないといけないみたいだった。
例えば僕が何十年もここにいて、それからタイムエイジマシンで十二歳の姿に戻って、で、時間も戻して、そして地球へ帰る。
だけど一年後にエイジマシンの効果が消えて本当の姿に戻る。何十年もいたならば、僕はいきなりおじいさん。これじゃリアル浦島太郎だ。
そういうわけで、僕はおとなしく地球へ帰る事になった。で、慣れ親しんだ選手寮の自分の部屋を片付け始めた。ちなみに愛車のイカルス350はギューリキ君にあげる事にした。
まだ安月給だったから、とても喜んでくれたみたい。
だけど僕にとって大問題はエリアちゃんだ!
そりゃお父さんやお母さんや妹に逢えるのは嬉しかった。お父さんの事も、もちろん心配だし。
だけどエリアちゃんと逢えなくなるのは、僕にとっては重大問題だったんだ。
それにもし僕が地球へ帰るのなら、僕はエリアちゃんに何て言えばいいの?
この夏、セントバーナード山頂でデートしたとき、僕が地球人だと打ち明けても、エリアちゃんは信じてくれなかった。(サファイア星だぞ!)
前にも言ったように、一般の人は地球に知的生命はいないと思わされているからだ。もちろん硫酸銅の海の事も…
「…という訳なんだ。僕は本当にサファイア星人なんだ。だから僕はもうすぐサファイア星に帰らないといけないんだ」
その夜、僕はイカルスを飛ばしてエリアちゃんに逢いに行った。
きっとこれが最後のデートだ。
僕らはスコーピオンのイカしたベンチに座り、僕は思い切ってもう一度、その話した。
「サファイア星には知的生命なんていないのよ! そんな事も知らないの? あそこは硫酸銅の海なよ!」
「本当なんだ。嘘じゃない。そして僕は半年しかオーラム星にいる事が許されていないんだ。だからもうじきサファイア星へ帰らないと…」
「そんなの嘘に決まっているわ! つまりもう私とは逢いたくないという事なのね。だったらそんなおとぎ話なんかしないで、本当の事を言って欲しかった。男らしく、『君にはもう逢いたくない』って。最後の最後に、あなたがそんなふざけた事を言って優位に立とうとしてることくらい、私には分かるわ。もう最低! 幻滅だわ。本当に酷い。ダイスケ君ってそんな人だったのね!」
パチン!ビシ!
いきなりエリアちゃんに往復ビンタを食わされた。
その勢いで通訳メガネと通訳耳栓が吹っ飛んだ。
エリアちゃんはそれからも怒っていろいろとしゃべっていたけれど、僕には……
「★☆*?!▲☆◆☆*★□◎………」
だけど通訳ガムの効果でしゃべる事は出来た。
「違うよ違うよ。本当に僕はサファイア星へ……」
何を言っても無駄だったけれど…
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