31 / 54
第31話 ようやく到着しました
しおりを挟む
九王たちは山から下り、トラックが置いてある広場で一休みする。
数時間ほどすると朝日が昇り、やがて初夏の日差しを浴びることができるだろう。
暦上では季節は夏に入ろうとしていた。しかし、実際には気温は20℃に届かず、比較的肌寒い日々が続いている。これも核の冬の影響なのだろう。
そして休息を取った九王たちは、そのまま新東名高速道路に乗って静岡市を横断しようとする。
「まだ高速道路が生きているからいいが、あと10年くらい経ったら、このインフラも使えなくなるんだろうな……」
小堀が弱気なことを言う。
「どうしたんですか? いつもの小堀さんじゃないですね」
「いや、まぁ、この辺りの所感も報告しないといけないからさ。なんか……、漠然とした不安に襲われているんだよ」
「小堀さんにも、そんな感情あったんですね」
「全身機械の九王君には言われたかないわ」
そんな話を挟みつつ、数日かけてようやく浜松市の外縁に到着した。
「お疲れ様です。浜松市に入りました」
「ようやくか……。かなりの旅路に思えてきたぞ」
「実際2週間くらいかかっているからね」
小堀の愚痴に、ウッマが冷酷な数値を出してくる。
「絶対無駄な時間が多かったって……」
「とにかく、市の中心部に行ってみましょう。今日の移動はそこで終わりです」
下道に下り、通れる場所を選んで進む。やはり瓦礫が多く散乱しており、何かと進むのに不便である。大回りする形で浜松市の中心部にほど近い、旧航空自衛隊浜松基地へと到着した。
「航空基地だっていうのに、何もないな……」
滑走路そばのエプロンを爆走しつつ格納庫の中を確認するものの、主要な航空機や周辺機材などはすっからかんである。
「くそー、移動手段に航空機って選択ができるかもしれなかったのに……」
「その燃料はどこで調達するんだい?」
小堀の願望に、容赦なくツッコむウッマ。結局、敷地の北にある宿舎を寝床に利用するしか使い道がなかった。
「しばらく寝てないから、今回ばかりはたっぷり寝る。大体20時間くらいだな。その間は安静にさせてくれ。本当に緊急の場合は、前やったみたいに起こしてくれ」
「分かりました」
そういって小堀は長時間の睡眠に入った。
「みこね。この時間、どうする?」
「そうですねぇ……。せっかくですから、ちゃんと街の様子を見ておきたいです」
「じゃ、散歩だね」
そういって九王たちは、基地の近くの街中を散策する。
どこもかしこも荒れているが、程度に差があるようだ。ほとんど壊れていない家。半壊しているアパート。完全に倒壊している小さなビル。
それらを見て、九王は何か思う所があるようだ。
「こうして見ると、人類のいた痕跡がどんどん消滅していってるような気がします……」
「しょうがないよ。この宇宙は物理法則に則って動いている。エントロピーの増大によって、どんな物も乱雑に、無秩序になっていく。そしてそれらは自発的に戻ることはないんだから。これが自然の摂理だよ」
九王はウッマに諭される。実際彼の言っている通りなのだが、どうしても胸の奥にある何かがそれを拒絶している。
『私たちはここにいる! ここで生きている!』
九王はそのように叫びたくなった。しかし、機械である九王が生きていると叫ぶのは何か変な感じがするだろう。
そんなしんみりとした感じで街を巡っていると、あっという間に日が暮れる。九王たちは小堀が寝ている部屋の隣で休憩することにした。
そして翌朝。
「それじゃあ、その目的地に向かうか」
小堀はエンジンをかけて、九王に聞く。
「その……なんていう寺だったっけか?」
「永爛院鍾皇寺ですよ。地図上ではここから車で20分って出ていますけど、多分2時間くらいかかりますよ」
「不安だなぁ……」
そんなことを呟きながら、小堀はトラックを発進させる。
そして案の定、瓦礫に道を阻まれながら、やっとの思いで鍾皇寺の門までやってきた。
「それでは、ご対面と行きましょう」
九王はルンルン気分でトラックから降り、正面の門から敷地内を覗く。
そこにあったのは、建物が崩壊し、瓦礫の山しか存在しない鍾皇寺の姿だった。
数時間ほどすると朝日が昇り、やがて初夏の日差しを浴びることができるだろう。
暦上では季節は夏に入ろうとしていた。しかし、実際には気温は20℃に届かず、比較的肌寒い日々が続いている。これも核の冬の影響なのだろう。
そして休息を取った九王たちは、そのまま新東名高速道路に乗って静岡市を横断しようとする。
「まだ高速道路が生きているからいいが、あと10年くらい経ったら、このインフラも使えなくなるんだろうな……」
小堀が弱気なことを言う。
「どうしたんですか? いつもの小堀さんじゃないですね」
「いや、まぁ、この辺りの所感も報告しないといけないからさ。なんか……、漠然とした不安に襲われているんだよ」
「小堀さんにも、そんな感情あったんですね」
「全身機械の九王君には言われたかないわ」
そんな話を挟みつつ、数日かけてようやく浜松市の外縁に到着した。
「お疲れ様です。浜松市に入りました」
「ようやくか……。かなりの旅路に思えてきたぞ」
「実際2週間くらいかかっているからね」
小堀の愚痴に、ウッマが冷酷な数値を出してくる。
「絶対無駄な時間が多かったって……」
「とにかく、市の中心部に行ってみましょう。今日の移動はそこで終わりです」
下道に下り、通れる場所を選んで進む。やはり瓦礫が多く散乱しており、何かと進むのに不便である。大回りする形で浜松市の中心部にほど近い、旧航空自衛隊浜松基地へと到着した。
「航空基地だっていうのに、何もないな……」
滑走路そばのエプロンを爆走しつつ格納庫の中を確認するものの、主要な航空機や周辺機材などはすっからかんである。
「くそー、移動手段に航空機って選択ができるかもしれなかったのに……」
「その燃料はどこで調達するんだい?」
小堀の願望に、容赦なくツッコむウッマ。結局、敷地の北にある宿舎を寝床に利用するしか使い道がなかった。
「しばらく寝てないから、今回ばかりはたっぷり寝る。大体20時間くらいだな。その間は安静にさせてくれ。本当に緊急の場合は、前やったみたいに起こしてくれ」
「分かりました」
そういって小堀は長時間の睡眠に入った。
「みこね。この時間、どうする?」
「そうですねぇ……。せっかくですから、ちゃんと街の様子を見ておきたいです」
「じゃ、散歩だね」
そういって九王たちは、基地の近くの街中を散策する。
どこもかしこも荒れているが、程度に差があるようだ。ほとんど壊れていない家。半壊しているアパート。完全に倒壊している小さなビル。
それらを見て、九王は何か思う所があるようだ。
「こうして見ると、人類のいた痕跡がどんどん消滅していってるような気がします……」
「しょうがないよ。この宇宙は物理法則に則って動いている。エントロピーの増大によって、どんな物も乱雑に、無秩序になっていく。そしてそれらは自発的に戻ることはないんだから。これが自然の摂理だよ」
九王はウッマに諭される。実際彼の言っている通りなのだが、どうしても胸の奥にある何かがそれを拒絶している。
『私たちはここにいる! ここで生きている!』
九王はそのように叫びたくなった。しかし、機械である九王が生きていると叫ぶのは何か変な感じがするだろう。
そんなしんみりとした感じで街を巡っていると、あっという間に日が暮れる。九王たちは小堀が寝ている部屋の隣で休憩することにした。
そして翌朝。
「それじゃあ、その目的地に向かうか」
小堀はエンジンをかけて、九王に聞く。
「その……なんていう寺だったっけか?」
「永爛院鍾皇寺ですよ。地図上ではここから車で20分って出ていますけど、多分2時間くらいかかりますよ」
「不安だなぁ……」
そんなことを呟きながら、小堀はトラックを発進させる。
そして案の定、瓦礫に道を阻まれながら、やっとの思いで鍾皇寺の門までやってきた。
「それでは、ご対面と行きましょう」
九王はルンルン気分でトラックから降り、正面の門から敷地内を覗く。
そこにあったのは、建物が崩壊し、瓦礫の山しか存在しない鍾皇寺の姿だった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる