転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春

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第98話 近況

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 一九三八年十二月一日。年の瀬も迫ってきた。
 そんな中、宍戸たち転生者が集まっているグループチャットでは、久々に大量のコメントが飛び交っていた。
『今、フランス政府とフランス本土はどうなってる?』
『政府関係者はイギリスに亡命して、ポーツマスで臨時亡命政府を樹立したよ。本土の方は情報が入ってきてないけど、噂によれば別の政権が樹立するらしい』
『その辺は、ドイツにいるケプファーの方が詳しいんじゃないか?』
『ごめんなさい。もう何ヶ月も監禁されてるから、どうなっているか分からないわ』
『そうか……。しかし、ずっと監禁されてるのは大変だね』
『そうなの。今も兵士の監視付きよ』
『それは大丈夫なやつなのか……?』
『どちらにせよ、フランス本土は駄目そうだな。イギリスは何か動きはあったか?』
『情報収集ならバッチリだね。だけど、アメリカ政府から毎日のように、対日戦線に加われって連絡が来てて大変だけど』
『それはまぁ、そうだよな。無理させて悪い』
『シシドが謝ることじゃないよ。この政策は後々効いてくるはずだから、今は我慢の時さ』
『そういえば、イタリアのメランドリはどうしてるんだ? しばらく何も聞いてないが……』
『アタシはいるわ。イタリア王国は連合国に肩入れした中立の立場を示しているから、話すこともないのよ』
『イタリアはてっきり連合国入りすると思っていたが、その辺はどうなんだ?』
『新聞やラジオを聞く限りでは、あまり気乗りしないらしいわ。ドイツ軍が国境付近にいるのもあるかも』
『ドイツがいるんじゃあ、フランスの二の舞になりかねないからな。その判断は正しいと思う』
『日本とアメリカの戦争はどうなっている?』
『私は何も聞かされてないわ。それどころか、政府が貸してくれてるアパートから退去するような話を耳にしてるわ』
『最近の戦闘の様子は聞いている。真珠湾攻撃の後に、南沙諸島で戦闘があったらしい。その後は、アメリカが真珠湾を奪還するために派遣した艦隊を、日本側が丸ごと拿捕したって報告が上がってる』
『アメリカの艦隊を丸ごと拿捕!?』
『おいおい、とんでもねーことになってんじゃん』
『私、そんな話聞かされてないんだけど』
『日本では国民に対して大々的に発表してたな』
『そりゃあ、こんなニュースがアメリカ国民に知れ渡ったら、大変なことになるな……』
『いいなぁ、そんな目立つような活躍してて。こっちはソ連との内戦で大変だよ』
『皇帝陛下だ』
『今ようやく執務から解放された。相変わらず軍備が厳しい。何より小銃が足りないのが問題だよ』
『まさか石を投げ合っているとかじゃないよな?』
『そんなことはないよ。スコップで殴り合ってるんだ』
『大差ないじゃん』
『そのおかげで、戦傷者数がとんでもないことになってて……』
『それは大変だな』
『何とか面目を保っているつもりなんだけど、想定通りにはいかないものだなぁ……』
『まぁこの先、どう転ぶかはさっぱり分からないからな』
 そんな話をしていた時、ふと誰かがある言葉を投稿する。
『僕たち、戦いたくないって言いながら戦争しているよな』
 宍戸がそれに反応する。
『確かにそうだな。今のご時世では仕方のないことだ』
『でも、仕方のないことで片づけていいのかしら』
 宍戸の言葉に疑問を呈するのは、アメリカのパドックである。
『少なくとも、転生してから最初の一年くらいは世界大戦を回避できる時があったと思うの。努力を怠ったのは私たちの責任とも言えるわ』
『それは違うな』
 そのように返答するのは、イギリスのコーデンである。
『僕たちがいれば、世界に平和が訪れるというのは幻想に過ぎない。もし僕たちの一声で世界が変わるのなら、そもそも戦争なんて始まらない。そして、それで変わるとすれば、それは独裁者以外に何物でもないだろう』
『それもそうだな……』
 コーデンの言葉に、ロンダが賛同する。
『僕たちができることは、所詮外野の野次のような物だ。その野次に価値があるから、政府関係者が耳を傾けてくれている。そうじゃなかったら、僕たちなんて要らない存在だ』
『結局は戦争が起こる運命だったってこと?』
『極論を言えばそうなるな』
 このメッセージが表示されてから、しばらくチャットが途絶える。
 その静寂を破ったのは、宍戸の言葉だった。
『俺たちは、結局子供だったってことだな』
 大人に近い存在だが、大人に成り切れてない。それが現実なのだ。
 この日はこれでチャットが途切れ、それぞれの生活に戻っていく。
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