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第二章 自分の居場所を作りたい!

あれもこれも入れちゃうよ

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 じゃじゃーんとかかげて見せたのは階段のところで干してあった薬草。
 多分、ニンニク。

「アリンビルの鱗茎? それはスタミナポーションに使うもので、食事には……それ匂いもかなりキツイし辛いよ」
「じゃあ、あってる! これを……ふたかけくらいでいいかな……」

 塊から外した大きめの2粒をナイフの側面で潰してから刻む。
 うひー、異世界産だから成分が違うのか、匂いが強い!
 これなら一粒でもよかったかな……。

「毒ではないけど……」
「ひをとおしたらあまくなるからだいじょうぶ!」
「加熱すると効果が薄れるだけじゃないかな……」

 ロイが鍋を複雑な顔で見下ろしている。

「それと、このはっぱもいれる!」

 これは匂いを嗅いで分かった。
 多分これはローリエの仲間だと思う。
 やっぱり階段のところに干してあった薬草だ。

「リナシネの葉……? 食べる前から胃薬を入れるってこと……?」
「いいにおいになるからね。あとはカローテがやわらかくなるくらい、によう」

 本当ならアクとりもしたいところだけど、ロイにできるとも思えないので省略。
 あと、ちゃんと炒めてから煮た方が美味しそうだし、さらに以下略。
 玉ねぎも入れたかったんだけど、薬草と一緒に干してあったから省略しました。
 あれもこれも薬草入れたら警戒されそうだし。
 すでに遅いけど。

「これ、食事じゃなくてポーション作ってるんじゃないよね……?」

 4歳児のおままごとに付き合わせてすまんな!
 なんで玉ねぎよりニンニクを優先したかというと、干し肉の臭みを抑えるため。

 昨日、干し肉をはじめて食べたんだけど、なかなかの強敵だった。
 何の肉かは知らないけど、まずしょっぱい!
 口に入れた瞬間、刺すような塩気を感じるくらいにしょっぱい。そして、焦げっぽく獣臭い匂いがする。その上めちゃくちゃ硬い。保存のためかもしれないけど、ガッチガチに乾燥させてあるんだ。
 だから、最初はしゃぶるしかなくて、しゃぶるのに飽きて噛んでもまだ固い。
 噛んでも噛んでも噛んでも、口の中いっぱいに広がるもわんとした獣臭さと、噛み切れない繊維質の肉。
 パンも固くて、一個食べ終わる頃には疲れ切ってしまうくらいだったのに、干し肉も輪を掛けて硬くて、食事が終わるとなんだか顎がだるかった。
 これじゃ食事も嫌いになるはずだよ。

「できればコショーもいれたいな……」
「コショ?」
「ちっちゃいつぶでぴりっとしてていいかおりのやつ」
「種子系の薬草は大体そんな感じだね。どれのことだろう。聞いたことないな……」

 多分胡椒も、名前も見た目もちょっとずつ違うんだろうな。
 保管棚のどこかには入ってるのかしら。

 気になって保管棚の方に目を向けたら、火にもかけていないのにコトコトお鍋が湧いてきた。

「えっ!? かまどにかけなくていいの?」
「この台に火魔法がかけてあるから、かまどに火を起こさなくても、煮焚きはできるんだ」

 なぜかロイは少し自慢そう。
 なるほど、IH。
 魔法式のIHみたいなものなのかな。
 そういえば、火の気もないのに明るかったりしたのも、あれ魔法の照明器具なんだろう。

「どうやってつかうの?」
「踏み台から降りられる? ほら、この台の下のところ、魔石の隣にひねりが付いているだろう? この石に魔力を通してから、これをひねると、発動する火魔法の大きさを調節する。火が出ないから安全だし、既定の温度より熱くなりすぎたり一定の時間が経つと魔法は止まるから、別のことに熱中していたとしても鍋を焦がす心配もないんだ。その代わり、長時間煮詰めなきゃいけないときや、高温にする必要がある時は、別にかまどや火魔法を使わなくちゃいけないけど。便利だろう?」

 便利……だけど、これ誰かに勧められたな。
 おうちの人もよくこの人に独り暮らしなんてさせてるなー。ほんの数日の付き合いでも、生活能力もなくて危なっかしいのがわかってきたぞ。
 かまどを料理に使わせてたら、確実に火傷するか火事になるもんね。

 鍋の中では細かく切った具材が、大ぶりに切られたカーベージの隙間を浮き沈みしている。
 干し肉も柔らかくなってくれるといいけど、いきなり煮たんじゃ無理かしら。
 少し水で戻したりしてからの方がよかったかなぁ……。

「こんなに色々入れるなんて、料理人が作った料理みたいだ……」

 ロイがお鍋を見ながら不思議そうにしている。

「おうちでたべるごはんはいろいろいれない?」
「昔、実家にいた頃は専属の料理人がいたから、料理人以外が作る料理についてはよくわからない」

 実家にいる時って食べるだけになりがちよね。
 それはわからなくもない。
 しかし、専属の料理人て。流石貴族!

「スープに干し肉を入れるなんて上級冒険者の食事みたいだけど、この方法は誰に教わったの?」
「……わかんない」

 やたらに硬いししょっぱいと思ったら、やっぱりこちらの世界ではそういう使い方をするわけですね。

「それに薬草の知識だって……あれだけある薬草の中、アリンビルとリナシネの葉だけを選んだのには何か理由が……それに、コショ? とやらのことも……」

 ロイは自分の世界に入ってしまったのか、ぶつぶつと考えこんでいる。
 私は違うけど、リアル幼児の事だったら、そんなに考えても、考えるだけ無駄だと思うよ。

 鍋はふつふつ沸いたのか、ぐるんぐるんと対流を始めて、だんだんいい匂いがしてきた。
 さて、まずはお味見だ。
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