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9.憤怒【リヒトside】
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(※グロテスクなシーンがございます。ご注意ください。)
「……眠れねぇ…」
夕飯も食べ終わって、外はもう真っ暗になった頃。
いつもならすぐに眠れるはずが、今日は珍しく、目が冴え切っていた。
それもそのはず。
――明日も、アルに会える…!―
そう思うと、胸が高鳴ってしまい、明日が楽しみになって、眠ることが出来ない。
それは、おかしな奴だった。
自分の事じゃないのに、まるで自分がやったみたいにオレと一緒に謝って、俺を守って、俺を信じてくれた。
アルはオレを優しいと言ったが、そういうアルこそ優しくて、そして綺麗だ。
なによりアルは、俺に名前をくれた。
顔も知らない両親も、シーク兄ちゃんすらもつけてくれなかった名前を。
嬉しかった。涙が出そうになるくらい、嬉しくて嬉しくて、胸が温まった。
リヒト。
オレの名前だ。
ふと、横を見て、隣の布団の中にカオル一人しかいないことに疑問を抱く。
「ハルカ…?」
トイレにでも行ったのか?いや、そんな気配はなかった。
というか、そもそもハルカは部屋に戻ってきていない。
まだ、リビングにいるのか?
そう思って、オレは布団の中から這い出ると、カオルを起こさないように部屋を出た。
リビングには…いない。
洗面所にも、トイレにも、風呂にもいない。
もしかして、外に出てしまったのだろうか。
こんな真夜中に?
どんどん考えているうちに、不安がつのって、居ても立っても居られなくなる。
まずはシーク兄ちゃんだ。
ハルカがいないことを、シーク兄ちゃんに知らせないと。
「シーク兄ちゃん!…あれ?いねぇのかよ、兄ちゃん、兄ちゃん?」
シーク兄ちゃんの部屋に入っても部屋の中は真っ暗で、兄の気配もない。
そしてなんだろう、このキツイ臭いは。
いやな異臭にオレは眉を顰め、正体を確認するために、部屋の明かりをつけた。
「……ヒッ、…ぁ…うわあああああああああああッッッ!!!!」
明るくなった部屋で、目の前に広がった光景に、絶叫した。
シーク兄ちゃんの部屋のベッドに横たわっていたのは、まるで精気を吸われたかのような、枯れ木のように細い体をした……ハルカであった何かだった。
カタカタと体が震え、歯がカチカチと不自然な音を奏でる。
最近、シーク兄ちゃんが夜にどこかに出かけているのは知っていた。
兄ちゃんの服が、少し血生臭いことも気付いていた。
つまり、これは…。
……シーク兄ちゃんだ。
シーク兄ちゃんが、何かしたんだ。
ハルカを、……殺したんだ。
その事を確信した瞬間、オレは恐怖ではなく、底知れぬ怒りに身を震わせた。
拳を強く握りしめ、ギリギリと歯ぎしりをする。
兄ちゃんの部屋から、臭いを辿り、外に出る。
そのまま、兄ちゃんの臭いが続く道をただひたすらに歩き続けた。
「…ここだ…」
家とは少し遠くの場所にあった、兄の臭いを感じた小屋の中に入って中を見渡す。
よく調べれば、絨毯の下に、地下へ続く階段があった。
兄の臭いは確かに、この下へ繋がっていた。
「……眠れねぇ…」
夕飯も食べ終わって、外はもう真っ暗になった頃。
いつもならすぐに眠れるはずが、今日は珍しく、目が冴え切っていた。
それもそのはず。
――明日も、アルに会える…!―
そう思うと、胸が高鳴ってしまい、明日が楽しみになって、眠ることが出来ない。
それは、おかしな奴だった。
自分の事じゃないのに、まるで自分がやったみたいにオレと一緒に謝って、俺を守って、俺を信じてくれた。
アルはオレを優しいと言ったが、そういうアルこそ優しくて、そして綺麗だ。
なによりアルは、俺に名前をくれた。
顔も知らない両親も、シーク兄ちゃんすらもつけてくれなかった名前を。
嬉しかった。涙が出そうになるくらい、嬉しくて嬉しくて、胸が温まった。
リヒト。
オレの名前だ。
ふと、横を見て、隣の布団の中にカオル一人しかいないことに疑問を抱く。
「ハルカ…?」
トイレにでも行ったのか?いや、そんな気配はなかった。
というか、そもそもハルカは部屋に戻ってきていない。
まだ、リビングにいるのか?
そう思って、オレは布団の中から這い出ると、カオルを起こさないように部屋を出た。
リビングには…いない。
洗面所にも、トイレにも、風呂にもいない。
もしかして、外に出てしまったのだろうか。
こんな真夜中に?
どんどん考えているうちに、不安がつのって、居ても立っても居られなくなる。
まずはシーク兄ちゃんだ。
ハルカがいないことを、シーク兄ちゃんに知らせないと。
「シーク兄ちゃん!…あれ?いねぇのかよ、兄ちゃん、兄ちゃん?」
シーク兄ちゃんの部屋に入っても部屋の中は真っ暗で、兄の気配もない。
そしてなんだろう、このキツイ臭いは。
いやな異臭にオレは眉を顰め、正体を確認するために、部屋の明かりをつけた。
「……ヒッ、…ぁ…うわあああああああああああッッッ!!!!」
明るくなった部屋で、目の前に広がった光景に、絶叫した。
シーク兄ちゃんの部屋のベッドに横たわっていたのは、まるで精気を吸われたかのような、枯れ木のように細い体をした……ハルカであった何かだった。
カタカタと体が震え、歯がカチカチと不自然な音を奏でる。
最近、シーク兄ちゃんが夜にどこかに出かけているのは知っていた。
兄ちゃんの服が、少し血生臭いことも気付いていた。
つまり、これは…。
……シーク兄ちゃんだ。
シーク兄ちゃんが、何かしたんだ。
ハルカを、……殺したんだ。
その事を確信した瞬間、オレは恐怖ではなく、底知れぬ怒りに身を震わせた。
拳を強く握りしめ、ギリギリと歯ぎしりをする。
兄ちゃんの部屋から、臭いを辿り、外に出る。
そのまま、兄ちゃんの臭いが続く道をただひたすらに歩き続けた。
「…ここだ…」
家とは少し遠くの場所にあった、兄の臭いを感じた小屋の中に入って中を見渡す。
よく調べれば、絨毯の下に、地下へ続く階段があった。
兄の臭いは確かに、この下へ繋がっていた。
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