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第139話 心変わり
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一九三九年四月三十日。イギリス、ロンドン。
ロンドン市内にある大きめの病院で、ローザ・ケプファーは療養をしていた。イギリスに亡命し、落下傘連隊の大隊長が付き添う形でこの病院に来たのだ。
今は、この時代では珍しい個室にて、温かいスープとパンを少量食べていた。
すると、個室のドアがノックされる。ドアが開くと、看護師と一緒に二人の男性が入ってきた。その手には、見覚えのあるスマホが握られていた。
『君がローザ・ケプファーだね? 僕がイギリスの転生者、ロバート・コーデンだ。こっちの彼は、フランスの転生者のジル・ロンダ』
『よろしく』
『初めまして、ローザ・ケプファーです』
ケプファーは、片言の英語で話す。彼女のスマホは破壊されているからだ。
『あぁ、無理に合わせなくていいよ。こっちで翻訳できるからね』
コーデンは、そういってスマホを差し出す。どうやら、スマホ一台で双方向対話ができるようだ。
『そうなのね……』
『とにかく、君が無事で何よりだ。落下傘連隊の作戦が失敗すれば、君はおそらく死んでいただろう。なにはともあれ、良かったよ』
コーデンは安堵した表情を見せる。
『心配してくれてありがとう。確かに、あなたたちの助けがなかったら、この命はなかったでしょうね』
『そうだな。さっき検査を担当した医師に話を聞いたんだが、今の君の健康上の問題はないそうだ。念の為、観察期間を設けるけど、順調なら来週にでも退院できるらしいぞ』
『そう』
そういう彼女の顔は、少し寂しそうであった。
『何か懸念要素でもあるのかい?』
それを察したコーデンが、ケプファーに聞く。少々品のない聞き方だ。
『そうね……。本当のところ、私のせいでみんなに迷惑をかけてしまったわ。結局、この世界でのヒトラーの蛮行を止めることが出来なかった。私の力が足りなかったせいで……』
『そんな気に病むことじゃないさ。そもそも僕たちが転生してきた一九三六年には、ヒトラーは総統としての地位を築いていた。止められなくて当然とも言えるさ。止めるなら、政治家として台頭してくる一九三三年ごろまで遡らないと無理だろうね』
そのように慰めるコーデン。
『でも、せめてみんなと繋がれるスマホだけは守り切りたかったわ』
そういってベッド脇の机に置かれているスマホを見る。画面の中央に、弾丸によるものと思われる穴が開いているスマホだ。機能としては完全に停止しており、これ以上の手の施しようがない。
ケプファーがスマホに手を伸ばし、物寂しそうにスマホに視線を落としているときだった。
個室のドアの向こうで、何かが落下したような音がする。
「なんだ?」
コーデンとロンダは顔を見合わせ、ロンダがゆっくりとドアに近づく。そして同じように、ゆっくりとドアを開ける。
すると、床に白い箱が置かれていた。その箱は、スマホと同じくらいの大きさであった。
ロンダは箱を拾い上げ、個室の中に持ってくる。
「これは……」
コーデンは一目見て、なんとなく察した。
ロンダはベッドの上で、箱を開けてみる。上下で分かれるタイプの箱だ。
中からは、転生者が使用しているスマホと全く同じ物があった。
『これは多分、ケプファーの新しいスマホだよ』
コーデンがそういう。
ケプファーは新しいスマホを箱から取り出し、電源を入れる。すると、チャットの通知が何件か来ていた。
チャットの内容を確認してみると、相手は女神からであった。
『転生時に支給したスマートフォンが壊れたようなので、新しいスマートフォンを支給します。今度は壊さないように気を付けてくださいね』
それを見たケプファーは、思わず涙が出そうになった。
しかし、まだ泣く時ではない。なぜなら。
「ドイツの名誉のために、ドイツの未来のために、ヒトラーを引きずり下ろす。本当の意味で祖国を取り戻したときに、涙を流すため」
ケプファーは決心した。今までは逃げることばかり考えていたが、それでは駄目なのだと。
「私はもう逃げない。立ち上がって、ヒトラーと対峙する」
未来の新しい祖国のため、ケプファーは信念を一新した。これからは、自分が祖国を作るのだと決断したのだ。
ロンドン市内にある大きめの病院で、ローザ・ケプファーは療養をしていた。イギリスに亡命し、落下傘連隊の大隊長が付き添う形でこの病院に来たのだ。
今は、この時代では珍しい個室にて、温かいスープとパンを少量食べていた。
すると、個室のドアがノックされる。ドアが開くと、看護師と一緒に二人の男性が入ってきた。その手には、見覚えのあるスマホが握られていた。
『君がローザ・ケプファーだね? 僕がイギリスの転生者、ロバート・コーデンだ。こっちの彼は、フランスの転生者のジル・ロンダ』
『よろしく』
『初めまして、ローザ・ケプファーです』
ケプファーは、片言の英語で話す。彼女のスマホは破壊されているからだ。
『あぁ、無理に合わせなくていいよ。こっちで翻訳できるからね』
コーデンは、そういってスマホを差し出す。どうやら、スマホ一台で双方向対話ができるようだ。
『そうなのね……』
『とにかく、君が無事で何よりだ。落下傘連隊の作戦が失敗すれば、君はおそらく死んでいただろう。なにはともあれ、良かったよ』
コーデンは安堵した表情を見せる。
『心配してくれてありがとう。確かに、あなたたちの助けがなかったら、この命はなかったでしょうね』
『そうだな。さっき検査を担当した医師に話を聞いたんだが、今の君の健康上の問題はないそうだ。念の為、観察期間を設けるけど、順調なら来週にでも退院できるらしいぞ』
『そう』
そういう彼女の顔は、少し寂しそうであった。
『何か懸念要素でもあるのかい?』
それを察したコーデンが、ケプファーに聞く。少々品のない聞き方だ。
『そうね……。本当のところ、私のせいでみんなに迷惑をかけてしまったわ。結局、この世界でのヒトラーの蛮行を止めることが出来なかった。私の力が足りなかったせいで……』
『そんな気に病むことじゃないさ。そもそも僕たちが転生してきた一九三六年には、ヒトラーは総統としての地位を築いていた。止められなくて当然とも言えるさ。止めるなら、政治家として台頭してくる一九三三年ごろまで遡らないと無理だろうね』
そのように慰めるコーデン。
『でも、せめてみんなと繋がれるスマホだけは守り切りたかったわ』
そういってベッド脇の机に置かれているスマホを見る。画面の中央に、弾丸によるものと思われる穴が開いているスマホだ。機能としては完全に停止しており、これ以上の手の施しようがない。
ケプファーがスマホに手を伸ばし、物寂しそうにスマホに視線を落としているときだった。
個室のドアの向こうで、何かが落下したような音がする。
「なんだ?」
コーデンとロンダは顔を見合わせ、ロンダがゆっくりとドアに近づく。そして同じように、ゆっくりとドアを開ける。
すると、床に白い箱が置かれていた。その箱は、スマホと同じくらいの大きさであった。
ロンダは箱を拾い上げ、個室の中に持ってくる。
「これは……」
コーデンは一目見て、なんとなく察した。
ロンダはベッドの上で、箱を開けてみる。上下で分かれるタイプの箱だ。
中からは、転生者が使用しているスマホと全く同じ物があった。
『これは多分、ケプファーの新しいスマホだよ』
コーデンがそういう。
ケプファーは新しいスマホを箱から取り出し、電源を入れる。すると、チャットの通知が何件か来ていた。
チャットの内容を確認してみると、相手は女神からであった。
『転生時に支給したスマートフォンが壊れたようなので、新しいスマートフォンを支給します。今度は壊さないように気を付けてくださいね』
それを見たケプファーは、思わず涙が出そうになった。
しかし、まだ泣く時ではない。なぜなら。
「ドイツの名誉のために、ドイツの未来のために、ヒトラーを引きずり下ろす。本当の意味で祖国を取り戻したときに、涙を流すため」
ケプファーは決心した。今までは逃げることばかり考えていたが、それでは駄目なのだと。
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