死にたがり戦士の異世界無双

紫 和春

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第20話 招集された

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 クエストが終了してから一週間が経過する。その間草薙は、クエストで消費した物品の補充や手入れなどをし、次のクエストの準備をしていた。

 そんなある日、草薙は冒険者ギルドから呼び出しを受けた。

「ギルドから直々に招集だなんて、そんなこともあるんだなぁ」

 呑気にそんなことを言いながら、草薙はギルドへと向かう。ギルドの受付カウンターでは、ギルド長にミゲル、ジークやミーナがいた。他に女性が一人いる。

「タケル、来たか」
「ギルド長、これは一体?」
「君の実力を見込んで、頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと……?」

 ゾクッと嫌な予感を感じる草薙。

「先のクエストで、マニモストアの怪物と対峙しただろう? あの件でそれぞれのギルドで調査を行うようにギルド本部から通達が来た。我がエルケス支部の冒険者ギルドも怪物化の調査をする。そこでミゲルたちのパーティである『金剛石の剣』と、タケルのパーティ『ヘイムダルの守り人』による、合同調査隊を派遣することを決定した」

 確実に面倒な仕事が舞い込んできた。それにより、草薙は強い希死念慮を感じ出す。

「悪いが、これは決定事項でな。強制に近い扱いになるだろう。申し訳ないが、それは了承してほしい」
「あぁ、はい……」

 草薙は流されやすいタイプであるため、人から命令されると拒否出来ない節がある。

「それじゃ、お互いに挨拶しようか。とはいっても、僕のことはもう知っているだろうけど」
「ミゲルさんですよね?」
「正解だ。そんで、俺がジークなのも知ってるよな?」
「えぇ、はい」
「それならコイツは知らないよな?」

 そういってジークは、後ろにいた女性を指さす。

「は、初めまして。アリシアと言います」

 彼女はおどおどとしながら、草薙に自己紹介する。銀髪のサラサラしたボブカットが特徴的だ。

「初めまして、草薙武尊です」
「私はミーナです。よろしくお願いしますね」

 お互いに自己紹介が終わったのを確認したギルド長が、双方に向かって話し出す。

「さて、今回の合同チームの発足に当たって、協力者が加入することになった」

 そこに、見たことのある人が歩いてくる。

「え……、ナターシャ?」
「そうなの。かなり大規模な調査になりそうだから、私が情報士官として随伴することになったの。戦闘には参加しないから、その時はよろしくね」

 そんなことを笑顔で言う。

「さて、これで調査チームの全員が集合したな。それでは早速調査に行ってほしい……ところだが、まだ必要な情報が出そろっていない。今は王国内全域を移動するような準備をしていてほしい」

 ギルド長は堂々とそういった。つまり、長い調査になると予想される。

「というわけで、しばらく出番はないらしいね」

 ミゲルが確認するように言う。

「それじゃあ、怪物化についての情報共有でもしましょう」

 ナターシャがそのように提案する。特に異議はなかったため、近くにある談話室で情報を貰う。

「怪物化の現象は王国内にとどまらず、周辺国家にまで及んでいますわ。場所もバラバラで統一性がありません。正直言って、情報がなさすぎですわ」
「ふむ。それはそれで面倒だな……」

 ミゲルが悩ましく言う。

「その他の国からの情報は入ってないのか?」

 ジークがナターシャに聞く。

「最近始まった計画なので、情報は全然集まっていませんの」
「そうなると、結局何も手がかりがない状態なのか……」
「そういえば、以前渡したサンプルはどうなっているんですか?」

 今度はミーナが聞く。

「サンプルはギルド本部と国の機関がこれから解析をするようです。ですが、簡易解析をしても分からないことが多く、解析には時間がかかると思われます」
「そうですか……」

 結局八方ふさがりの状態に陥っている。情報が集まってこない限りは、動きようがないだろう。

「情報が集まるまでは待機状態にならざるを得ないな……」

 ミゲルがそのような判断をする。

「そしたら、冒険者のクエスト受注の問題はどうするんですか?」

 草薙が確認する。

「その点については問題ない。ギルド本部からの通達で、怪物化の調査に当たっている間は二ヶ月の壁を免除するとしている。心置きなく調査してくれ」

 ギルド長がそのように言う。今回の調査に参加している草薙は、この二ヶ月の壁に該当しないということだ。

「とにかく、今は情報がありませんから動きようがありませんわ。そこは私の方から他国に圧力をかけるようにします。ギルド長からも何か働きかけをしてくださいまし」
「分かった」

 この日はこれで解散となった。
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